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つわりと洗面器と結露とり

洗面器と枕が一緒になった商品があったら、買う人はいるだろうか。

つわりの期間中(二日酔いの時もだったが)、私は洗面器とお友達だった。めるぞう(「なんでも受けとめるぞ」からきている)と名付けた桃色の洗面器をどこへでも持って行った。産婦人科への車の移動にも、台所にも、めるぞうはどこへでもついてきてくれる。お風呂場では本来の役割を果たし、お風呂あがりの私に丁寧にタオルで拭かれて布団まで運ばれる。寝るときはめるぞうに顔を埋めて寝るのが、なんとも落ちつくのだ。いつ吐いても受けとめてくれるというその包容力が大好きだった。

ただこの姿勢で寝ていると、どうしてもオデコや肩が痛くなってくる。だから、私は洗面器と枕が一緒になったものが欲しかった。もしそんな商品があるのなら、ぜひ購入したいと調べてみたが、今のところないようだ。
ないなら自分で作るしかないと、クッションや枕の置き方を工夫したり、イメージ図も描いてみたが、考えているうちにつわりは終わってしまった。

つわりとは想像していたよりも不思議な現象だった。つわりのあいだの身体の変化も楽しめたらいいなんてはじめは言っていたが、そんな余裕はなかった。
ごはんの炊けるにおいで気持ち悪くなるのに、白米と梅干しは食べられる。ハンバーグなんて見たくもないのにマックのハンバーガーは食べたくなる。あんなに好きだった旦那さんのにおいがダメになり、臭い近寄らないでと言ってしまう。歯磨き粉の匂いが気持ち悪くて、本気で磨かけなかった(つわりが終わり歯医者に行ったら虫歯が2つもできていた)。
あとは食後、ゲップを出すのに必死になった。ゲップが出るまで背中をさすらされる旦那さんはちょっと早く赤ちゃんがうまれてきた気分だったのかもしれない。ゲップが出ると気持ち悪さが(一時的に)半減する。いかに気持ちよくゲップがだせるかを考えていたし、コーラを飲んでゲップを我慢する いとうあさこさん のゲップがとても気持ち良さそうで羨ましかった。

結露とりは草刈りに似ている

つわりのあいだ、布団の中にいるのがほとんどだった私だが、起き上がれる時に必ずやっていたことが窓の結露とりだ。
田舎暮らしをしている時に、誰かが草刈りや雪掻きは働いた成果がすぐに目に見えて、成功体験がわかりやすいので悩んだ時に立ち直るのに良いというようなことを言っていた。暑い日差しの中、草刈り機を振ったぶんだけ草が刈られ、目の前が拓けてくるのはとても気持ち良い。私は草刈りが好きだった(雪掻きは寒いし、雪をかいたそばからすぐふり積もってくるので嫌いだった、雪掻きをサボって車のミラーを折ってしまったことがある…)。
つわり中の結露とりはまさに私にとっての草刈りだった。ペットボトルに装着するタイプの結露とり(100円)が私の相棒だった。水滴で外が見えなかったのが、スッと私が腕を上げるだけで一変する。どんどん視界がクリアになる。手元のペットボトルにはどんどん水が溜まっていく。ああ、気持ちが良い。今日はこんなにとれた。つわり中、家事もできない仕事もできない、ダメダメな私でも結露はこんなにとれるということに喜びを感じていた。今、思い返すとだいぶ気持ちが滅入っていたのかもしれない。

もう、つわりは終わったが引き続き朝の結露とりは行なっている。
今日とれた水はちょっと少なかった。
今年は春の訪れをいち早く感じれるかもしれない。

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