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東博「きもの展」は日本衣装の歴史絵巻

東京国立博物館でひらかれている「きもの展」は着物の展覧会というよりもの安土・桃山時代からの文化絵巻だった。絵には人を描けばその衣装も描かれる。着物だけではなく、屏風・人物像にも目を見張るものがあった。


東京国立博物館としては47年分ぶりとなる大規模な染色の展覧会。これまで京都国立博物館、あるいは催事場などでたびたび開かれてきたが、スケールが違った。

国宝の屏風もあり、屏風、絵、図などだけで充分に見ごたえがある。圧巻は貴重な着物の数々だ。この同時展示に大きな意味がある。

刺繍や織り、染色の見事さには息をのむ。だがそれだけではない。

ここでは衣装が展示されているだけではない。どのようにまとっていたか、当時の着方や、合わせた髪型までがわかるように絵がある。

たとえば「婦女子遊楽図屏風」(江戸時代、17世紀)を見ると、細い帯を低い腰位置にしめていたこと、ゆるりとした着方、髪型の自由さがわかる。そして改めて当時の着物を見ると、初めに見た時とまた違う目で見られる。柄の置き方、小袖の長さ、裾の引きずる感じなど。そうか、こうしてまとっていたのか、と。

これが絵や壷・器などと大きく違う点でもある。

飾りではなく、実用。もちろん、器も用の美ではある。だが、着物のほうがずっと朽ちやすい。そして人に合わせるものだ。サイズも色も、その人に似あうものをあつらえる。

当時の人の姿を、より明確に浮き立たせてくれるものだ。見る者のイマジネーションを刺激してくれる。


また、着物を作る技術の進歩を知る。どれもこれも豪奢だが、絞り、刺繍、織りが変化していく。着物の模様は一枚絵の絵羽となる。

あまりの豪華さを止めるために「惣鹿の子」「縫箔」「金糸」が禁じられる。そのために友禅染が脚光を浴びていく。

これは日本史でも習った「奢侈禁止令」だ。それを目の前で見ることができる。庶民のしたたかさを着物の表現で見る。

また薩摩から将軍徳川家定に嫁入した天璋院篤姫の衣装や嫁いる道具の数々は豪華なだけではなく、雀の模様が好きだったなどの趣味やどことない奥ゆかしい人柄を感じさせる。

ほかにも男性の火消半纏、値付け・印籠などの小道具。

明治・大正以降の斬新でモダンな柄行など、見所が満載。

着物姿の女性も多く、優雅な雰囲気でもある。しかし、女性だけではなく、ぜひ男性にも見ていただきたい。これは日本の歴史であり、文化の側面を如実に映し出している。

上野の東京国立博物館にて。

8月23日まで。7月27日以降は後期展示となる。日時指定の予約制。

カタログも極めて美しい。大人気で増刷されている。

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