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「ノースマン 導かれし復讐者」(2022年)

邦題そのままの内容で、父親を殺された息子が成長して復讐するために戻ってくる。というもの。原題は「The Northman」なので、「城之内 死す」ではないが、邦題がネタバレをしてしまった印象。
ただし、映画としては良い出来だ。

主人公はヴァイキングではないのだが、北欧神話を信仰している世界観になっている。戦って死ぬとヴァルハラにいける、と信じている世界だ。

映画の雰囲気としてはマッツ・ミケルセン主演の「ヴァルハラ・ライジング」(2009年)の拡大版といったところ。製作費は「ヴァルハラ」が7億2千万円であったのに対し「ノースマン」は99億円~128億円ということなので規模が大きい。
「ヴァルハラ」と同規模の製作費の映画はホラー映画の「ハッピー・デス・デイ」で、低予算映画というくくりになっている。ちなみに「ノースマン」の7億2千万円規模の作品は伊坂幸太郎原作でブラッド・ピット主演ということで話題になった「ブレット・トレイン」(2022年)。だいたいの規模感の違いが伝わるだろうか。
ちなみに「ノースマン」の興行収入は99億円、つまり赤字だったが、その後の配信で回収している模様。

「ヴァルハラ」との比較をもう少し続けると、ヴァルハラは研ぎ澄まされた映像で、新しい才能の出現を感じさせた。「ノースマン」はもう少しエンターテイメントよりだ。とはいえ、こちらもかなり映像にこだわっており、素晴らしいシーンがいくつかあった。

本作でいいと思ったのは、あの世とこの世の境界線があいまいになっているところだ。占い師のような存在の人物が突然現れてご神託を伝えたりする。唐突に現れるにもかかわらず不自然には感じない。映像世界をうまく作っている。
北欧神話的、というよりは北欧神話がリアルに存在していると信じられる世界、といったらいいだろうか。日本でいうと、クサナギノミコトのような神話上の人物は存在しないが、八百万の神の存在は感じられる世界だ。
このような世界を構築できているので、いろいろなことが起こるにもかかわらず不自然さはない。これはうまい。

主演はアレクサンダー・スカルスガルドという俳優だ。有名ではない。復讐の念に駆られて獣のように戦い続ける男を好演していた。
母親役のニコール・キッドマンは、ずいぶんうまくなった。ただ、まだあと一歩突き抜けてほしい。
そして、話題のアニャ・テイラー=ジョイも出ていた。うまいのか下手なのかよくわからないのだが、女優としての度胸があると思う。
かなりインパクトのある顔をしていて、典型的な美人ではない。ただ、観ているとやっぱりきれいな人なので、本作のヒロインとして、適任だった。このアクの強さがフィットしていた。

広大な風景を描いており、自然の美しさ、厳しさが伝わってくる。残念なのはCGで描いているようで、つるんとした印象を受けるところだ。ナショナルジオグラフィックみたいな映像をリアルに撮影するのは無理なのかもしれないが、予算が大きいのだからもう少し頑張ってほしいというのは思った。





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