見出し画像

「しろ と くろ」きくちちき絵本展/子どもパワー!

絵本作家きくちちきさん、実は作品を読んだことはなかったのです。でも、中央線界隈でお名前をよく見かけるもので、ずっと気になっていた方でした。

吉祥寺美術館はコピス吉祥寺の中にあり、駅からも近くて便利なので、これはチャンスだと思い、行ってきました。

ダイナミックで繊細な「子どもパワー」

墨であったり水彩であったり、さまざまな手法で描かれた絵は、どれもとても魅力的です。棟方志功のような、どこかプリミティブな印象もあり、最初は子どもの絵みたい、と思いました。描きたくて描いた絵なんだろうなぁ。

でも、さっと勢いで描いたように見える1ページが、実は100回も書き直されたものであることをこの展覧会で知りました。絵本にならなかった原画もたくさん展示されていました。

この人の心の中には、きっと今も子どもが住んでいる。その「子どもパワー」を、大人の絵本作家が繊細に精巧に、ちゃんと表現している。

そして、もうひとつの「子どもパワー」は、息子さんの存在でしょう。父きくちちきを動かす、愛情のエネルギー。

写真撮影OKでした。初めて取り組んだというバナー作品は迫力があって、森の中にいるような気分になります。

画像1

会えてよかった

きくちちきさんの絵本作家デビューは2012年ということですから、私の子どもたちはすでに絵本を卒業し、サッカーボールを追いかけていたころ。きくちちきさんの絵本を子どもと一緒に読む機会はありませんでした。

今回の図録の「編集者が語る、絵本作家・きくちちき」に、こんな一節がありました。「もじもじこぶくん」「テオのりんご」などをきくちさんと一緒に作られた、福音館書店の関根里江さんという方の文章です。

子どもに向けて描くというのは、子ども向きという別の表現をするのではなく、描きたいものの本質を美しい結晶のような形で表現するということだと思っています。

そう、そうなんです! だから、子ども向けのすぐれた絵本は、大人にとってもすばらしい絵本なのです。

自分が子どもだったころに出会った絵本、子育ての過程で出会った絵本。これらは子どものためのものでした。

大人の私は、「子どもを介さないで大人の心をふるわせてくれる絵本もあるのだなぁ」とうれしくなり、そして「私の心の中にも、子どもがずっと住んでいるんだ!」とワクワクしました。

きくちちきさんの絵本に会えてよかった。

展覧会の基本情報

会場●武蔵野市立吉祥寺美術館

会期●2019年9月21日(土)~11月10日(日)

公式サイト●http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2019/07/post-176.html

画像2

展覧会の図録。表紙は2タイプありました。「くろ」という描き下ろし作品が収録されていて、とてもうれしい。




この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?