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「知財塾」って何だろう?|コンセプト&目指す未来

みなさん、はじめまして!知財塾です。
知財塾は、演習形式にこだわった、「実践型」の知財実務ゼミです。

2020年1月に最初のゼミをスタートしまして、ちょうど1周年の21年1月に株式会社知財塾として法人化しました。

1年間でもさまざまなゼミを開講してきたのですが、「そもそも知財塾って何なの?」、「受験予備校と何が違うの?」というような声も頂き、より多くの知財業界の方に知ってもらいたいと思い、Noteアカウントを開設しました。

初記事となる今回は、「そもそも知財塾を何で作ったの?」、「知財塾の特徴は?」、また「将来、何を目指しているの?」という点をご紹介します。


1. そもそも知財塾を何で作った?

もともと知財塾は、IPTech特許業務法人の勉強会から生まれました。ざっくりこんな流れです。

① IPTech特許業務法人のスタッフが増えたので、所内の「実務スキル勉強会」を強化しよう。

② せっかく勉強会をするのだから、IPTech所内にこだわらず、外部からも実力がある講師を招けば、さらに効果が上がるんじゃない?

③ せっかく良い講師に来てもらうのだから、IPTech所内だけでなく、オープンに業界の希望者が学べる場にしよう!
※ 「発明塾」を主催するTechnoProducer株式会社の協力も得て、知財塾を立ち上げています。

2021年にIPTechの事業から切り離して法人化したのは「特定の特許事務所に紐づくのではなく、事務所・企業などの立場を問わず、知財業界の方がオープンに実務スキルを学べる場に育てたい」という思いによるものです。

こう書くと、「知財業界には、すでにたくさんセミナーがあるよね。何が違うの?」と感じられる方もいるかもしれません。

確かに、弁理士会・知財協・発明推進協会など、さまざまな団体が知財セミナーを主催しています。コースも多様で、少なくとも「法律知識のインプット」で困ることはないでしょう。

ただ、「実務のアウトプット」という観点ではどうでしょうか。実務のこなし方を1から教えてくれて、明細書・意見書・調査報告書などの書面が書けるようになるという『実践講座』は数少ないように思います。

このようなドキュメント作成の実務は、今まで特許事務所や知財部内のOJTを通し、時間をかけて学ぶものでした。一人前になるのに何年もかかる、いわゆる徒弟制度の世界です。

もちろん、実務スキルは一日にしてならず。一流の知財実務家になるためには時間が必要です。ただ、初心者にとって、この「徒弟制度」は最初のハードルが高いのも事実。

・ 明細書を書くってこれ、何から手を付ければいい?
・ 特許庁から拒絶理由通知書が来たって、どういう反論すればいいの?
・ 先行技術調査をやれっていっても、検索方法もわからない。。

最初はみんな、このレベルからスタートです。初心者にとって「知財実務」とは、まるでそそり立つ壁。わからないことばかりです。

困ったら師匠たる上司・先輩に根掘り葉掘り聞くしかないのですが、この時に師匠の教え方が上手いかどうかは、「運次第」です。

いわば、師匠ガチャ。

・・・「実務第一線のスキルがあり」、「初心者が躓くところが分かり」、「丁寧に教えてくれる心の余裕があり」、「後輩指導に時間を割ける、業務時間の余裕がある」スーパーマンをたまたま師匠に引ける可能性は、どの程度あるでしょうか?

できる人ほど忙しい知財業界、本来は教えるのが超うまい人でも、後輩指導をしている余裕がないケースも多いです。やむなく後輩は放置プレイ。初心者が最初の学びのハードルを越えられずに辞めていった・・なんて悲しい話も聞きます。

しかし、教える側もぶっちゃけキツいです。後輩指導はとても時間を取られる。時間をかけて教えて戦力になっても、ずっと働いてもらえるとは限りません。異動・転職、数年で別れるケースは、普通ですよね。

結局、知財業界における「徒弟制度」は、教える側にとっても、教わる側にとっても負担が大きく、運が左右するもの。特に、実務に入りたてのスタート期はお互い大変です。

であれば、双方が苦しい初期教育を多少なりともアウトソースできれば、みんな助かるのではないでしょうか?そのときに、本当に必要な初期教育は、「〇〇法はこういう規定」という知識だけではなく、「実務で使えるドキュメント作成スキル」なのではないでしょうか。

