[リレー小説] 第7話 note村の1日。 #春弦サビ小説
お遊びのリレー小説です。
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コーヒーブレイクの章
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第7話 note村の1日。
「いまの誰だ?」
見据茶先生が言った。
「まくらさんですよ。ほら、村のはずれのBARの」
「ああ、あのBARか。何度か行った」
「…見据茶先生は怪異研究にしか興味がないですからね。それで、人魚がどうしたんです?」
ミモザさんがまくらさんの持って来たコーヒー豆を開けながら言った。
「ああ、そうだった。つるさん、さっき人魚に合ったって言いましたね」
見据茶先生がつるさんに詰めかかって言った。つるさんは一歩後ずさって、見据茶先生を落ち着かせようと両手を上げた。
その両手の甲にうっすらとエメラルドグリーンの何かが光るのをミモザさんは見てしまった。
…あれは?
「見据茶先生、そんなに迫って来ないでくださいよ。詳しく話しますから」
つるさんがいつもの落ち着いた声で言った。
ミモザさんはそっとつるさんの側により、その手を取った。
つるさんは急にミモザさんに手を握られたので驚いて振り返った。
「つるさん、手の甲についてるこのキラキラ光っているものなんです?」
ミモザさんがよく見ようとつるさんの手に顔を近づけると、つるさんは急いで手を引っ込めてしまった。
「光っているだと?」
今度は見据茶先生が興味を示しつるさんの手を取った。
つるさんは堪忍して見据茶先生に手を見せた。
見据茶先生はまじまじとつるさんの手の甲を観察し、そして言った。
「やはり…つるさんが人魚と遭遇したのは間違いなさそうです」
「そうすると、どうなるんです?」
BRILLIANT_Sさんが心配そうに言った。
「詳しいことはまだはっきり知られてはいませんが、人魚は遭遇した人間とそっくりな複製体を作って本人と入れ替えてしまうという噂があります」
「なんですって!?」
その場にいた全員が驚きの声を上げた。
「私は長年、この入れ替えについて研究をしてきましたが、実際に人魚に遭遇したと思われるケースはこれが初めてです」
「そういえば、つるさん、釣りからいつ帰って来たんですか? いつの間にかここに居たような…」
ミモザさんが言った。
「スズムラさんが何か怒られている時ですよ。誰も僕が帰って来たことに気が付かないから…」
見据茶先生はフムフムとこの会話を聞きながら、さらにつるさんに質問をした。
「つるさん、あなたは自分が自分であるという自覚はありますか?」
「…も、も、もちろんですよ。僕は正真正銘のつるです。この村にずっと暮らして来て…みなさんの方が僕のことよくご存じじゃないですか」
つるさんは慌てた様子で言った。
「そこなですよ」
見据茶先生が意味深な表情をして話を続けた。
「どうやら複製体自体に複製体だという自覚はないらしいのです。つまり複製体も自分が正真正銘、自分自身だと思っている。そして記憶もまるごと本人のものを有しいていると言います」
「それではどうやって区別するんですか?」
その場の全員がこの難問に黙ってしまった。
「人魚はこんなことをしていったい何をしたいんです?」
ミモザさんが言った。
「詳しくはわかりませんが…これまで人魚に侵入されたとの噂のある村は、もぬけの殻になってしまっていることが報告されています…どこかに連れ去られるのかも…」
「…いやだ…怖いです」
BRILLIANT_Sさんとミモザさんが手を取り合って震えはじめた。
「どうりで今日はやけに人が集まってくるわけだ…」
先ほどまで探偵気取りだったにゃんくしーさんも、少し怖がっている様子で言った。
「ところで、ここに居る人はみんな知り合いですか? 妙に磯の香がする者など混ざってないでしょうか?」
見据茶先生さんが言うと、全員が一斉にスズムラさんの方を見た。
「あ、あたし!?」
みんなの視線を集めてしまったスズムラさんは慌ててみんなの方を順番に見返した。
「そういえば、あなたはなぜそんなにびしょ濡れなんですか?」
見据茶先生さんが言った。
「それは…妄想に駆られて歩いていたら海に落っこちちゃったんですよ!」
苦し紛れの言い訳にも聞こえる内容ではあったが、その場の全員がスズムラさんならあるかも…と思った。
「あ、あたしだけじゃなくて、にゃんくしーさんだって磯臭いじゃないですか!」
スズムラさんがにゃんくしーさんを指さしながら言った。
にゃんくしーさんはびっくりして飛び上がった。
「ちょ、ちょっと待って!私が濡れてるのは君に羽交い絞めにされたからじゃないか!」
「あ…そうだった」
「あ、そうだったじゃないですよ~とんだもらい事故だ…」
「まあ、まあ、みなさん、このままでは疑心暗鬼になるばかりです。ひとまず落ち着いて。冷静に解決策を考えましょう」
ミモザさんが宥めるように言った。
「そうですよ、お互い信用を無くしては人魚の思うつぼです。ここはぜひ、プロの私に任せてください」
そう言ったのはPJさんだった。いつのまにか目を覚ましたPJさんは、持って来た大きな荷物を床に広げているところだった。
ギターにウクレレ、太鼓やフルート、様々な楽器が床に並んで行った。
つる邸に集まった面々はいったい何が始まるのかと、目を丸くしてそれを見守るのであった。
(つづく)
すみません。また二千文字行ってしまった…。
やり逃げで次へ託します。
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