見出し画像

たのしうつくし古伊万里のかたちⅡ/創意工夫の日常

渋谷から一駅、京王井の頭線の神泉駅。戸栗美術館は古陶磁器の専門美術館で、静かな住宅街にあります。年4回の展示替えがあるそうで、今回は「かたち」に注目した展示の第二弾。

私は佐賀に縁があり、有田焼は子どもの頃から日常の器として使ってきたものでした。好きだと意識しないくらい近くにあった焼き物です。それなのに「伊万里」と呼ばれる器が有田の焼き物であることを知ったのは最近のことでした。

曾祖母が使っていた刺身皿のセットを実家からもらってきて、今も大事に使っています。

画像1

これがその器。おそらく1950年代の安い大量生産品ですが、手描きらしく線が書けたりはみ出したりしているところがあって、ひとつひとつ違います。薄い生地で、おもしろいかたちをしています。


創意工夫が勢揃い

思い返してみれば、実家にある有田の器はさまざまなかたちをしていましたっけ。でも、今回の展示では、もっともっと個性的なかたちの器が時代を追ってずらっと揃っていて、おおっ!と感嘆しながら観せていただきました。
素朴なものから、ヨーロッパへの輸出用に西洋風に作られたもの、精緻な絵柄のものなど。よくこんなの思いついたなぁ。日常の器であっても、創意工夫が凝らされています。職人さんたちも楽しみながら作ったのではないかしら。
それほど広い展示室ではないのですが、気がついたらあっという間に二時間経っていました。
不思議なかたちの器がどんな工程で作られたのかという解説も添えられており、種明かしのような楽しさもあります。

居心地の良い美術館

戸栗美術館は今回初めて訪ねたのですが、入った時からなんだか居心地が良くて気に入りました。こぢんまりしてはいますが、展示は充実しています。器の数々もさることながら、解説がくわしいのもよいですね。観るのと読むのと忙しいくらいでしたが、今回は平日に行けたのでそんなに混んでなくて、じっくり見ることができました。

せっかくなので、良いなぁ、と思ったところを列記してみます。

・ラウンジの居心地がいい
カフェはないのですが、ラウンジにはゆったりしたソファーが置かれ、セルフサービスの給茶機もあります。お茶は50円、コーヒーと紅茶は100円、水とお湯は無料でした。ちょっと一息つくのにほどよい感じです。

・館内があたたかい
美術館にはめずらしく、館内はあたたかく快適でした。展示品が陶磁器なので、人に合わせた温度でも大丈夫なのかも。

・資料がいい
タイトル写真の資料は、一部200円です。バックナンバーも買えたので、前回分も入手してきました。カラーコピーで作られたようなA5サイズの小冊子ですが、中身は充実していて、展示品に添えられていたくわしい解説をあらためて読むことができます。豪華なカタログもいいですが、収蔵品への愛が感じられる手作りの資料はとてもうれしいです。

・あちこち、かわいい
トイレや小部屋の入り口のドアに目が止まりました。白い取っ手に、かわいいオレンジ色の小花が描かれています。色絵の器の柄を写したのかも? 受付には、お金のトレイの代わりに素敵な陶器の器が置いてありましたし、細かいところまで大事にされている印象を受けました。

近所に住んでいたら、しょっちゅう通いたくなるような素敵な美術館です。

基本情報

たのしうつくし古伊万里のかたちⅡ

会場●戸栗美術館

会期●2020年1月7日(火)~3月22日(日)

公式サイト●http://www.toguri-museum.or.jp/


この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?