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【映画感想】殿、利息でござる!

「武士の家計簿」の作者、磯田道史先生の作品。
前に一度見て、地味ながらこれはものすごい話だ!と思って、今度、子どもにも見せたいと思い、年末に一緒に観た。

仙台藩の吉岡宿という宿場町の実話に基づいたもので、伝馬役という制度が、悪い複利のように、この先年月が進むほど、この宿場町の財政状況はどんどん苦しく立ちいかなくなるもので、夜逃げが相次いでいた。

この解決のため、自分たちに今、利益はなくとも、後々この宿場町を楽にしていくための、町民たちの策、資金繰りの実際。

主人公は、造り酒屋「浅野屋」の長男、十三郎(阿部サダヲ)。彼は「穀田屋」という造り酒屋に養子に出され、浅野屋は次男の甚内(妻夫木聡)が継いでいる。

先代の浅野屋当主(山崎努)は、この伝馬役の制度のことを憂い、改正のための資金として、人知れず小金を貯め続けていた。先代の生涯のうちには、これは叶えられなかったが、今に始まったことでなく、先代から細々と続けていたというこの実話は、次第に上役人たちの心を動かしていく。すごい!

話が上に行ったことが、手強い出入司役人(松田龍平)に白紙にされたり、吉岡宿の町民同士でも揉め事になったり、ここまで来たのに、更に大きな資金が必要になったりと、心折れる連続‥

しかし、十三郎たちの願いは遂に聞き届けられる。
馬を苦しめないために馬に乗らない十三郎にならって、伊達23代当主(羽生結弦)が、馬にも籠にも乗らず歩いて吉岡宿に現れ、大きな資金を出して困窮した浅野屋の酒に、殿様直々に銘柄を与えて、廃業寸前から、飛ぶように売れるようになったという。

宿場町の窮状は次第に改善していき、現在にも続く浅野屋さんの様子に、とても感動した。その二階から、ランドセルを背負った子供達を眺めて静かに微笑む山崎努さんのエンディングは、じわ〜っと、とても嬉しくなった。

最近、飲茶さんの本で、エピクロスという哲学者に惹かれている。
浅野屋の人たちは、エピクロスの言う、「隠れて生きた」偉大な人だと思った。

立派な聖人君子じゃなく、それぞれいろいろ問題抱えてるけど、自分の子どもたちが生きる将来を、悪いものにしたくないっていう、ただ自然な思いだと思う。

ほんとに、宮城県にそんな偉大な人たちがあったから、羽生結弦さんが生まれたのかもしれない…

年末にネットカフェに行って、子どもが「チ。」という漫画を読んでいて、「エピクロスが出てきたよ!ものすごい人だね」と言ってびっくりした。私も少し読んでみたけど、のっけから拷問の描写で驚いた…
でも、このマンガは続きを読んでみたい。


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