太古龍と人間(創作昔話)
昔々よりもずっとずっと昔。
龍と人間が同じ世に居た時代……。
一人の人間の子供「フフガル」が 一匹の龍の赤子を拾いました。
フフガルは龍に「ボロル」と名を付け大切に育てました。
ボロルはフフガルにとてもなつき、フフガルの後を何処でもついてまわります。
ボロルは龍なので、あっという間にフフガルの成長を追い抜き、馬よりも大きな姿になりました。
フフガルを背に乗せ、大草原を走るのがボロルは大好きでした。
ボロルはとても巨大な龍に育ちました。
フフガルも大人になっていました。
ボロルは人間にとても友好的でした。それに増して、フフガルの事は特別に愛していました。
穏やかな時間がずっと続けば良かったのに……。
近隣の大きな人間の国が、フフガルを兵隊として連れて行ってしまいました。
「ここに残るように」と言いつけられ、はじめはそれを守っていたボロルでしたが、フフガル恋しさについに飛び出して行ってしまいました。
ボロルがフフガルを見付けた時、フフガルは敵兵より殺されそうになっていました。
ボロルはとっさに、その戦場からフフガルを救い出し、故郷へ連れ帰ります。
フフガルの命は救えましたが、戦場を目の当たりにしたボロルは、人間があんな事をする種族だという事にとても混乱していました。
そんなおり、大国から再び現れた使者に、フフガルはさらわれて行ってしまいます。
戦場でボロルを見た大国は、ボロルを戦に利用するためにフフガルを捕らえたのでした。
フフガルを追って来たボロル。
フフガルはボロルを戦に使わせないために逃げ出しますが、途中、大きな傷を追って倒れてしまいました。
傷は癒える事なく、フフガルの命をむしばんでいきます……。
『ボロル、僕はもう死んでしまう。
君に声をかける事も、体を撫でる事もできなくなってしまうけれど、
どうか悲しまないで。
大丈夫。死んだらあとは 生まれ変わるだけさ。
またいつか会えるよ。
忘れてもきっと思い出す。
君と居られて、本当に楽しかった。』
そう言い残して、フフガルは静かに動かなくなっていきました。
愛しい人が死にゆくさまに耐えられなかったボロルは、
息絶えたフフガルのその魂が、躰から離れて行ってしまおうとしたその瞬間、
彼を魂ごと食べてしまいました。
食べられてしまったフフガルの魂は輪廻の輪に乗ることが出来ません。
ずっとボロルという龍の躰に 囚われた状態となってしまいました。
「元フフガルの魂」ではあっても、フフガルそのものではありません。
フフガルとしてしゃべる事も、触れる事も出来ない……。
けれどボロルは満足でした。
「これでもうずっと一緒だ」と。
長い年月が経って、ボロルはふと、フフガルの事がとても恋しくなりました。
フフガルは自分の中に居るハズなのにな?
何故こんなに会いたいのだろう?
話をしたい。
撫でてもらいたい。
触れたい。
抱きしめたい…………
ボロルは再び人間を求め始めます。
しかし人間は龍より寿命が短い生き物。
みなボロルを置いて先に旅立ちます。
その度にボロルは人間を魂ごと食べるのでした。
ついにボロルは、寂しさが込み上げる度に無差別に人間を食べる、人食い龍となってしまいました。
人食い龍となったボロルは、終いには人間に退治されてしまいます。
退治されたボロルの躰は岩となっていきました。
死んでもなお、食べた魂達を離したくなかったのです。
しかし、時が経つにつれ、岩になったボロルの力も弱まり……
ボロルに食べられてしまった魂達も、一人、また一人と輪廻の輪に戻っていきました。
そして最後、
ボロルが最初に愛した人間、フフガルの魂が還って行くと共に、ボロルの岩は砕けて塵になってゆきました。
そして現代。
幾度かの転生ののち、今度は人間として生を受けた元ボロルの魂は……
愛したあの人間フフガルを、今でも探し求めているのでありました……。
この続きは、
『産霊の真神(ムスヒのまがみ)』というお話の中にて……。
いつか、いつかね。
語られると思います。
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