贅沢は「今」だから(パティスリー・パロラ)
「今しかできないから」
それは自分の背中を押す、魔法の言い訳だ。
不要不急の外出は避けようキャンペーン中の昨今、やむを得ない外出(これもまた言い訳だけれど・・・)も時にはある。
そんな時のご飯は、どうするだろうか。
当然、吉野家やサイゼや近所のラーメン屋さんに行く人も大多数いるだろう。
対して「趣味」という札を付けてエンゲル係数が異常値を指し示す私のような人は、こう考えてしまう。
今しか行けないから、今、贅沢しようぜ☆
毎日行けることが前提にあるのなら、毎日3,000円のランチは正直厳しい。
けれど、明日、明後日・・・次にいつ楽しみな外出タイムがやってくるか分からない。
それならば、今、1,000円ケチをするよりも、最高の思い出を自分に刻んでおきたいじゃないか。
そんなわけで、贅沢をしてきたぞ★
というお話。
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日比谷OKUROJI
日比谷の奥に潜む高架下。
2020年の秋頃、飲食、ファッション、雑貨など、こだわりの大人のためのショップが集まる商業施設がオープンした。
一度にババン!とお披露目でなく、数カ月かけて徐々にお店が増えている感じだからだろうか。
まだ案外知られていない。
しかし、グルメ好きからすれば結構大ニュースで、注目のお店もチラホラ見られる。そのひとつが、ココ。
パティスリー・パロラ
フランス人シェフ・パティシエ アレクシ・パロラが手掛けるパティスリー。フランスの老舗バターブランド ボルディエとのコラボレーションを日本で初めて実現。
つまり、フランスの超凄いシェフが、とんでもないスイーツを目の前で作ってくれるお店だ。
気になり過ぎる。
これは水。
美し過ぎて、最初にワインが出てきたのかと思った。
メニューは3種。
●シェフのデセール・コース
●パフェ
●カヌレ
もちろん、コースが最もお高い。
なにせ、2種のデザートの後にパフェorカヌレ。更にペアリングドリンク付きだ。
5秒くらいは悩んだと思う。
でも、冒頭にも述べた理由。
今しか来れないかも!が私の背中を押した。
「コースをお願いします」
~一皿目~
スパークリングワインのジュレ
ペアリングワインは、下記から選択
●クール・ド・クレイ(ロワール)
シェフの故郷のフルーティなスパークリングワイン
●パリ・セズィエーム ブラン(パリ)
上質な甘みを持つラグジュアリーなテイスト
私は上を選んだ。
「シェフの故郷の」というワードが、なんか刺さる。グサッ
ハイビスカスやブルーベリー、洋梨を丁寧にグラスの中に置いていく。
そして・・・カウンターの下からバズーカみたいなのを出してきたぞ!?
液体窒素だ。
それをボウルの中に入れる。
モクモクモク
ワクワク、モクモク
マイナス200℃くらいだそう。
「ボウルの表面は触れますよ」とひんやりを体感させてくれる。
そんな冷たいボウルの中にフランボワーズを投入。
一瞬で凍る。
ペットボトルの水が凍るという北海道の寒い日がマイナス30℃とかだもんな。フランボワーズよ、寒い思いをさせてスマン・・・。
そして手際よくシャカシャカと潰したフランボワーズをグラスに乗せ、選んだペアリングワインを注いで・・・
完成!!!!
凍ったフランボワーズは歯を立てるとホロリと崩れる。
柔らかなフルーツやジュレ、そして液体であるワインと合わせて。
食べているのか、飲んでいるのか・・・とても不思議な感覚。
シュワっと優しく痺れる感じが、神秘的なスイーツと対面した心の痺れと調和する。
続く皿に、期待しか抱けない。
~二皿目~
レモンのスペシャリテ
ペアリングワインは、下記から選択
●ヴィッラ ローゼン モーゼル リースリング Q.b.A.
キレの良い酸味と甘味のバランスが抜群の味わい
●レモン・ジンジャー・モリンガ・蜂蜜の冷たいハーブティー
こちらも上を選択。
単純に、ノンアルよりもアルコールが入ってる方が良かったからだ。
レモンだ~~~!
ブルーを帯びた紺色のお皿の上で、レモンが輝く。
まるで美術館に飾られる宝石の扱い!!
