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フランス・季節の仕事~葡萄摘み③~


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葡萄摘み2日目。

初日と打って変わって、雨…そしてかなり寒かった。

この時期のアルザスは、朝晩は息が白くなるほど寒いのに、日中は、タンクトップ一枚で仕事していた程暑かった。しかし、雨となると気温は上がらず…。私は、日本にいる両親から”輸入”した、日本によくある、半透明の白いカッパを着て集合場所に向かった。

「それじゃ寒いよ。」

と、ムッシュが私を見るなり、分厚いカッパを貸してくれた。

降ったり止んだりの雨…。

道はぬかるみ、男性陣が途中、トラックを押さないと進まない場面もあった。


葡萄摘みは、一か所だけでやっている訳ではなかった。

この畑が終わったら、次はここ…という風に車で移動もする。

この広大な畑のどこかに、私は、大事なネックレスを落としてしまった。日本を発つ前、職場のオーナー(夫人)が自身のネックレスをくれたのだ。どれがいい?といくつか見せられ、私は深い緑の石がついたネックレスを選んだ。それからというものの、大事に大事に、お守りのように一時も離さず身に着けていた。

言い訳だが、チェーンの留め具が、しっかりくっつくものではなく、引っかけるタイプの留め具だった。だったら、畑に着けてくるなという話だが、この時は落とすなんて思ってもみなかったのだ。

仕事が終わってから気付き、パトロンに相談し、探しに行ってみたものの見つからず…。

この広大な畑の中から探し出すのは不可能だろう。もし見つかったら日本に送ってあげると言われ、泣く泣く諦めたのだった。

あれから随分と長い年月が経ったが、あのネックレスは今もきっと広大な大地の中で静かに眠っているのだろう。私の代わりにアルザスを満喫しているのかもしれない…。そう思いながら、あの素晴らしい風景を思い浮かべると、ちょっぴり旅した気分になるので、それはそれで良い思い出なのだろう。

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