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『歌壇』2020年6月号

①特集「塚本邦雄」島内景二〈塚本の美は・・・不信・抵抗・野望の美、つまり悪の美学〉〈悪の原義は悪(にく)むこと・・・〉 美という言葉が出て来る時点で、その悪は文学者の頭の中にある悪でしかないように思う。悪って美の範疇におさまるものなのか。この特集の他の書き手の文にも思った。

②特集「塚本邦雄」柳澤美晴〈文体と云うが、言葉こそは血肉であり、その血肉の源たる我々の感性は外来語と複雑に絡み合っている。〉塚本短歌の特徴を四つ挙げている。掲出部はその四点目だが、外来語の導入による、日本語の問題にも関わっていると思う。内容も興味深く、文章もいい。

③特別企画「三十一歳競詠」三十代競詠ではなく三十一歳。この限定感。なぜ三十一なんだろうと考えていたけど、塚本邦雄が『水葬物語』を出したのが三十一歳だからだと編集後記に知る。(結構長考した。)それを思って読むとまた味わいが違う。

⑤「三十一歳競詠」渋谷美穂〈塚本邦雄はキリスト教の信徒というわけではなく、聖書を文学として親しんでいた人物である。〉塚本に限らず、聖書を文学のように見ることは、日本文化の中に多くある。信仰を持つ人からすれば違和感がある作品もあるだろう。重要な論点と思う。

2020.5.30.~6.2.Twitterより編集再掲