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角川『短歌』2020年8月号

①上野誠「みじかすぎるうた」今回はなるほどと思うところが多かった。さらに、〈近代における短歌・俳句の歴史はいわば、「革新運動史」である。「堂上和歌」といわれる宮廷中心の歌をどう「国民」のものとするか。〉この辺はもっと知りたいところ。

②大特集「没後10年河野裕子」〈家族愛などで幅広い読者に支持されている河野裕子ですが、その独自な文体はむしろ難解に属するものにも思えます。〉この視点に共感。内容がよく伝わるからと言って、文体は簡単ではない。歌そのものから河野裕子を考える大切さ。

③江戸雪「裕子さんとのこと」〈病気になってからの裕子さんの電話は激変した。「たくさんの賞を貰ったけれど何にも残っていないの」「(…)短歌に助けられてきただけです」そう繰り返し言っていた。〉何と寂しい言葉だろう。読むと泣きそうになる。今日、10年目の命日。

④藪内亮輔「「平明」というテクニック」〈河野裕子は言葉の人である。(…)彼女の歌を彼女たらしめているのは、それら「愛情の深さ」ではない。彼女の「言葉へのこだわり」と、天才的な言語センスである。〉河野裕子の歌を人生というストーリーから切り離して言葉で読んだ論。

〈本人は無意識かもしれないが、よくよく言葉の細部を見ていくと、定型韻律からはみ出ている箇所にいい助詞が多い。〉藪内自身の鋭い言語感覚に基づいた、力ある論。河野裕子を言葉で読んでいこうという立場は出るべくして出たものと思う。河野短歌を読む上で大切な論の一つが書かれた。

2020.8.11.~14.Twitter より編集再掲