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特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」

これはすばらしかった。

藝大美術館はひさしぶりにいった。
こぢんまりとした美術館で、質のいい展示をする印象がある。以前は狩野派の展覧会だったが、これもとてもよかった。

今回は、蒙古襲来絵詞や、春日権現記絵など、すばらしい作品がいくつもあった。
また、平安時代の書物などは、書の美しさだけでなく、紙や装丁も凝ったものが多く、当時は自分が思っていた以上に豊かで、発展していた時代だったのだと知った。

蒙古襲来絵詞を見ていて思ったのは、これは今でいう新聞のような、情報を伝える役割を担っていたのか、それともいわゆる小説的な位置づけなのか、ということだった。今では美術品だが、もしや当時から美術品だったのだろうか。

横山大観の滝の絵もあった。落下する水の音や飛沫、ひんやりとした空気が感じられる。ダミアン・ハーストの桜の展覧会でも感じたことだが、リアリティとはなんなのだろう、と考えてしまう。

今回の目玉はなんといっても伊藤若冲の十幅。やっぱり圧倒的で、他の作品がかすんでしまう。
若冲は個性が埋没しがちな日本画というジャンルにおいて、オリジナリティを発揮しているすぐれたデザイナーだと思っている。
日本画を、個性が埋没しがちということに反論はあろうかと思うが、小生は、たとえば狩野派の作品を観たときには、豪華絢爛、という印象を受けるが、そもそも狩野派だといわれなければわからない、という程度だ。

構図は基本的に流れるような流線形の配置になっている。色も独特で、濁っているというか、絵の具のそのままの色ではない気がする。たとえば白でも、真っ白ではない。そのせいだろうか、色数が多い作品も、華やかな感じはしない。むしろずっしりとした重みを感じる。
描いてある対象についても、リアルでありながら、どこかデフォルメされている印象で、そのバランスが絶妙だった。
このような技巧的な部分が強い印象を受けるからか、やっぱり若冲はデザイナーだと思う。

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