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大昔に諦めた「書く」仕事をなぜか今やっている

今だから言うが、若い頃は記者や編集者などの「書く」仕事に強い興味があった。

ただ、低学歴で特に才能もない自分がその仕事に就けるとは思わず。しかし、今は私ごときでもライターになれるのだから、本当にハードルが下がったというか時代が変わったというか。そんな未来が来るとは思いもしなかった。

「ライターになりたい!」とか「編集者になりたい!」などの希望や目的をはっきり抱いていたわけではない。

ただ、「仕事を選ぶなら『書く』を仕事にするのが自分に一番合っているだろうな~」といった漠然とした思いは抱いていた。

とはいえ、私が若い頃にそのような仕事に就くのが無理なことは明白だった。

当時そのような仕事ができる会社に入れたのは、誰もが認める高偏差値の有名大学(旧帝大や早慶上智など)を優秀な成績で卒業するか、業界に何らかのコネがある大卒の人が大半だった。

そもそも三流短大卒の私がそんな会社に入れるはずもなかった。

もちろん、小説家やエッセイストになる道があることは知っていたが、そちらはさらにハードルが高すぎる。

身の程をよくわきまえていた私は早々にその道をあきらめ、地元の銀行に就職した。

その後銀行を辞めて家庭に入ったが、夫の度重なる転勤で各地を転々としているうちに40代後半になり、結果的に長いブランクができてしまった。

今思えば、そのことが「書く」仕事につながったのかもしれない。その理由を説明すると長くなるが、せっかくなので自分の気持ちを整理する意味で書いてみようと思う。

長いブランクがあっても仕事や勤務条件にこだわらなければ就職先はあった。

48歳の時はパソコンのスキルを買われて事務パートの面接までこぎつけたこともあるが、急に怖気ついて辞退してしまった。(今考えても惜しいことをした)

せっかくつかみかけた再就職のチャンスをみすみす逃した理由は、過去のトラウマから発生した職場の人間関係への恐怖心が強かったからだ。それもかなり深刻なレベルで。

人間関係が難しくてもボランティアの仕事なら問題ないのに、お金をもらう仕事に就くと考えると全身から汗が噴き出し、動悸が止まらなくなった。

また、約3週間で一気に15kgも痩せたので、よほどそのことがストレスになったのだろう。そこに更年期障害まで加わったのだから最悪だ。

それほど強い恐怖心が植え付けられたのは、銀行員時代の職場で地獄の人間関係を経験したことが原因だ。そのことに気づいたのは15㎏痩せた後だった。

私の心に人間関係への強い恐怖心を植え付けた職場は、ストレスによる退職者や大病を患う人が続出、自殺者も出るほど人間関係が劣悪なことで有名だった。

私がホワイトな職場でお世話になった優秀な先輩が、私の元職場に転勤した翌年に退職したほどひどかった。本人は定年まで銀行員を続けたいと言っていたが、そこの劣悪な人間関係で消耗したようだ。(他の会社でも十分やっていける人だからむしろ辞めてよかったのだろうが……)

そのような経緯もあり、人間関係への恐怖心が私の心の中に消えない「入れ墨」として残ってしまった。まさかそのことが再就職の大きな障害になるとは当時は思いもしなかったのだが。

そうは言っても、10年前は子どものW大学進学で家計は火の車。少額でもお金を稼ぐ必要があった。それで、人間関係で恐怖を感じない仕事や家でできる仕事はないか?と探した結果、偶然高額謝礼モニターやクラウドソーシングで見つけた「書く」仕事にたどり着いた次第だ。

それから7年以上経った今も、私はライターとして「書く」仕事に携わっている。そして、昔漠然と思っていた通り、この仕事は私に合っていた。

まさかこんな経過を経て、自分が「書く」仕事に就くとは思いもよらなかった。今だってろくな学歴もキャリアもないただのおばちゃんなのに。

でも、冒頭で書いたように「書く」仕事へのハードルは大きく下がっており、その分誰でも参入できるようになっている。まあ、「書く」仕事をする人も玉石混合。私は限りなく「石」に近いことは百も承知だが。

それでも五十路直前で「書く」仕事に巡り合い、今もその仕事を続けている。若い頃片思いしていた人に数十年経ってから出会い、その後付き合い始めたような感覚すら覚える。

自分でもそのような展開になるとは思ってもみなかったが、おそらく「書く」仕事とはご縁があったのだろう。ホント人生は何が起こるかわからないね。

今後も「書く」仕事を長く続けたいとは思っている。が、親の介護や孫の世話、自分の心身の衰えなどの障害は避けられまい。それでも仕事量を調節しながら細々とこの仕事を続ければ、今見ている景色とは違う景色を見られる日が来るかもしれない。

ただ、年齢的に無理ができない体になっているから、そこは気をつけないと。あまり無理をせず体調を整えながら、細く長くこの仕事を続けようと思っている。大昔に一度諦めた「書く」仕事に就けたのだから。

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