戸田真琴著『そっちにいかないで』を読んで
「美しい」と思った。
見えている世界、冴え渡る感受、編まれた言葉、それらすべてそのものである著者を、美しいと思った。
”美しい”以上の表現を知らない自分が悔やまれるくらいそう思った。
そしてこの本を読み終えた今日は、昨日より世界が少しだけ美しくみえた。
この世界でもう少し生きてみようかな、そう思わせてくれる本だった。
彼女の、妖艶で明晰な表現の世界に足を踏み入れたとき、まるで映画を見ているような、いやそれ以上に、自分がその世界の一部になったかのような、まるで著者と同じ目