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傷口

ただ切実に懸命に生きているだけなのに、なんの前触れもなく通り魔に襲われることが私の人生では中々にある。 ナイフの当たりどころがよかったのか、痛みに慣れたのか、私の治癒力が上がってしまったのか、ここ1年は過去に感じていたような痛みは感じなくなり、回復も早くなった。 今の私は、大抵の傷は自分の力で治すことができる。 しかし極たまに、まだ治療法のわからない急所を刺されることがある。 刺された直後はあまり痛くなくて、時間の経過につれてその痛みをじわじわ自覚する。 そして、刺

    • 戸田真琴著『そっちにいかないで』を読んで

      「美しい」と思った。 見えている世界、冴え渡る感受、編まれた言葉、それらすべてそのものである著者を、美しいと思った。 ”美しい”以上の表現を知らない自分が悔やまれるくらいそう思った。 そしてこの本を読み終えた今日は、昨日より世界が少しだけ美しくみえた。 この世界でもう少し生きてみようかな、そう思わせてくれる本だった。 彼女の、妖艶で明晰な表現の世界に足を踏み入れたとき、まるで映画を見ているような、いやそれ以上に、自分がその世界の一部になったかのような、まるで著者と同じ目

      • 世界はおもっていたよりはあたたかい

        起きてすぐ、あ今日無理だってなって、友達との旅行をドタキャンした。 すごく嫌なことがあった。昨日までかすり傷かと思って、今朝見てみた傷口からは、血が溢れでていた。 私は、コンタクトをつけず、暖かいベージュのコートを着て、ラルフローレンのグリーンのマフラーをして、もこもこのバケットハットをかぶって家を出た。 そしてコンビニで、スターバックスのカフェラテを買い、いつもの公園のいつもの左から二番目のベンチで池を眺めていた。 すると、おじさんとおばさんが隣のベンチにやってきた。

        • 嘘つき

          𓁷 ねぇどうしてあなたは嘘ばかりつくの? 𓆗 手にある全てものを守りたいからだよ。 自分も誰かもなにもかも。 𓁷 あなた傲慢なのね。 𓆗 じゃあ、あなたは嘘をつかないの? 𓁷 つくわ。でも私は嘘をつくのが上手いのよ。 嘘が嘘であることを悟らせないわ。 𓆗 それこそが傲慢よ。 きっと、あなたの嘘を、嘘だとわかっていながら嘘のままにしてくれている人がいるのよ。 あなたはそうやって誰かに守られているのよ。 なのにあなたに、嘘を暴く権利は

          ”正解”だけを選べたら

          人はいつも正しくは生きていけない 正解なんてないという言葉は、今回は論点がズレるから1度脇に寄せておく。 幸せや平和や安定が約束された事実としての正解がこの世には存在する。 たとえそれが自分の心の声と異なるものであっても。 事実としての正解を選ぶことで、 誰かを傷つけたいわけじゃない むしろそこに応えたい一心だ でもそれは綺麗事で、 結局は自分自身が 正解の先に約束された幸せを夢みたいだけかもしれない。 事実としての正解にいつか自分の心が追いつくと信じたいだけかもしれ

          ”正解”だけを選べたら