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待ったなし!政府投資が必要な分野

前回のブログ(「賃金をあげるために生産性が必要」は嘘だった!)では賃金を上げていくには人材獲得競争が必要であることを述べた。
今回はではどうやって人材獲得競争を引き起こしていくのかを具体的に考えたいと思う。

民間は景気変動を拡大させるように動く

人材獲得競争は当然ながら、良質な求人が多くなることで起きる。
民間企業が増やすのが一番良いとは思うが、企業は景気変動を予測し、不景気を予想すれば採用を減らし、好景気を予想すれば採用を増やす。
つまり、不景気になれば不景気をより拡大させるように、好景気になれば好景気をより拡大させるように動く。
不景気の時に民間が自ら景気を拡大していくのは難しいということ。
不景気の調整には政府の支出で雇用を増やすことが必要だ。
最近でこそ、人手不足も言われるようになってきたが、これも政府の支出で介護産業が労働力を多く吸収したからだ。
今必要なのは、介護より生産性の高い仕事を政府が作り、人材獲得競争を促すことである。

政府支出を増やすことは財政的に問題とはならない

政府支出を増やすことを主張すると財政赤字を心配される方が居る。
確かに一時的に支出は増えるのが、人材獲得競争で賃金が上がれば、税収は増える。
所得税は累進課税だから、例えば所得が2倍に増えたら、所得税は3倍にも4倍にも増える。
給付金など人材獲得競争に繋がらない支出ばかりを増やすと赤字が膨らんでしまうが、人材獲得競争につながる支出ならば赤字は拡大しない。
支出が増えても税収が増えれば問題ないのだ。
詳しくは(なぜ財政赤字が増えるのか)でも触れているので読んでみて欲しい。

政府はどのような仕事を増やすべきか

政府が仕事を増やすべきだというと政府には効率的な仕事はできないとか、市場を歪めるとかの批判をいただく。
ではほっとけば民間がやるのか?
民間には儲けることのできる仕事しかできない。
利益のでる事は民間がやれば良いし、政府が介入すべきではない。
政府が増やすべき仕事は儲からなくて民間がやらない仕事。
ただし、国民生活に必要な仕事。
または投資しても回収までに時間がかかるか、回収できないかもしれない仕事。
政府は税収によって稼ぐので、政府の行う事業で利益を出す必要はまったくない。
仕事を増やし、人材獲得競争による賃金アップをすれば事業収入はなくても税収が増えるのだ。

政府が仕事を増やすには

政府が仕事を増やすには主に4つの方法がある。
◯公務員など直接の雇用を増やす
◯公共事業のように民間に発注する
◯儲からない事業に補助金をつけて儲かる事業に変える(再生可能エネルギーのFITがまさにそれで震災後に革命的に導入が進んだ)
◯規制のために進まない技術革新の規制を外す(ただし、規制の主旨を慎重に検証する必要がある)

次項から具体的に挙げてみたいと思う

政府が増やすべき仕事1 公務員

公務員は一番手っ取り早く、人材獲得競争を起こすことができる。
賃金を上げたり、もしもの対応の時のためにも人数を増やすべきだ。
少なくとも、非正規公務員は全て禁止すべきだろう。
東京一極集中を避け、少子化対策にもするには地方交付税の大幅な増額が必要だ。
イナカノミクスである。
だが、こう考える方も居る。
公務員は税金で賃金をもらっている。
公務員が増えたら税金が上がる。
気持ちはわからないでも無いがそれは間違いなのだ。
公務員は見方によっては確かに税金から賃金が払われてるとも言える。
でも、公務員は何もせずにその賃金を貰っているわけではない。
それだけの付加価値を社会に産み出してる。
警察、消防、教育などこの基本的インフラを全て自前で用意しなければならないとしたら、一体どれだけのコストがかかるか。
火災保険だけでも決して安くは無いが、これに実際に消化しに来てくれるオプションをつけたとしたら、とてつもない値段になるだろう。
消防だけでなく、全ての公的サービスが公務員の労働によって格安で提供されている。
教員の賃金が上がれば教育の質は良くなるし、警察や消防も十分な人数居た方が安心だ。

公務員


それだけではない。
公務員にも生活があり、たくさん得た賃金でたくさん使うことができる。
それによって民間の賃金も増える。
で、税収が増えるから税金を上げなければならないということはない。
また例えばアメリカの軍需産業はアメリカの経済を支える一大産業だ。
でもその顧客はほぼアメリカ政府だけに偏っている。
準公務員みたいなものだが、アメリカ経済を牽引している。
政府支出で賃金を貰っていても、それは付加価値であり、民間となんら変わるものではないのだ。

