侵害予防調査ゼミを受講して(23年7~10月)


0.自己紹介

こんにちは、三宅康文と申します。
現在、化学メーカーの事業部に所属し、研究開発と知財部の橋渡し(知財リエゾン)として、知財業務を担当しています。

もともとは研究職で、博士(農学)を取得後、国内外のポスドクを経験し、現職の化学メーカーに入社しました。研究開発を担うなかで、特許や商標などの知財業務に出会ったことがきっかけで、キャリアを歩んでいます。

1.受講のきっかけ

知財塾が主催する「侵害予防調査ゼミ」を23年7〜10月の期間で受講しました。

知財塾との出会いは2021年7月に開催された、森田先生の「明細書作成(バイオ)(リンク)」でした。講義を聞くのではなく、題材をもとに、自分で明細書を作成して講評してもらうスタイルが身につくなと実感していました。ただ、このときは都合上、動画購入だったため、講師とのタイムリーなやり取りができない、他の受講生の明細書まで確認できないなど、充分に活用できていないなと、少し物足りなさを感じていました。

今回、自分なりのやり方がこびり付いている、侵害予防調査が開講されたので、適切な型を身につけることを目的に、角渕先生のゼミを受講することにしました。事前に、講師の著書を読んだり(リンク ※特許情報フェアで、パテント・インテグレーション株式会社の大瀬佳之氏が「標準書だ」と言及されていましたが、まさに同感です)、ユーチューブなどの動画(リンクリンクリンク)を見ていて、「これは役立つ!」と思い、受講を決めました。

2.事例ごとの気付きや目的

ゼミでは3事例(全12回)を扱い、事例1は約1ヶ月(5回分)、事例2は1ヶ月弱(4回分)、事例3は1ヶ月弱(3回分)で進められました。

あまり活用できなかったですが、Slackを用いて講師にゼミの質問が直接できるので、悩んだことがあれば相談に乗ってもらえるサポートも素晴らしいと思います。たとえ、ゼミとは関係なく業務のことで悩んでいることを問いかけても、快く回答をいただけました。下書き段階の論文までも共有してもらえ、侵害予防調査にとどまらず調査レベルの底上げになりました。

ここでは各事例の内容を説明することはできませんが(自主演習コース(リンク)などが販売中です!)、得られた気付きを残して置きたいと思います。

事例1

「発明を捉え、本質とキーワード、分類を抽出し分析・報告していく」流れを、ステップごとに丁寧に指導を受けました。この事例で「守破離」の守を習得できたと思います。

企業知財に居るので、報告書作成までを一気通貫で完成させるのは、初めての経験でした。そんな報告書に目を通していただき、どこまでを書くべきか、どこまでは書かないべきかを、指摘いただけました。
他の受講生の書き方からも学べるので、必要なのは自分の感度だけだなと思います。

事例2

事例1で学んだ型通りでは、こぼれ落ちてしまう特許がある事例でした。組み立てた仮説ストーリーだけではなく、「この企業なら、特許をだしているはずだろう。だから、その企業の特許がヒットしないのは、検索式の何かがおかしい」と察知できるアンテナが大事だなと感じました。
時間的余裕がないと難しいですが、一度立ち止まる勇気が必要だなと気付きを得ることができました。

それと自分自身、大事な要素を、注意せずに決めてしまうクセがあることも痛感しました。

  1.  対象技術の要約を頭におきつつ、どんな成分があったかも忘れずに評価すること(特に2次スクリーニング以降)

  2. 「この競合企業は出願しているハズ」という確信に近い期待を持って探すことの大事さに気づくことができました。

特に2は、「無いものの証明」に近いかなと思ったんですが、でも競合企業が出さないハズは無いという強い心が必要ですね。

事例3

たくさんの先行文献がヒットする事例でした。限られたリソースの中で、いかに、ダイジな特許を見つけるかの練習となりました。

特に、「お客様のビジネスとしてどこまでを想定するか」によって、近接特許の量が決まります。どのようなロジックで調査範囲を設定したのかを説明できることが求められているなと認識しました。

3.その他の学び

この記事を書こうと思ったのも、以上の事例1〜3の構成や意図、その学びが素晴らしいと感じたからでした。その他、得られたTips的なものとしては以下となります。

  1. 構成要素毎に色付けする。
    地味にダイジです。これをすると、視覚的に判断できることと、ヌケモレを防げます。さらにプレゼン時の視認性が上がると思います。

  2. 発明の本質を理解するのに、技術A、構成要素B、特徴Cのフレームワークで考えるクセがついた。
    講師が精錬して作り上げた事例だからうまく行った部分もあると思うので、実務で試してみて、型を自分のものにしていきたいと思います。

  3. 検索式の見せ方を学べた。
    「(検索文字)/キーワード」や「(特許分類)/分類」など、見やすく見せるプロの表現力を学べました。これも、実際に見て、自分でやってみないと気付け無いワザだと思います。

  4. 「由緒あるデータや事例を使って、新しいサービスや機器を使用する」こと。
    ゼミの途中回で、サマリア(読解支援AIアシスタント)の紹介などがありましたが、今回のゼミの事例を使って、ツールの価値を実感してみることの大切さを何度か説かれていました。

  5. 顧客目線で報告する。
    たとえ調査範囲から外れていたとしても、関連性が高いと考えるなら、参考資料・添付資料として報告するべきと気付きました。こうすると、信頼関係の醸成につながるかもしれませんしね。

4.感想と今後

平日に受講し続けることは正直大変でしたが(その間にコロナに感染しました)、なんとか休講せず続けられたのは、角渕先生や運営のサポートのお陰だと思っています。

「今回のゼミで学んだこと・気付きを踏まえ、今後のスキル向上に何を続ければいいか?」と質問したところ、以下の回答がありました。

調査で得られた特許から「潰しづらいクレーム」を学ぶこと。調査だけではもったいないので、クレームの作り方も学ぶ。調査能力だけでなく、明細書作成の能力向上にもつながる。
それ以外としては、特許検索競技大会で、自分のレベルを客観的に把握すること。

角渕講師の回答(受講メモ)

それに加え、仕事以外の場面で出会う発明やアイデア、商品を見つけたら、特許分類を調べてみる習慣を身につけていきたいなと思います。
スマホのブラウザからプラパを開き、さくっと分類を調べられるので、ストレスなく続けられそうですし。そうやって、チリツモで調査力のレベルアップを続けていくつもりです。

知財塾の良さは、講師や運営、受講生との交流にあると感じます。リアルタイム受講はもちろんですが、自主演習コースやサブスクコースでもその良さを体験できると思います。
ぜひ受講してみて、スキルアップにつなげて下さい!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?