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あきら
2023年10月25日 10:46
月夜のベランダには、酔いを醒ますに十分な冷たい風が満ちている。左手に冷えた缶ビール。右手に古いiPhone。こんな、くたびれ気味のサラリーマンにとって最高なロケーションの花金の夜、俺の気分は最低であった。ぼうっと動画を眺めていたはずのiPhoneには、先ほど唐突に現れたエアドロップーー画像共有をワイヤレスで行うシステムの確認画面。そこに『受け入れる』『辞退』という2つの選択肢と、「高い
2023年10月6日 14:56
夢だと自覚する夢は何度かみたことがあった。夢でなければいいのにと思う夢は、初めてだった。 名前も知らない色の空だ。 紺と紫の夜の裾と、オレンジと赤の朝の気配が、遠い山の稜線の程近くで滲んでいる。すぐ近くで星や月がずいぶんと穏やかに光っていて、その輝きはまるで水の底に落ちた硝子のようだった。 ぼんやりとしながら自分のすぐ脇を見ると、白い塗装がざらざらと剥げた木の縁がある。そこへそろりと手を