毛繕い、笑い、歌、踊り、物語
ヒトは社会的な動物である
アリストテレスの時代から、ヒトは社会的な動物である、と言われます。
では、その社会性はどのように育まれてきたのでしょうか?この問いへの答えの1つを提供しているのが、人類学者のロビン・ダンバーさんです。
彼の名前にちなんで、安定した社会関係を築ける集団の規模である150人が「ダンバー数」と呼ばれています。
毛繕い→笑い→歌→踊り→物語
ヒトのつながりは、脳内物質まで遡るとエンドルフィンに還元されるそうです。類人猿のときは毛繕いによってエンドルフィンが出て、群れを維持していたと考えられています。
でも、毛繕いには1on1なので、なかなか大きな集団になることはできません。類人猿からさらに集団が大きくなり社会性を高めていく過程で、ヒトはともに笑うようになっていきました。
ここでの笑いは鳴き声の延長線上にあります。具体的には、「この状況は危機ではないので警戒を解いてよい」ということを集団内で知らせ合うシグナルとしての鳴き声だったとも言われています。現代でもヒトは緊張と緩和によって笑ってしまうのは、この警戒解除シグナルとしての笑いが根底にあるんじゃないかな。
ただ、笑いも、長い時間続くものではありません。そこでヒトは時間のかかる歌をつくり、うたうようになっていったんじゃないかとおもいます。ともに歌うことによって長時間の刺激でエンドルフィンが放出されやすくなる。それがヒトをつながりやすくしたのかもしれません。
そして、歌には踊りがつきものです。歌は揃っていないとカオスになりますが、踊りならそれぞれが好き勝手やってもOK。だから、踊りは歌よりも多くの人が参加できます。現代でも、歌手の回りで踊るダンサーのほうが人数が多いですよね。
しかし踊りもまた体力の限界とともに終わりを迎えます。でもヒトは、踊りよりも長く、より多くのヒトがつながりを感じられるものを見つけました。
それが物語です。ほとんど全てのエリアに神話という物語が存在し、世界の始まりや自分たちが世界とどう関わっているかを物語として伝承してきました。
また、同じ物語を共有している者同士がつながり、協力関係を築いてきた、というのは最近のユヴァル・ノア・ハラリさんの「サピエンス全史」でも指摘されていましたね。
現代を生きる私たちも日々、無意識のうちに共有された物語(宗教・主義・歴史・ビジョンなど)のなかを生きています。
そして、物語がないときにはとくに、強く物語を語る人が歴史を動かしたりもします。
Withコロナ時代の物語をつくろう
これからヒトのつながりはどうなっていくのかを最近よく考えます。
コロナウイルスへの対策として他人との接触を控えなくてはいけないことを考えると、毛繕いのような身体的接触や、一緒に大声で笑ったり歌ったりすることは控えなくちゃいけない状況です。
オンラインで笑ったり歌ったり踊ったりすることがどこまでエンドルフィンを放出させるかは分かりませんが、外出自粛が必要な今ではそれが頼みの綱です。
さらにできることがあるとすると、Withコロナ時代のあり方について共通の物語をつくっていくことなんじゃないかなと思うのです。
先の見えない時期だからこそ、そのような未来の物語を一緒に考えることが、ヒトをつなげて、そして生かすんだと思います。
だから、オンラインで未来の物語を語っていきませんか?これを読んでいただいた皆さんの語る物語がどんなものか、知りたいです。そして、その物語が共有されてつながりが生まれていけば、わたしたちはこの難局を乗り越えていけるような気がします。
物理的な距離が心理的な分断を生んでしまわないように、オンラインで共有された物語がつながりを紡いでいけばいいなあと思います。
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