これを割る瞬間がドキドキ・・・
あ~~~~失敗💦
上手く割ると、綺麗にパカッと割れるらしいのだけれど、見事に潰れてしまった・・・。
後から聞いたポイントを記しておく。
今後の挑戦者に届きますように。
フォークで押さえて
ナイフで軽く(ある程度は力を入れてOK)コツコツと5回くらい叩く
↓
パカッと割れる
レモンの皮が入っていて、その酸味にキュンキュンが止まらない。
突き抜ける酸味を、チョコレートの甘さやミントの爽やかさが優しく包み込む。
突風が吹き抜ける中、自分の周りだけはそよ風が吹いていて、風の舞う世界を楽しむ。
目を瞑って、そんな光景を想像した。
ほぅ・・・っと自然とため息が零れた。
溜息をつくと幸せが逃げる、という言葉を信じてきたけれど。
最近は、幸せ過ぎると自然に溜息が出ることを知った。
溢れ出た幸せよ、慌てて逃げなくていいからさ。
ゆっくり、少し幸せの足りない人のところに行っておくれ。
さて私は、次にくる幸せに心を向け直す。
~三皿目~
紅まどんなとあまおうのパフェ
並べられるたっぷりのフルーツたち。
実際にパフェに使う量よりもたっぷり、ゴロゴロ並べる演出が素晴らしい。その光景を見て、頬が緩まない人はいないだろう。
ところでこの「紅まどんな」という品種。
今年、やたらと頻繁に耳にする。
初めて聞いた時、私は芋だと思った。
「紅はるか」とか「紅あずま」とか、あるじゃないか。
オレンジである。
間違えると恥ずかしいかもしれないから、ここまで読んでくれた人はこれだけは覚えていて欲しい。
「紅まどんな」はオレンジだ。
どんどん組み立てられていくパフェに、ボ~っと魅入ってしまう。
気が付いたら、できていた。
美し過ぎる。
私は花束を食べるのか???
トップには塩アイス。
赤ワインの塩が振りかけられている。
そして取り囲む、紅まどんな&あまおうの花びら。
口の中に広がる瑞々しい甘さが大変だ。
お店自慢の、グラスフェッドミルクの生クリームがたっぷりと現れる。
グラスフェッドミルク
(grass=牧草、fed=食物)
放し飼いでストレスフリーにのびのびと、美味しい草を食べて育った牛のミルクということ。
つまり、超美味しいミルクのことだ。
中に潜む苺のアイスが、良い感じにクリームと溶け合って。
最後はルバーブの酸味でギュッと締めてくれる。
寂しいけれど、これでお終い。
ドリンクは、コーヒー・紅茶・花茶から選択。
花茶を選べるお店って珍しいよね。
花が開いたら、飲み頃だ。
美味しいお茶と共に、ゆ~っくりと素晴らしい出会いの時間を振り返る。
衝撃的だった。
だって、マジマジのマジ、シェフが、パロラ氏が、目の前で、説明しながら作ってくれるんだもの!!!
流暢だけれど少しカタコトな日本語も、外国慣れしていない私にとってはドキドキのひとつだ。
他のお客さんが「美味しい、って『セボン』でいいのかしら」と聞くと、嬉しそうだった。故郷を愛しているのがよく分かる。
接客も素晴らしい。
「今日はよろしくお願いします」
「ありがとうございました」
何度も聞いた。
全てのお客さんに、そうやって丁寧に挨拶をしているのだ。
シェフはもう一人、日本の女性の方もいた。
どちらが担当して作るのかはタイミング次第。
私は3皿ともパロラ氏が担当して下さったので、女性のシェフとはあまり話せなかったけれど、そちらもとても楽しそうだった。
凄く明るく良い感じの個性溢れる接客で、お客さんも皆とても嬉しそうなのが空気でよく分かった。
最後に、自慢のカヌレはテイクアウトで。
カリっと食感にメロメロだ。
以前、「美味しいカヌレの定義ってよく分からないよね」という話をスイーツ好きの方としたことがある。
これは、確実に美味しいカヌレだった。
もしかしたら、暗いニュースの続く世の中で、幸せを謳歌することに罪悪感を抱く人もいるかもしれない。
けれど。
自然と舞い降りてくる「楽しい」「嬉しい」が少ないからこそ、自分で見つけて、全力で楽しむのだ。
溢れ出た幸せの溜息を漏らして、世の中の幸せの総量を増やそう。
素晴らしく贅沢で最高に幸せに満ちた時間をありがとうございます!
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