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行き先を知ったのは前日だった【無精女子大生旅行レポート】

我が家は根っからのインドア一家だった。そのため旅行をしたことがほとんどない。

一つだけ記憶にあるのは、小学一年生の夏に行った新潟県の水族館と海。
台風直撃前日の大荒れの日本海に果敢に挑み、灰色の海水を飲みまくったことだけ覚えている。


そんな無謀な女子小学生は時を経て無精な女子大生に姿を変えていた。

大学に入ったらさぞ旅行するんだろう…もはや海外さえもひとっ飛び、さながらナオトインティライミなんだろう…そう思っていた。

しかしさすがは無精女子大生。まるで現実にならねえ。

そうやって、夢見てはいるが一向に行動に移さないまま大学生活も後半を折り返したある日、無精女子大生は思ったのだ。

「遠くに行きたい…」

今回は、そんな無精女子大生が、旅行好き・即行動タイプの友人におんぶにだっこで連れて行ってもらった旅行のレポートを書き残したいと思う。


無精の大敵、雨襲来。

7月某日、朝から雨が降っていた。旅行するには十分にバッドコンディション、と言いたいところだったが、本日の目的地を考慮すると悪くはないのかな?と思った。

というのも、この旅行の行先は茨城県にある雨引山 楽法寺、通称"雨引観音"。あじさいで有名な観光スポットだった。

梅雨が嫌いな私が何とかしてひねり出した梅雨のいいところが「綺麗なあじさいが雨に濡れて楽しそうに見える」のみだったくらい、”雨×あじさい”には信頼を置いている。多少の雨もギリギリ許せそうだ。

私はそう自分に言い聞かせて、目覚ましが鳴った1時間後に布団から這い上がった。おかげで朝から雨の中自転車を走らせることになった。


目的地までの時間を見て、普通に2度見した

道程はすべて友人が組んでくれた。お得な切符まで教えてくれた。私は素晴らしい友達を持ったけれど、友人は素晴らしく悪い友達を持ってしまったと思う。本当にすみませんでした。

友人からのLINEを見て分かったことは、住んでいる地域と同じ関東圏なのに、目的地まで4時間半かかるということだった。
グーグル先生が渾身のボケでもかましたのだと思った。しかしボケていたのは私の方だった。最寄り駅が最寄りだとは限らないということを3年間の都会生活ですっかり忘れていたのだ。


さて、当日に戻る。なんとか予定の電車に飛び乗り、友人と合流し最寄りの岩瀬駅までたどり着いた。

問題はここからだった。件の最寄りが最寄りじゃない問題に直面した。

通常、岩瀬駅からはバスが出ており、土日は観光客のために雨引観音まで走っている。

しかし私たちは混雑を避けるため、平日にこの地に降り立っていた。そう、バスは雨引観音まで行ってくれないのだ。

岩瀬駅から平日のバスが雨引観音に最も近づく停留所までは20分。そこからは徒歩で向かう。これが40分かかるのだ。


…お気づきでしょうか。最寄駅から1時間かかっています。

とはいえ日頃の怠惰をかねて、いっちょ運動したりますか!と意気込んでバスを降り、近くのパン屋さんで腹ごしらえをした。

ちなみにここのパン屋さん、ラインナップが豊富でとても素敵でした…!(突然の宣伝)


美味なパンを食べ終え、改めて道のりを見直していたとき、前方に見える山の中腹に大きな日本風の建物がのぞいているのが見えた。
友人とは「あれが雨引観音だったらやばいねー。登山じゃん(笑)」などと談笑した。



あれが雨引観音だった。


DEAD or DEAD?


悠々自適に追い越す車を横目に山をぐるりぐるりと歩いていく。雨はミスト状になったり小雨になったりと、湿度100%を保ちながら私たちを弄んでいた。


汗だくで息も絶え絶えに歩き続けると、途中で道が分岐した。

一つは今まで通り、舗装された道路。
もう一つは、徒歩の先人が森の中を開拓し作ったであろうお手製の道。

つまり、車に轢き殺されるか山中で足を滑らせて死ぬかの2択だった。


道のりの近さとアスレチック感に心を躍らせた私たちは足を滑らせて死ぬことにした。

とはいっても、道は薄い石段が通っていてそこまで歩きづらいわけではなかった。加えて、すでに道のわきをあじさいが囲んでおり、目的地のフィールドに入ったんだなという高揚感もあった。


撤回する。やはり登山だった。

湿気と汗で、整えた前髪は死滅し、レジに通せば読み込まれるのではないかと思うほどバーコードのようになっていた。


なんとか登り終え、雨引観音入り口に到着した私たちは、さらに待ち構える石段を上った。

車でここまで来た観光客の方々と私たちの疲労度の差は、さながらハウルの動く城に出てくる、ソフィーと荒れ地の魔女が階段を上るシーンを再現したかのようだった。


少し進むと、手水舎の水面に花や浮き球が浮かべられた花手水が出迎えてくれた。今までの道中が少し救われた気がした。

厳めしい龍の頭にも花がちょこんと乗っていて、途端ファンシーな出立ちに。



そりゃここまではるばる来ますわ

そしてさらに階段を上り、ようやく境内にたどり着いた。

到着した瞬間目に写ったのは本堂の朱色。約20年ほど前に塗り替えられたようで、その色も景色に馴染んできていたものの、この日の薄暗い空気感に彩りを与えていた。

参拝を終え、(おそらく)雨引観音オリジナルの花みくじも引き、いよいよ有名なあじさいの水中華のもとへ。

一つ目の池では、あじさいがハート型になって浮かべられていたり、流れるプールで花びらが回遊魚のように泳ぎまわっていたりと、様々なギミックが凝らされていた。

放し飼いされているアヒルも羽を休めていて、明らかに自分よりも良い写真映りに少なからず嫉妬していたのは秘密だ。


ただ、これで終わり?そう思いかけてさらに奥へと進むと、一気に色彩が目に飛び込んできた。

私の拙い撮影技術で伝わるだろうかこの迫力。
一見花畑のように地面を埋め尽くして見えるほど一面にあじさいが溢れかえっている。

雨が降って辺り全体がウェットな質感を帯びているからこそ、かえってあじさいの生き生きとした華やかさが際立っていた。


そして思いがけないサプライズだったのが、雨引観音の開けた所から見える茨城の全景。
裾野に広がる田んぼの緑や、空の広さ。
高い場所にいる分、かなり遠くまで見渡すことができ、ガラス板を重ねたような透明な空気の厚みを感じた。

あの険しい道のりを越えてきたからこそ、その景色に感慨深さを感じたのだと思う。



そのあと、また40分かけてほぼ有酸素運動の徒歩を乗り越えたにもかかわらず、大宮駅のしゃぶ葉でプラマイゼロに戻したのは言うまでもない。


このレポートがまた新たな旅を書き残す日が来ることを願う。



雨引山 楽法寺(友人が見つけた素敵な名所)

ひみつの平日パス(友人が見つけたお得なきっぷ)


(最後の一枚以外は全てPhoto by 友人です)

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