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読書:桜の森の満開の下

梶井基次郎の「桜の樹の下には」に続き坂口安吾の桜にちなんだ作品も読んでみた。山賊が主人公の物語で、夫と一緒に歩いていた美しい女を連れ去り一緒に暮らしていく話であった。山賊の男は桜の木の下は理由はわからないが気が変になって恐ろしいものだという気持ちでいて、来年また花が咲いたらなぜ気が変になってしまうか考えようとしていた。しかしながら、考えてもわからないまま、物語の終盤では女と一緒に桜の下を恐れずに通ってしまい、それがきっかけで物語の終わりに向かう作品となっていた。

この作品で、山で暮らしたい山賊の男は、都に住みたいしたたかで美しい女に振り回される描写が多い。女の外見は美しいが非常にわがままで残酷であり、山の生活ばかりしていた無知でみすぼらしい男と比較することによりさらに残酷さが際立っていたように感じる。都に澄んだ際に人の首を取らせてきて、その首で遊ぶ行為はグロテスクで気持ちが悪かった。

一方男は、桜の木のことや、退屈な都の生活、果てのない世界について考えており、どうしようもない疑問を抱き続けている。これらは坂口安吾の思想が反映されているのであろう。

坂口安吾といえば堕落論が有名であるが、他にも多くの小説や評論も書いているようだ。堕落論をもう一度読み直して他の作品に手を出してみるのもよいかもしれない。

私が生きることができるようになります。