育休とは豚汁をつくること
妻は汁物が苦手だ。
反対に僕は基本的に汁物が欠かせないタイプなので、味噌汁や中華スープをつくる。
もちろん妻も、それがあれば飲むのだが、汁物を飲むのは「疲れる」とのことである。
そんな妻だが、豚汁は好きなのである。具材が沢山入っていて食べ応えがあるので、もはやおかずの一つになるとのことだ。
僕の育休がスタートし、当たり前だが会社に行く必要がない。必然的に夕食にかける時間を捻出することができるので、頻繁に豚汁をつくることができている。
豆腐とネギと油揚げの味噌汁ではなく、卵のふわふわ中華スープでもなく、7種類の野菜をゴロッと入れた豚汁である。
これが育休なのだと思う。
不妊治療を始めたころから、平日休日を問わず、夕食は僕がつくることとした。我が家は原因不明不妊というやつで、最終的に体外受精を行った。
タイミング法でも妻の通院の負担があったのに、ステップアップしたことで通院の頻度は増え、家でも注射をしたりと心身ともに負担がかなり増えた。
そんな妻に夕食の準備までさせられないと思い、原則夕食当番を僕にすることとした。
僕は社畜だった。男性ばかりの職場で、ゴリゴリの前例踏襲スタイル。予算の承認には上司のハンコが必ず必要。反テレワーク。飲み会重視。
仕事を定時までに終わらせるのは容易だった。容量はいい方だし、それなりの評価もされていた。後輩の指導も含めて、集中する時間に集中してしまえば、残業するリスクは下げられる。
ハードルは帰社時間も年功序列となっていたスタイルと、頻発するタイパの悪い飲み会であった。
正面突破した。定時が来て、上司を差し置いてお先に失礼した。飲み会は必要性を考慮して9割を断った。そしてこれが仕事に影響することは皆無であった。
上司よりも先に帰っていい。
飲み会を断ってもいい。
後から聞いたのだが、後輩たちには僕の行動がきっかけとなり、このマインドが少しずつ植え付けられたそうである。
僕は夕食をつくることができた。お弁当や惣菜には頼らず、基本手づくりを心がけた。元々料理は好きな方なので、どんどん作れるメニューが増えていくことも楽しかった。何よりも妻が仕事や通院を終えた後に、家でゆっくりする時間を捻出できたことが良かった。
それでも豚汁をつくることは、なかなかできていなかった。具材は多いし、味噌汁よりは手間もかかるので避けてしまっていた。
僕は育休に入り豚汁をつくることができている。具材に味を染み込ませるため、味噌は2回に分けて入れるのがポイント。
妻はたいそう喜んでくれた。
息子と3人で豚汁を食べる日が来るのが待ち遠しい。
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