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なぜP&GはSNSマーケの予算を増やすも、失敗に終わったのか?

天下のP&Gが、SNSのマーケティング予算を増やし、施策効果があるのか試してみたという記事が話題になりました。

それがこちら。

「P&Gは予算の35%を使い、SNSが効果的に機能するかを検証し、その結果として、SNSは彼らが期待するほど機能していないと結論づけました。マーケティング予算に占めるのSNSの比率も35%から20%へと引き下げています。」

結論は、SNSマーケに予算を振っても、思うような効果は得られなかったようです。

今日は、このP&Gの事例から、僕が思うSNSマーケティングの扱い方について書いてきます。

いま一度、SNSマーケが注目される理由を考えてみる

この数年で、SNSマーケティングが一気に注目されるようになりました。

その理由はいたってシンプルで、SNS上で経済が動くようになったからです。

SNSマーケティングという概念は、言葉の通り、SNS上でマーケティングを推進するということ。実際に、消費者がどのような手順で購買に至るのか、SNS時代に適したULSSASというモデルも出てきていす。

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僕自身、このULSSASモデルは、かなり的を得ていると思っています。

肝は何と言っても、UGC(User Generaged Contents)です。ユーザー自らがSNS上に投稿したコンテンツに触れ、その商品を好きになる。UGC⇒LIKEの量産が、商品認知・検索を生み、購買に繋がるというロジックです。

実際に、SNS上での口コミ総量が、実際の売上と連動しているという研究結果も出はじめてきています。

Twitter 上に現れる各種商品・広告に関するつぶやきは,リアル,ネット
を問わず,消費者間で交わされる商品に関するクチコミや評価が表面化した,いわば「話題性の氷山の一角」であるという仮説が成り立つと考えられる.商品に関する話題性が豊富であれば,販売実績が増える可能性は大きくなり,乏しければ販売実績が増える可能性は小さくなるというものです。

横浜国立大学のとある論文より

とここまでの話をまとめると、SNSに消費者の軸足が移っているから、マーケティング予算をそのままSNSにぶち込めばいいとなっちゃいそうですが、そう単純な話ではありません。

SNS上で広告を投下しても、本質的には意味がない

SNSが大きなマーケットになったからと言って、単にSNSで広告を投下する行為は、SNS以前の古い戦い方となんら変わりありません。

今と昔の、「企業と消費者の関係性」を見れば、その理由が分かります。

SNS以前というのは、企業⇒消費者における販促コミュニケーションが上下関係のような構造でした。

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広告という拡声器を用いて、企業が消費者に商品情報を発信する。ここでは、企業からの一方的な情報のやりとりだったというのがミソです。SNSが存在しない時代は、口コミはリアル空間での井戸端会議くらいで、消費者同士の横のつながりは存在していませんでした。

そこに、SNSの登場です。

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SNSは個人間同士の横のつながりを生みました。

ここで何が起きたかというと、従来の企業からの一方通行型コミュニケーションの価値が相対的に急落したわけです。

SNS以前では、企業のポジショントークと分かりつつも、それ以外の情報を受け取る手段がなかった。ゆえに、一方的な情報受信にも価値がありました。ですが、横同士の繋がりができることで、企業の売り売りな広告(お前、この商品売りたいんやろ感)に消費者は飽き飽きしてしまったわけです。

消費者が実際に使ってみた感想以上に良い情報はありません。企業発信の広告を当てにするよりも、消費者の口コミを信頼したい、そんな思いを持って人はSNSに集まってきているのです。

この文脈を理解すると、旧来から存在する広告をSNS上に投下することがが、いかに無意味なことかは想像がつくでしょう。

横のつながりを欲している人に、縦のコミュニケーションをぶつける。

SNS市場が盛り上がっているからとはいえ、広告のような一方的なコミュニケーションは、SNS以前の戦法に変わりありません。つまり、新しいマーケットで古い戦い方をしているに過ぎないので、SNS上で広告を打ってもあまり効果は期待できないわけです。

P&Gが、SNS予算を増やしてもあまり効果がなかった理由はここにあります。(※もちろん、天下のP&G。上記のことを見越したうえで、いろいろ試してみただけだと思われます。)

まとめると、SNS市場の勃興は、上下の関係から、横の関係に情報伝播がシフトしたことにあります。この視点を無視して、SNSコミュニケーションにリソースを投下すると大惨事になります。

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ちなみに、SNSで猛威を振るっているインフルエンサーマーケは、企業の代弁者となり、横の関係からコトバを伝えることで大きく機能していると言えます。

横の関係で、多くの人に声を届ける。これまでの企業広告以上に効果が出ている理由は、インフルエンサーマーケが従来の上下関係ではなく、消費者との水平関係でマーケティングをしているからです。

まあ、てきとうにインフルエンサーを起用するだけでは、普通の広告より効果が悪いことも分かってきていますがw

SNSマーケに注力するとは、全部を頑張るということ

さてさて、SNS上でのマーケットが大きくなってきたとは言え、SNS広告に予算を振っても意味がないとお話してきました。では、SNSマーケで成功するには、何をすればいいのでしょうか?

SNSマーケの好循環歯車を回し始めるために、UGC(ユーザーの投稿)をいかに生めばいいのか?とも言い換えられます。

身も蓋もない結論ですが、SNSでUGCを生み出すには全部を頑張るしかありません。裏技はないと思った方がいいです。

事業のあらゆるポイントに注力し、顧客満足度を上げる。これがUGCを最短で生むステップです。

単発的にSNSで人がシェアをしたくなるコンテンツを考えるのも1つの手ですが、

商品の質を高める
価格を下げる(ないし、上げる)
CRMの質を上げる
接触ポイントを増やす
店舗のポップを改善する
DMを魅力的にする

などなど、商売に紐づくすべての事柄が、UGCを生むきっかけになります。

日本トップのマーケター、森岡剛さんはこのようにおっしゃっています。

市場構造を決定づけているDNA、あるいは震源とも言うべき「本質」は一体何でしょうか?いきなり核心の答えを申し上げますが、それは消費者のPreference(プレファレンス)です。
プレファレンスとは、消費者のブランドに対する相対的な好意度(簡単に言えば「好み」)のことで、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決定されています。プレファレンスが市場構造を支配するのは、小売業者も、中間流通業者も、製造業者も、最強の存在である最終購買者(消費者)に従わざるを得ないからです。

消費者のプリファレンスを上げることが目的であって、SNS上でのUGCを増やすことはその結果でしかありません。

つまり、SNS上で話題になることはマーケティングの1つのKPIにしつつ、まずは自社商品への顧客プリファレンスを高める商品開発・オペレーション・施策を考えるのです。それがSNSマーケティングを生む近道になるということです。

実際に、SNSを強化している事業会社ほど、SNS以外の土俵で勝負をしています。それはSNSの生態系が、消費者のプリファレンスで出来上がっていると理解しているから。

SNSマーケを見越しつつ、SNS上で勝負をしない。

これがSNSマーケティングのポイントではないでしょうか。

今日はP&Gの記事を読み、僕自身が思ったことを書いてみました。

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