政府が増やすべき仕事2 介護

介護といっても介護職を増やそうということではない。
生産性の低い介護の生産性を上げるために政府の投資が必要だということだ。
介護は3Kの仕事と言われるように大変な仕事だ。
重労働だし、細かな気遣いも求められる。
それを技術で軽減できる部分はどんどん導入して少しでも楽な仕事に変えるのだ。

介護


具体的にはアシストスーツやパワードスーツ、オートバスシステム、電動ベッド、電動車椅子、自動配膳、みまもりカメラ、みまもりAI、遠隔医療などだ。
これらの導入に補助金をつける。
すると、こういった介護の周辺事業が活発になり、求人が増える。
導入が進むことで低価格化、高品質化も進む。
高齢化で最先端を行く日本がこうした分野でイニシアチブをとりパッケージ化、輸出していくことも可能になる。
さらには、こういう設備の導入で一定の要件を満たした施設は一人が3人まで介護できるという要件を4人までできるように緩和する。
生産性は格段にあがり、賃金も上げれるようになる。
このようにして介護を社会的負担から成長エンジンに変えるのだ。
カイゴノミクスである。

政府が増やすべき仕事3 インフラ

政府の雇用創出として一般的に多いのは公共工事である。
しかし、プライマリーバランス黒字化目標と共に一気に無駄の対象となり、削減され、大量の失業、廃業、転業を生んだ。
無駄というのはなかなか判断が難しいもので、普段誰も利用しない建物がいざ災害となった時に、避難所になったりする。
また、無駄を削減したことで財政収支が改善したのかというと、失業者の増加は税収を減らし支出を増やすので、そうではない。
無駄の削減こそが無駄な努力だったのだ。

インフラ


高速道の繋がってない部分は災害対策のためにも早く繋ぐ。
高速道は基本的に無料で混雑具合に応じた料金に。
大型の船が入れるように港湾を改修。
リニアは国費で、早急に。世界はリニアより先に行くハイパーループに取り組んでいる。
堤防、ダム、耐震化など防災減災対策は発災時の被害を減らすことに繋がる。
送電網を整え再生可能エネルギーの導入を後押し。
電線地中埋設し、防災と景観良化に繋げる。
老朽水道インフラの更新。
通信設備、発電設備、水道設備等の生活インフラに関わる設備の初期投資は政府が負担し、国民生活コストを低減する。
再エネ賦課金は即刻、国費負担に切り替える。
どれも待った無し、何年もかかる大仕事だ。

政府が増やすべき仕事4 教育、先端研究

教育はもっとも投資効率の高い事業だ。
サポート人材を増やし教育者の負担は極力さげ、教育に専念して貰う。
待遇を上げて優秀な人材が教育に従事するようにする。
画一的教育ではなく、好きや興味を育てる教育も選べるようにする。
受験のための英語教育からは脱却する。必修から選択科目への移行も良いかもしれない。
研究職を希望しながらその待遇の低さのために諦めたり、海外の大学に行く人が多い。
待遇や研究資金を上げ、国内外問わず優秀な人材の獲得に力を入れるべきだ。
他の項で挙げてる投資を円滑に進めるためにも教育は原点でもある。
エデュノミクスである。

教育


また先端研究として特に力を入れるべきは、AI、6G、スパコン、量子コンピューター、ビッグデータ、ブロックチェーン、サイバーテック、サイバーセキュリティー、フィンテック、ロボティクス、自動運転、ドローン、画像解析、ナノテクノロジー、モーター、半導体、センサー、リニア、ハイパーループ、スペースソーラー、スペースエレベーター、スペースコロニー、ソーラーパネル、洋上風力、バイオマス、地熱、核融合、廃炉、素粒子、新素材、再生医療、感染症、ガン治療、遠隔医療、ニューラリンク、野菜工場、陸上養殖、無人農業、品種改良、遺伝子組み換え、DNA解析、蓄電池、有機EL、Eスポーツ、生体認証、伝統技術の保存、自動翻訳などなど、遅れてはならない、日本が1位にならなくてはいけないテーマが多数である。

政府が増やすべき仕事5 エネルギー

エネルギー資源の乏しい日本ではエネルギーは経済面だけではなく安全保障としても、とても大事なことである。
エネルギー自給率を上げることは環境面からも求められている。
とはいえ、再生可能エネルギーの導入には課題も多い。

