『なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか』発売を記念して、著者の林伸次さんと店舗デザイナーのヤマシタマサトシさんに対談していただきました 2(後編)
渋谷で老舗バー「bar bossa」を経営しつつ、音楽、飲食、恋愛と多岐にわたるジャンルでの著述家でもある林伸次さんと、店舗デザイナーとして会社を経営する傍ら、吉祥寺で飲食店「あわい」を経営するヤマシタマサトシさんとの対談。前編はこちら
飲食店が生き残るには何が必要?
ヤ「林さんは著述でも稼いでいますが、そのバランスのとり方ってどうですか。飲食店を持っているけど、それは広報のためで、それ以外のコンテンツで稼ぐというスタイルがこれからたくさん出てくるのかなって思うのですが」
林「ああ、そう思います。僕今正直言って著述業の方が収入いいんですよ。で、お店をやめて著述業だけにしようかなって」
── いつも言ってますよね(笑)
林「はい(笑)。でもそうすると今日みたいな話もないし、美人インタビューの場所もないし、いろんなことが入って来ないんですよね。だからここは場所としてやっていくしかない。あとは店に立っていると編集さんが入ってきて、こんなことしませんかって来てくれる。だからヤマシタさんと同じかもしれない」
ヤ「僕はそれを狙ってハコをつくりました。やっぱり場所があることが教会なんですよね、実際に。お客さんのつながりで仕事が来たりするんです」
── それでも度胸がいることですよね、ハコを持つのって。固定費がかかりますからね。
林「来ても来なくてもお金がかかるんですよね」
── 会社経営している人が事務所を持つのであれば、飲食店と併用にした方が良さそうですね。
林「ですね。僕の知り合いでもそうしている人はいますよ」
DIYでお店つくりのアレコレ
林「あ、僕ヤマシタさんと話したいことがあったんだ。みんなが口をそろえて言うことがあるんですが、内装は結局プロに任せた方がいいって」
ヤ「最初は皆さんDIYするって言いますが、2店舗目は丸投げしたいって言いますね(笑)」
林「結局その方がお金はかかってもきれいだし、時間もかからないし...」
ヤ「それに開店直前の凄く忙しい時期って、実はメニューを試作したり、新メニューを考えたりする大事な時期なんですけど、そこが工事ともろ被りしてしまう」
── この本に出ている人たちはどれくらいの割合で自分たちでやったんですか。
林「それがもうね、自分でやった人たちばっかり(笑)」
ヤ「8割くらいはそうでしょう(笑))
── ってことは、ここに出ている人たちのお店が素敵で人気があるのにはその意味も?(笑)
林「いや、あのですね、僕も自分でやっちゃったんで言いますが、安くできるのって当たり前だけど魅力的で(笑)。初期投資で内装のために500万円とか借りられないんですよね。とても勇気がいるというか(笑)。でも、始まったらそんな金額はあっという間に返せるんですよ」
── あ、そうなんですか。
ヤ「お店が軌道に乗ればね。これは結果論ですけど、僕のお客さんで生き残ってるのはDIYした人が多いです。自分でやる人はコスト意識が高いんですよ」
林「あ~なるほど!だから8割がDIYなんだ」
ヤ「小さい店でも厨房まできちんとすると、坪単価7~80万いっちゃうんですよ。物件所得費もかかるし、工務店の言い値で値切らずやったら初期費用1千万になりますから。初期投資にそれだけかけると回収のスパンが長くなって、じり貧に倒れるパターンが多いです。いつまでたっても借金が返せない。でも融資受けて口座に一気に500万円とか入ると舞い上がっちゃうんですよ。好きなもん買える~って」
林「そうそう、そうなる(笑)」
ヤ「でもそれやっちゃダメ。個人オーナーさんには、『初期投資は1万でも下げましょう。それはあなたのお金じゃなく、お客さんがこれからあなたに払うお金だから』って言ってます」
林「今のいいですね~!タイトルにしよう(笑)」
── お金の面でもそうでしょうけど、客側からすると、自分たちで手作りした部分、そこの個性が見えると楽しいです。
林「ああ、僕もテーブルを自分でつくったって言うとお客さんが喜んでくれるんですよね、どういうわけか。いかにも手作りって、逆に良いみたいで」
ヤ「僕はDIYをお勧めしちゃいますね。でもここまではプロに任せましょうって話はします。水回りはもちろん、カウンターはやめた方がいい。あれは上級者。一 番やばいのは椅子です。その辺はプロに任せないとだめ」
── では何なら自分たちでできますか。
ヤ「解体と塗装。塗装は自分たちが一番いいですね」
── なるほど。直接安全面に関わりのない部分なら大丈夫そうですね。これだけお店がある中で生き残るって、大変。自分のお店を選んでもらうための、今お二人から聞いた戦略は本当に納得です。でも、この本に書いてあるお店は、そこまでの戦略持ってないお店がほとんどですよね?(笑)
ヤ「SNSとかバンバンしているお店も中にはありますけど、全体的には、地域に根差して集客するようなビジネスモデルが多いように感じましたね」
林「はい、街に溶け込もうって皆さん言ってて面白かったです。インタビューではグッズとコラボについても聞いてるんですね。なぜかというと、ブランド力の強い飲食店には、飲食よりもグッズの方に注力して成功しているところもあるので、皆さんはそれ考えてるかな〜と思い...」
── あ~、そういうやり方があるわけですね。でもこの本の方たちはやっている様子が...(笑)
林「ん〜、みんなブランド力はあるけど、やらないんです(笑)」
ヤ「現場が好きな人が多いのかもしれないですね。小売りの発想と違って。飲食の人って、お客さんが美味しいって言ってくれるのが楽しいからお店やってる人が多いし」
林「そのための食材探しに時間を使いたいんでしょうね」
── グッズを売るのはまた違うテンションなのかもしれません。
ヤ「この本はお店を出すときの攻略本だと思います。飲食関連のビジネス本はたくさんあるけど、役に立たないものが多いんですよ。机上の空論が多くて」
── 林さんが聞いているからこそ、リアルなんでしょうね。
ヤ「僕は今まで100店舗以上つくってきましたけど、全部違うんですよ。出店場所、許可を得る保健所メニュー、地域の住民と環境、工事の値段すらも時期や環境によって変わっていく。完全に生き物なんですよ。セオリーは通用しない」
林「本当にそう、セオリーはないんですよ。店って生き物だからセオリーは通用しない(タイトルに使えるよね笑?)」
── ワハハ。
ヤ「だからこの本はケーススタディーみたいなもの。1冊1800円+税で20店舗分の話が詰まっていて、1店舗100円でこの話が聞けるのは大変お得ですよ」
── なるほど~!こういう話って、自分でお店をやろうと思って誰かに相談しに行ってから初めて聞ける話なんですよね。しかも一見さんには教えないし、SNS で拾うこともできない。
林「SNSには載せないですね」
ヤ「失敗談は特にね(笑)」
── 本日は貴重なお話をありがとうございました。参考にします!
#ライフスタイル #飲食店 #対談 #インタビュー #林伸次
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