【エチオピアで国連職員7名が国外追放】 実は割と良くある国連職員のPNG
1週間ほど前にエチオピアで国連職員7名が国外追放になるというニュースが流れた。
追放された人達はユニセフの代表やOCHAのシニアスタッフ、人権高等弁務官のシニアスタッフなど、人道支援や人権保護を行っている人が多い。
エチオピアのアビィ首相は就任してすぐにエリトリアとの和平合意を実現させてノーベル平和賞を受賞したのだけど、その後ティグレ州の反政府勢力との衝突により同州で人道危機が起こっている。
当然、国連の人道機関や人道系NGOは現地に赴いて人道支援を行い、人権系の機関は人権侵害が起こっているかどうかを調査し報告する。
そういった状況の中、今回エチオピア政府は国連職員7名を国外追放した。
国連職員の国外追放は実は割と良くある。さすがに7人一気というのは珍しいけど。国連職員、特にハイレベルの職員は外交官と同等の特権を持っている代わりに、受け入れ国政府からその人たちの入国や滞在を拒否されることがある。Persona Non Grata(ペルソナ・ノン・グラータ)と言って、略してPNGと呼んでいる。パプアニューギニアもPNGと言ったりするので、国連職員からPNGという言葉が出たら文脈で判断してほしい笑。
僕が昔いた国でも、警察がデモ隊に対して人権無視の制圧を行ったときに、それを糾弾する報告書を書いた人権機関のトップがPNGされたこともあった。
ハイレベルのPNGはニュースになったりするのだが、下の方のスタッフでもPNGされる人はいる。
原因はさまざまで、相手政府の都合の悪いことを言いすぎる場合もあれば、明らかにその人が悪いという問題を起こして追い出される場合もある。単純に国籍やその人の職歴(元軍人とか)で入れない人もいる。職場のナショナルスタッフと揉めたら、政府とつながっていて追い出されることもあるとかないとか。
国連職員をPNGとするのは政府側にもリスクが伴うので、そう簡単にはそのカードは切らないが、国連側もやられると困るので、トップの人たちは特に、相手政府との関係を保ちつつ、言うところは言う、というバランス感覚が求められる。
エチオピアの件は詳しくは知らないのだけど、おそらくエチオピア政府からしてみれば、国連が一方的にエチオピア政府を責め立て、反政府勢力の行っている人道支援の妨害等については何も言わないといった苛立ちがあったのかもしれない。かといって人権機関や人道支援機関としても、人の命を救うために、政府側に問題があることを指摘しないわけにはいかない。
というわけで、仕事している間も常にこういう緊張感があるのは事実。特に紛争国では起こりがちなPNG。なのでスタッフの間で、しばらく会わなかった同僚にあうと、
「久しぶりだねー。あんまり会わないからPNGされたのかと思ったよ笑」
とか、割と物事をはっきり言うタイプの人が
「あーあ、また会議で政府側の人たちとやりあっちゃった。私そろそろPNGされるかもねー」
なんていう冗談も出たりするのである。
僕も気を付けないとね。
今回のエチオピアの国連職員追放についての分析(英語)
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