「母性」の正体
自分には「母性」がない。
出産してから言い続けてきたこと。夫は否定するけれど、今までずっとそう思ってきた。
母性のない母親
私には子どもが2人いる。自分で産んだ。
だけど、一般的に「母性」や「母性本能」という言葉で表現される感情を自覚したことは、これまで一度もない。
自分のことはさておき何より子どもを優先したい、とは思わないし、この子を守れるのは私だけ! という強い正義感がみなぎったこともない。
私にとって、(それがどんな内容であっても)自分が仕事をしている、ということが大事だし、子どもとず〜っと一緒にいる週末は、気が狂いそうになる……こともある。「ママ早く帰ってきて〜」と言われても、やっぱり仕事がしたい。
もちろん、子どもが可愛くないわけではないけど、それが「自分のすべて」になることはない。きっとこれからもないと思う。私自身のことも子どもも、どっちも大切だ。
「子どもを産んだ女性には、みんなに等しく備わっているものでしょ」的な姿勢で、世間が母親になった女性へ「母性」を軽々しく要求してくることに、この10年弱心底腹を立ててきた。テレビなどで「母性本能」「さすが母親」などと聞こえてくると、睨みつける始末だ(笑)
そもそも、「母性」とは
お決まりではあるけれど、一応ここで、「母性」の定義を押さえておこうと思う。
はっ⁈ 「子どもを守り育てようとする本能」って父親にもあるでしょ? なんで全部母親にやらせようとするんだろう。
やはり疑問は全く解消されなかった。
「母性」という言葉は、昭和のある時代(もしかしたらもっと前から?)都合よく使われてきたのだと思う。
「女性は生まれつき子どもを育てやすい性質なんだから、あとはよろしく」。こんな具合に、女性に、母親に育児を押しつけるために、便利に使われてきたのが実情じゃないだろうか。
そして、これもずっと疑問に思ってきたのだが、そもそも育児において、「母親」にしかできないことなんてあるんだろうか?
「子どもは結局母親の方が好きだ」」「ママがいい!って言うから」。こう主張する人もまだいるだろうけど、それは普段母親が子どもの面倒をみていることの裏返しで、一緒にいる時間が長いだけの問題だ。
子ども(赤ちゃん)は、大人が思うよりもずっと“したたか”だ。自分の欲求を最も早く満たしてくるれる人は誰なのか、よく知っている。だから、育児に慣れている母親のもとにかけ寄っていく。母親と子どもの間に、父親には入ることのできない「特別な絆」があるわけじゃない。
事実、息子が0〜1歳の頃、夫は息子担当で(私は娘5歳担当)、いつも面倒を見ていたら、転んで泣いた時、息子は近づいた私をスルーして、「パパ〜」っと夫の元へまっしぐらだった。反対に、私が中心に育児していた娘は、3歳くらいまで私としか寝なかった。
「母性」は母親だけのもの?
こんなふうに、ずっと「母性」という言葉にモヤモヤしてきた。ここ数年は、何でも母親に押しつけよう、という圧力は明らかに弱まったと感じるけど、「母性」についてはなんだかすっきりしなかった。
そんな私に救世主が現れた!
たまたま仕事をしようと入ったカフェで、目にとび込んできた「CREA」。テーマはズバリ、「母って何?」
仕事をほっぽらかして、読み耽ってしまったのは言うまでもない。
目次のなかでひときわ光って見えたのは、「母性の正体」というテーマ。大急ぎでめくって読んでみると……。出産してからの私の疑問に、小児精神科医で脳科学者の内田舞さんが、キレイさっぱり? 答えてくれていた!
全部は書けないので、結論部分だけをここに引用しておく。
出産を経て母になると、女性の体、脳に変化が起こる。子どもに関係ないことをあまり思考しなくなったり、赤ちゃんの世話をしたくなったり、赤ちゃんが何を欲しているのかわかるようになったり。
でもこれ、父親になった男性にも同じく起きる変化だというのだ! さらには、養子縁組など、生物学的なつながりがない親にも変化は起きる。
よくぞ言ってくれた〜‼︎ 母親だけが持つ特性のように「母性」なんて呼んでるけど、親になれば誰にでも起こる変化なんじゃん! もう「母性」なんて言葉は使わず、「親性」とかにしてほしい。そう、ルンルン気分で読み終えたのだけれど……。
いや、ちょっと待てよ?
親になれば男女関係なく生まれるのが「母性」だとしたら、親になったけれど変化がなかった私はつまり、例外中の例外? 突然変異??
そんな私のような人も、 安心してほしい。内田先生はこうも書いている。
そう、きっと、社会が勝手に作った「母性」という概念に当てはまらなかっただけ。すべてを子どもに捧げて生きる「母性」はないけれど、日々子どもと向き合い、四苦八苦しながらともに生きている。それで十分ではないか。
私をはじめ、勝手に理想として作り上げられた、ありもしない母親象に苦しめられてきた女性は少なくないのではないか。
もういい加減、そんな社会は終わりにしたい。
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