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読んだ本についてあれこれ語るマガジン

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2023年5月の記事一覧

「椿姫」(1848年)

「椿姫」(1848年)

デュマ・フィスの小説。
高級娼婦のマルグリットと、青年アルマンの恋物語。

本作のおもしろさは、物語のプロットよりも、語り口の構造にあると思う。いわゆるメタ・フィクションの一種なのかもしれない。

まず、作者デュマ・フィス(自身が登場して、ヒロインのマルグリットの死を告げる。その次に、デュマはアルマンという青年に出会う。アルマンはマルグリットとの恋を語る。このパートはアルマンの一人称になる。
その

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「人間の大地」(1939年)

「人間の大地」(1939年)

サン=テグジュペリといえば「星の王子さま」なのだけど、個人的にはあの作品は退屈で肌にあわない。では、サン=テグジュペリが嫌いなのかといえばそうでもなくて、本作などはとてもいいと思った。

サン=テグジュペリが飛行機乗りとして経験したことを描いている。エッセイのようでもありフィクションのようでもある。飛行機乗りとしてはさほど優秀ではなかったようだが、文章はすばらしい。
詩的な言葉をつづり、人間にたい

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