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すきな言葉まとめ

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すきなひとたちのすきな言葉まとめ。
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2021年5月の記事一覧

いつか『本当に』結婚出来る日まで

ついつい「新郎新婦」って呼びそうになる。もう口癖になってんだろうな。気をつけなきゃ。 本番前の披露宴会場で自分に言い聞かせる。その日、撮影に入った結婚式には「新婦」がいない。 だから間違えちゃいけない。 新郎新婦って言わないようにな。 でも気をつけるのはそれくらいだ。 新郎が新郎と結婚するだけの話だ。 特別なことは何もない。 そう思っていた。 今、考えるとやはりそれは間違いだ。 ◇ 若い頃、3年程フランスに住んでいた。御多分にもれず始めのうちは友人も出来なかった

気が付けば異性装で生きていた

梅雨の合間のよく晴れた日。今日は暑いくらいだった。 行き帰りのために薄手のカーディガンを羽織っていたけれど、日中はそれを背もたれに掛けて昨年買ったネイビーのオープンカラーの半袖シャツだけで仕事に勤しんだ。 結局退社間際まで掛けっぱなしになったカーディガンを指先で拾い上げて、「お疲れ様」とフロアに言い放つ。 そうやっていつも通りNEWERAのリュックを背負い仕事場を後にした。 リュックを背負う前に羽織ったカーディガンを、「着なくても大丈夫だったなぁ」と腕まくりしていると、閉

【手離せないもの。忘れたいもの】

それはそれは、きれいな猫だった。暗闇のなかをしとしとと歩く白毛、ところどころに浮かぶ黒いまだら模様、うっすらと光る瞳。野良猫なのか、散歩中の飼い猫なのか、どちらかはわからない。 小柄な身体を静かに揺らし、急ぐでも止まるでもなく、その猫は公園の脇道を歩いていた。私たちはほんの数秒、たしかに見つめあった。先に目を逸らしたのは、私のほうだった。懐かれたとて、連れ帰るわけにはいかない。ペット可の物件でないのはもちろんのこと、私自身が重度の猫アレルギーである。 すきなのに身体が受け

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