このように、知財塾は「知財の現場における、初期教育の切実な悩み」から誕生したのです。


2. 実務ドキュメント作成力が身につくための工夫

知財塾の目的が、「実務で使えるドキュメント作成スキルの向上」にあることは、何となくお分かりいただけたと思います。

では、ドキュメント作成スキルはどうしたら効率的に身につくのでしょうか。知財塾では、以下の3点にポイントを置いており、順にご紹介します。

① 基本5つの事例を3か月でこなし、反復してドキュメントを作成する演習をする
② 指導者は1から10まで教えるのではなく、ファシリテーターの立場として、受講生が作成した演習物へアドバイスを行う
③ Zoom、GoogleドキュメントといったITツールを駆使し、オンライン学習の効果を最大化する

① 5つの事例を、3か月でこなす演習形式

ゼミによって多少期間の違いはあるのですが、知財塾は「演習形式」にこだわっています。演習とは、受講生が自分でドキュメントを作成すること。

例えば、明細書作成ゼミであれば「明細書」を作成しますし、中間応答ゼミであれば「意見書」や「手続補正書」、先行技術調査ゼミであれば「調査報告書」を作成してもらっています。

ゼミ終了時、受講生の手元には自分が作成した「実務ドキュメント」が残り、それが自信と財産になる仕組みです。

もちろん、お題だけを出し、「実務ドキュメントをいきなり完成させて」と丸投げするわけではありません。

明細書作成ゼミなら、発明案の把握や課題・解決手段の整理、クレーム作成のための構成要素の整理、また明細書に記載すべき事項の「型の確認」など、細かくステップを分けて演習を行うことで、自然にドキュメント作成スキルが身につくように工夫しています。

カリキュラムでも、「3か月・5つの事例」という基本スケジュールであれば、最初は4週間かけて1つ目の事例を丁寧に学び、最初に学んだことをベースに4つの事例を2週ずつかけて反復演習する・・というようにメリハリをつけていますので、初心者でも無理なく学ぶことが可能です。

 

② 講師ではなく、ファシリテーターとしてアドバイス

知財のセミナー形式の講座は、講師が一方的にしゃべって、受講生はメモを取ったり、資料を持ち帰ったり・・というものがほとんどです。ただ、実務を身につける方法としては、不十分でしょう。他のスキルで考えてみます。

☆自転車に乗りたい
 × 自転車の乗り方の講義を聞く
 〇 実際に乗れる人に支えてもらいながら漕ぐ

☆英語が話せるようになりたい
 ×  英語の授業を聞く
 〇 ネイティブの前でとりあえずしゃべり、直してもらう 

もちろん、座学を完全に否定するわけではありません。英語を話したいなら、最低限の単語や文法は知っておく必要がありますし、自転車でも走る前に「ブレーキの位置」ぐらいの知識はいるでしょう。

しかし結局のところ、「汗を流さないと、本当にできるようにはならない」のです。その際に、多すぎる事前知識はむしろマイナスです。

そこで、知財塾各ゼミの指導者は、あえて講師ではなく「ファシリテーター」という役割になり、必要最低限のベーシックな知識を伝える以外は、まずは受講生に課題を演習してもらい、アウトプットに対して「どうしてそう書いたか議論し、考え方をアドバイスする」アプローチを採っています。

多くの場合、実務ドキュメントには唯一無二の回答があるわけではないのです。ただ、「多くの人が納得する合理的なロジック」はあり、ファシリテーターは実務経験を通じて、それが身についています。

演習をまず行い、ファシリテーターや他のゼミ生との討議を通じて、「実務における正考」を身につけていくのが、知財塾のスタイルです。

※ 自主演習コースでも、オンラインゼミ生とファシリテーター間の議論や、ファシリテーターが作成したドキュメント、演習用のフォーマットなどが収録されていますので、「自分で演習→ファシリテーターのコメントをチェック」の流れで、実務スキルを向上することが可能です。


③ ITツールを活用したオンラインゼミ形式

元々、知財塾も2019年1月の開講当初は対面でゼミを開講していましたが、コロナ禍を受け、2月にはオンライン形式にゼミの開催方法を切り替えました。正直、最初は不安もありましたが、やってみてゼミ生から

