『塔』2020年10月号(3)

サイレントマイノリティーもいるだろう 肉に群がる雀を●REC 拝田啓佑 サイレント・マジョリティー(物言わぬ大衆)という語からサイレント・マイノリティもいるだろうと考える。塩野七生のエッセイか、歌のタイトルか?肉に群がる雀が不気味。それを録画するのも怖い。自分は少数派という自覚か。

〈社会人になり生活が安定してから、痛みに弱くなった。〉同作者のエッセイより。そんなものなのかー?とちょっとびっくり、でも何となく納得。

クリームソーダ内緒でこぼした今日の空ワンコールしたらうちまで来いよ 永田玲 「内緒でこぼした」は「こぼしたことが内緒」ということか。語順が短歌的。下句の強引なセリフは電話の相手だろうか。相手に踏み込まれながら、自分の心には内緒の部分があるのだと思う。

消えかけてた止まれが白く塗られてる自己責任って嫌いじゃないし 笹嶋侑斗 上句下句の間に飛躍がある。道の「止まれ」が白く塗り直された。行動を止めようとする何か。「自己責任」は否定的に使われることが多い語だが、ここでは自分の責任において止まらないのだ、という積極的な表明と取った。

鬼越といふ名を持ちて小さき山ふもとの町に多胎児多し 小林真代 「小さき」は「ちさき」と読むのだろう。山の名前とふもとの町。もしかしたら何の関係も無いことかもしれないが、こうして詠われると因果関係があるようの思える。民話的世界を垣間見るようだ。

⑱大橋春人「歌集・歌書探訪」『ねむらない樹別冊 現代短歌のニューウェーブとは何か?』〈この本は「ニューウェーブ」について考えるための一冊だ。これから議論はさらに深まるだろう。「ニューウェーブ」が正史になるのは、まだ早い。〉同感だし、歴史は本人以外が書かないと意味が無いと思う。公平性が無くなる。この件に関しては特に思う。

また雨だ、降り始めから知つてゐる雨はどれだけあつただらうか 澄田広枝 たしかに、雨って気がつくと降っている。降り始めから知っている雨なんてほとんど無い。これは世の中の流行とか趨勢とかもそう。と言いながら、喩ではなく、雨の歌と読みたい。どこか寂しさを感じる歌だから。

見渡せる青は藍へとのぼりゆく水平線の先を知らない 中本久美子 視線は、海の上を奥へ奥へと平面移動した後、水平線まで来たら、空へのぼって行く。下句の言い切りがいいと思う。未来のことを言っているようにも思う。


2020.11.2.~3.Twitterより編集再掲