ローソンのPBデザインリニューアルをどう見るか?コンビニの売上を上げる思考法
ローソンのPBデザインがリニューアルされましたね。(もうだいぶ時間が過ぎましたが...)
マーケター、デザイナー、ブランディング関係者からいろいろな意見が出ており、とにかくぶっ飛んだリニューアルになったと思います。
公式サイトより画像は引用させていただきます。
見ての通り、ベージュ色のデザインにほぼすべての商品が統一されています。良く言うと世界観が統一されていてインスタ映えする、ローソンブランド全体を好きになりそうなデザイン、悪く言うと、視認性が低く一目で何か分かりづらい、食品のシズル感に欠ける、そんな印象を受けました。
今日のnoteは、「ローソンPBリニューアルはうまく行くのか?」という問いを出発点とし、コンビニの売上を上げる方法について、考えてみます。
※仮説をベースとした思考実験なので、的ハズレな可能性大です。ご注意ください。
マーケティング施策を考えるときは、とにかく分ける
マーケティングで打ち手を考えるとき、まずやるべきは、「全体を構成する要素を分けること」。この「分け方」に、マーケターのセンスが宿ります。
単に、「コンビニの売上をあげるためには?」と自問自答しても、売上の概念が大きすぎて、具体的な打ち手はなかなか出てきません。
逆に、「OL向けにコンビニコーヒーの売上を上げるためには?」であれば、より具体的な打ち手が出てきますが、今度はOLだけにウケても全体で売上にインパクトが出なかった、なんてこともありえます・・・・。
具体的に意味のある打ち手を作りやすい分け方で、かつ全体にインパクトをもたらすファクターを発見する。これがマーケターの仕事です。
ではでは、コンビニの売上を上げる方法論を考えてみます。
コンビニの売上を上げる方法
ここではまず、一店舗の売上をシンプルに捉えます。
「売上=来店者×売上単価」ですね。
コンビニのビジネス戦略というのは、「①いかに来店者を増やすか」、「②いかに一人当たりの単価を上げるか」に集約されます。
つまり、このどちらかの要素に貢献できる施策を、ひとつのゴールとしているはずです。もちろん、ほぼすべての打ち手が①②どちらにも効いてくると思いますが。
コンビニの商品には大きく2つの機能がある
僕は、コンビニの商品機能は大きく2つあると考えています。それがこちら。
・人を呼び込む商品
・つい手に取りたくなる商品
です。
たとえば、セブンコーヒーは、人を呼び込む機能の役割が大きいです。
「セブンのコーヒーが飲みたいから、今日のお昼ご飯はセブンで買おう」みたいな感じで。100円のコーヒーで、売上800円が立つのなら、売り上げインパクトは非常に大きくなります。
逆に、つい手にとりたくなる商品とは、シズル感が強く、衝動買いに近いモノを指します。お酒のつまみに、「あ、これも一緒に買っちゃおう」となるあの瞬間です。
※公式サイトより画像は引用させていただきます。
コンビニの売り上げ構成を分けてみる
ではコンビニの売上をどう分けるか? いくつかの切り口があると思います。
・時間帯で分ける
・商品カテゴリーで分ける
・エリアで分ける
などなどですね。今回は、以下の2つで分けてみる。
今回は、仕事中や外出時に利用するのか?、それとも自宅で消費するのか?の視点で分けてみます。
なぜこの2つに分けたかというと、
■外出消費
コンビニの選択肢が多く、コンビニブランド力(顧客の選好)に来店が左右される
■自宅消費
最寄りのコンビニは限られていて、近いところで買い物を済ます
両者には、そのような違いがあるのではないかと考えます。
たとえば、目の前の2店舗のコンビニが並んでいる場所では好きなコンビニ向かうはずです。
一方で、仕事の帰りにコンビニに寄るときは、駅と自宅の移動ルートにあるコンビニを選びませんか?また、夜食を買いに行くときや、何か食品が足りない時は、家から一番近いコンビニに行くはずです。
まあ、この分け方も外出先より自宅付近のほうがコンビニが少ないことを前提となります。
ここから、外出消費と自宅消費に分けて、どこをどう伸ばすべきなのか、考えてみます。
外出消費で売上が増やすには?
外出消費は、自宅まわり以上にコンビニの競争が熾烈です。
都市部で仕事をしたり、お出かけをすると大量のコンビニに出会います。ローソン、セブン、ファミマの3つの選択肢があり、その中から一社が選ばれる、そんなゲームですね。
この戦いでは、まず何より「人を呼び込む商品」が重要になります。お客さんが来てくれないことには、「つい手に取りたくなる商品」が置かれていても何の意味もありません。
なので、コンビニ各社がコーヒーやスイーツに力を入れるのは、その商品でブランドのご指名をいただくのが狙いだと思います。コーヒーやスイーツをフックに弁当やお菓子、雑誌・漫画が買われているかもしれません。
コーヒーを飲みたいとき、セブンとローソンで迷うことはあっても、週刊少年ジャンプを買いたいときはどの店で買っても同じです。その場合、コーヒー選好の勝負で来店が決まっちゃいます。
こういったブランド選考自体を高める商品(人を呼ぶ商品)は、コンビニの選択肢が多く競争が激しいエリアでこそ、力を発揮するんだと思います。
逆に、自宅まわりではどうでしょうか?
自宅消費で売上が増えるには?