再生可能エネルギー


太陽光は効率がまだまだ悪く、広い面積を必要とする。
そのため無理な開発も行われ災害を起こす例もしばしばある。
自ずと太陽光を導入できる上限があることになる。
しかし、その上限はいくつかの工夫で引き上げすることはできる。
太陽光は昼と夜、晴れと雨では大きく発電量が違うが、各メガソーラーはできるだけ長時間売電できるように売電上限以上に過積載をしている。
これを蓄電池の導入でフルに活用できるようにする。
送電網の脆弱性で導入できない地域があるので送電網を整える。
太陽光パネルを高効率なものに更新する。
風力発電は重低音被害が報告されていて、民家の近くには建てられないことになってる。
洋上風力発電も遠浅の海岸が求められるが、海に囲まれた日本と言えど適地は少ない。。
当然ながら風が安定して吹くということも求められる。
そういうことから、風力発電も導入できる上限がある。
安価、フロート型の風車の開発が必要だが国内メーカーは既に撤退してしまっている。
国の力強い支援が必要だ。
バイオマス発電は一口にバイオマスと言っても様々な研究が進んでいる。
トウモロコシからエタノールを精製するエタノール燃料や間伐材を活用したもの、ユーグレナを品種改良したユーグレナオイル、下水道汚泥を利用する下水道発電等ある。
食料危機に備えるためにトウモロコシを使うことの批判や発電効率、コスト面にまだまだ課題がある。
地熱発電は日本には資源地が多く、期待も大きい。
しかし、その適地のほとんどが国定公園の中にあったり、開発に1年くらいかかることや、安全性の面から、開発は進んでない。
再生可能エネルギーの他にも核融合や水素エネルギー、エマルジョン燃料、燃料電池、全個体電池、マグネシウム電池、スペースソーラー、ゼロエネルギーハウス、スマートグリッドなど、全方位に力を入れて取り組むべきだ。

政府が増やすべき仕事6 防衛

防衛装備品関連企業の事業撤退が相次いだ。
政府が企業の利益率まで定め、利益が出ないからだ。
このようなことでどうやって自国の防衛をするのか。
外国から調達するとでも言うのか。

軍事


少子化が見込まれる中、縦に広い日本の国土を効率的に守るためにも軍備の更新も重要だ。
予算を増やして外国からトマホークなんて買ってる場合ではない。
自国の防衛産業を育て経済を牽引するような産業にするのだ。
アーミノミクスである。
また、これからの防衛は陸、海、空だけでは足りない。
電脳軍と宇宙軍の創設が必要だ。

政府が増やすべき仕事7 宇宙

これからの産業の起点は宇宙になる。
宇宙を制すものが、軍事だけでなく経済も制すということになるだろう。
官、民共に頑張ってるとは思うが、まだまだ立ち遅れてると言わざるを得ない。

宇宙


現在、宇宙へのアクセスはロケットだけに限られるが、宇宙エレベーターの開発を急ぎ、よりスピーディーにより低コストで行けるようにすべきだ。
宇宙で太陽光パネルを展開したり、原子力発電したりしてマイクロ波で地上にエネルギーを送るというような構想もある。
また、1万年の保存が必要な核のゴミも、宇宙エレベーターで安全に宇宙に運べれば太陽へ廃棄するような選択肢も出てくる。
アストロノミクスである。

政府が増やすべき仕事8 農業

食料自給率は安全保証上、もっとも大切なことの一つだ。
農業政策の根本的な過ちは米価を維持する政策をとり続けてることだ。
国民負担が増えるばかりで、何のメリットもない。
生産性を上げて米価をさげ、一大輸出産業に育てることが必要である。

農業


そのためには所得保証を少なくとも諸外国並みにつけ、米価の変動による所得への影響を小さくする。
農機具、ドローンの自動運転、衛星監視システム、AI最適化、品種改良などの研究や導入に大きな補助金をつける。

まとめ

このように政府が行わなければならない仕事は山のようにある。
民間だけで収益化して進めることはほぼ不可能であろう。
そしてこれだけの仕事を進めれば必ず圧倒的な人手不足になる。
猫の手も借りたい状況になり、どんな人材でも活用していこうということになる。
ブラック企業やハラスメントは消滅し、賃金はどんどん上がるだろう。
それにつれて税収も上がる。
仮に一時的には財政赤字が増えたとしても、それは将来世代につけ回すのが正しい
ただし、将来のためにしっかりした経済発展とあらゆるリスクを低減させた社会を届ける義務がある。
そのための制約は財源ではなく人材なのだ。

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