・夜の通学時間がなくなったので、家族の時間も取れ、体の負担も減った
・Googleドキュメントの共同編集機能で、ファシリテーターと自分が同時にドキュメントに手を入れられるので、学習のスピードが上がった
・ゼミが完結しても、オンラインコミュニティでの繋がりを維持しやすい

という前向きなフィードバックをいただき、今では全てオンライン形式でゼミを開講しています。

オンライン形式のメリットは、やはり場所を問わないことです。これまで知財業界は、東京・大阪といった大都市圏以外は「学習の機会」に大きな差がありました。地方都市に住んでいれば、東京まで新幹線に乗ってセミナーに来る、なんてことも普通でしたが、「オンラインツールの飛躍的な技術向上」により、環境は大きく変わっています。

もちろん、対面には対面の良さがあるでしょう。ただ、オンラインにはまた違うメリットがあり、総合点で「オンラインのほうが価値がある学び」を提供することも可能と考えています。

具体的に知財塾では、Googleドキュメントを活用したゼミ生・ファシリテーター間の共同作業、Zoomによる自宅からのゼミ参加、Slackによる互助コミュニティの形成など、各種オンラインツールを最大限に生かし、「対面による従来型のゼミ学習」を超えた効果が生まれるよう、講座を設計しています。

特に、自主演習コースでは、クラウド形式で動画コンテンツを共有しますので、インターネットが繋がる環境であれば、いつでも・何度でも学習が可能です。反復継続できることは、受講コースにはない別個の魅力でしょう。

受講生の環境やニーズに合わせた、「学びの複線化」は、知財塾が重視していることの1つです。


3. 知財塾が目指す未来

このように知財塾は、「演習形式にこだわった、実践型のオンライン実務塾」なのですが、単に実務演習ゼミというだけでなく、最終的に目指す目標があります。それは、

知財に関する人材が、切磋琢磨するコミュニティ

になることです。

そのために、知財塾ではチャットツールSlackで「知財塾グループ」を用意し、オンラインサロン的に運用しています。

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Slackチャンネルの一例

知財塾のSlackでは各ゼミの垣根を越えて受講生同士が交流したり、ファシリテーターに質問したり、受講生の論文試験合格を祝ったり、オンライン飲み会の企画をしたり・・と様々なコミュニケーションが生まれています。

知財業界には、本来多くの人々が所属しているのですが、個人のレベルでは事務所内だけ、会社内だけのコミュニケーションに留まりがちです。特許事務所と知財部でやりとりがあるといっても、取引関係の「壁」がありますし、同じ業界内で繋がりがあるといっても、ライバル会社ならやはり「壁」があるでしょう。

知財塾では、そんな立場の違いを乗り越え、「使える実務を学びたい!」という熱意ある人同士がフラットにつながるコミュニティを作りたいと考えています。

また、はじめて知財塾のゼミに入ったときはまだ実務を全然知らなくても、知財塾や日々の業務で実務を学んで成長したのちに、今後はその人がファシリテーターになって次世代のゼミ生を教える・・という形も目指しています。

いわば、「無限に学べるエコシステム」

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ここまで到達するには何年もの時間がかかると思いますが、「知財塾」は運営だけでなく、参加者みんなで育てていくもの。

知財業界にある本質的な業務の大半は、「実務ドキュメントを作る」仕事です。特許事務所の立場では生命線ですし、クライアントである知財部の立場であっても「実務書面の良し悪し」を見極められるよう、最低限の書面の作り方を知ることは大切です。

知財塾の「演習」を通じ、実務ドキュメントの作成スキルが身についた。知財塾のコミュニティで仲間ができ、会社・事務所とは違う新しい繋がりができた。そんな体験を提供していきたいと考えています。

今はまだ100人に達しないコミュニティなのですが、知財を学びたい人が最初に門を叩く「梁山泊」となって、少しでも知財界を盛り上げていくことができれば、嬉しいです!

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<知財塾の公式ホームページはこちら>

知財塾では特許系・商標系など、さまざまなオンラインゼミ開催(それぞれ募集期間1か月ほど)のほか、通年で受講できる「自主演習コース」もご用意しています。
各コースの説明は、こちらをご覧ください。

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