自宅消費、または帰り道によるコンビニでは、「手に取らせる商品」が重要だと考えます。
というのも、自宅消費では、コンビニに行く動機が「近いところに行く」が強いはずだからです。
仮に自宅消費では、コンビニを選ばず近いコンビニに行くのであれば、棚に並ぶ商品の見え方(つい手に取らせるパワー)で単価が上がっていきます。
コンビニのプライベートブランド商品は、外出時ではなく、自宅での消費を前提としているものがほとんどです。
なので、コンビニのPB商品は、おいしさ、質の良さとは別に、その場で「いかに手に取ってもらえるか?」を追求するのが王道だと思われます。
ローソンのPBデザインリニューアルについて考えてみる
ではでは、「人を呼び込む商品」と「つい手に取らせる商品」という2つの視点から、ローソンPBリニューアルデザインを見てみます。
ゴリゴリの主観なんですが、
■人を呼び込む要素(希望的観測を含む)
・デザインリニューアルによるブランド選好アップ
(ローソンを好きになる人が増える)
・SNS映え、自宅に置いておきたいデザインで、指名買いが増える
■つい手に取らせる要素
・商品の中身が想像できないから、手に取ってもらえない
・商品にシズル感が欠け、衝動買いが減る
ここで整理すると、PBデザインリニューアルがローソンの売上に寄与するかは、呼び込み力のプラス要素と、その場で手に取らせるパワー減少のマイナス要素、どちらが勝るかで決まります。
ここからはさらに僕の予想。PB商品って自宅消費商品が多いじゃないですか。なので、ブランド選好があまり働かないと思うんですよね。
渋谷や新宿で遊びに行ったときに、PB商品が置いてあるからと言って、ローソンを選ぶ理由にならないと思うんです。わざわざ外出時に、牛乳や納豆は買わないですからね。逆に、あのデザインの世界観に惹かれてお店に入っても、買うモノは他社製品のお菓子やジュースでしょうし。
そもそも皆コンビニを選んでいない説
ちなみに、以下2つのアンケートを取ってみました。
外出消費と自宅消費で、好きなコンビニと近いコンビニ、どちらのコンビニを選ぶのか?という質問です。
まさかの差がないという・・・・(笑)
外出消費と自宅消費で、売上アップ要素を分けたこと自体が間違いだったのかもしれません。(私のマーケセンスのなさが)
ただ、ここでひとつ見えてきたことがあります。
外出・自宅消費のどちらにおいても、8割弱は一番近いコンビニを選ぶということ。立地の良さで来店者の8割が決まっているのです。
そう考えると、人を呼び込むことも大切ですが、来店が決まっているお客さんに「つい手に取ってもらう」方法を考えるほうが大事かもしれません。
ただ一方で、つい手に取ってもらう打ち手が単価100~300円アップくらいであるのに対して、ブランドご指名で1人を呼び込めば500円~1000円の売上アップが見込めます。実のところは、デザインを通じた「人を呼び込む」と「つい手に取らせる」のどちらに重きを置くのか問題は、もっともっと奥が深い意思決定になんだと思います。
とはいえ、ここまでの情報(ほとんどが仮説ですが・・w)を整理してみると、ローソンのPBデザインリニューアルは若干不利な状況なのかなぁと個人的には推察します。
【まとめ】PBデザイン面から、コンビニの売上を上げる思考法
顧客目線の情報とたった2つのアンケートから、コンビニの売上を上げる方法を結論付けるのもなんですが・・・・、今日書いたことを整理します。
■前提
・8割のお客さんはコンビニを選んでいない。
・2割のお客さんはすでに好きなコンビニがある。
■打ち手の方向性
①その場でつい手に取りたくなる商品を増やす
②コンビニのご指名を生み出す商品を増やす
こう整理してみると、まだ8割のお客さんはご指名コンビニを持っていないわけで、裏を返すと、8割のお客さんをブランドご指名で狙うチャンスがあるとも取れますね。
今回のローソンPBリニューアル、ご指名のお客さんを増やし、顧客単価は上がらずともそもそもの来店者数を増やしトータルでは売上を増やす、そんな狙いがあったのかもしれません。
イチ消費者感想を述べると・・・
ここまではトータルで数字を追わなければならないマーケティング視点の話でしたが、ここからは僕個人の感想を。
コンビニ大手3社のなかで、ぼくローソンが好きなんですよね。そして、今回のデザインを手がけた佐藤オオキさんの大ファンでもあります。
なので今回のデザインリニューアル、イチ消費者としてかなり好意的に捉えています。ローソン独自のイメージ・世界観が出来上がるなぁと
今回、ローソンPBデザインの宣伝を少しばかりできたらと思い、多めに画像を転載させていただきました。この記事を読んでいる方に、ローソンの純粋想起率を上げ、イメージを頭に刷り込めたらなとw
【オマケ】LAWSON×ソーシャルディスタンス
ローソンがソーシャルディスタンスを啓蒙するポスターを出しています。これもNendo制作です。
youtube動画をみたら、あぁ面白いなぁと感じます。
ローソンのPBについて、マーケ視点でぼろクソに書いちゃった感ありますが、僕の予想を覆す結果が半年後に出ていたら、ローソンファンとして嬉しいかぎり。応援しております!
最後に、ローソンのPBデザインリニューアルについて、別の視点で書かれたnoteを紹介しておわります。
ひとつめが最所さんのnote。SNSを起点とした、新しい購買行動の設計を今回のPBデザインが担っているというもの。本当にこのnoteは勉強になります。
つづいて二つ目が、パッケージデザイナーアトリエマッシュさんのnote。
デザイナー視点で書かれていて、これもメッチャ勉強になります。「ベージュの色は他より高くつく」なんて、初めて知りました。
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