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スイートテン・アート

10年目の結婚記念日は「錫婚式」と呼ぶらしい。

別名アルミニウム婚式だそうな......。なんか、軽いな(笑)。
まだまだということかな。

2011年1月の私の誕生日に入籍した私たちも、先日無事結婚10周年を迎えることができた。他人同士がともに暮らし、子どもを授かり、時に交わらない議論にくらくらしながらも、10年なんとかやってこれたことに安堵している。夫婦のことについては以前もエッセイに書いたので、読んでいただけるとうれしい。

ともあれ、せっかく10年目だし、「何か記念になるようなものでも買おうよ」と夫に話す。

「10年目の結婚記念日」といえば、スイートテン・ダイヤモンド?
そんなCMを子どものころに見た記憶はあるけれど、もはやオワコンであろう。海外旅行にでも行ければいいが、そうもいかない。記念日に全く興味のない夫なので、彼の心に“刺さる”提案をしなければスルーされることは明白である。何かないかなぁ。何か......。

と、目に留まったのがとあるイラストレーターの個展のお知らせ。
以前から、機会があれば作品を家に飾ってみたいと思っていた人だ。2月にある。ダイヤモンドは私しか身につけられないけど、絵なら、家族みんなで分かち合うことができるではないか!

早速夫に提案したところ、二つ返事で同意を得た(よし!)。
そんなわけで土曜日は、いそいそと個展に出かけたのだった。


「アートを買う」ことは、ジュエリーやうつわを買うよりもずっとハードルが高い。私もそう思っていた。「どうせなら“使える”ものがいい」と。けれど、以前、とあるギャラリーショップの店主のご自宅を取材させていただいた時、彼はこう話していた。

「アートも、僕らにとっては“見る=使っている”ってことなんですよね」

ご自宅には、一抱えもある大きな壺や見過ごしてしまいそうな小さなオブジェなど、“使えない”ものがたくさん飾られていた。料理を盛ることも、身につけることもない。ただ、毎日、眺める。来る日も来る日も、部屋のなかに、生活のなかに、それはある。暗い部屋に明かりを点けるように、帰宅して目が合うと、ぽっと心に光が灯る。それって、存分に豊かだ。

それ以来、少しずつ、好きな作家の原画やオブジェを選ぶ楽しみを覚えてきた。家で過ごしている時、ふとした瞬間に作品と目が合うと「ああ今、“使って”いるな〜」としみじみ思う。


さて、楽しみに出かけた個展の作品は申し込み制で、抽選になるとのこと。
はたしてわが家の一員になってくれるかどうかはわからないけれど、ご縁が結ばれるかどうかも含めて、スイートだと思うことにしよう。


[一日一景]
___1日1コマ、目にとまった景色やもの、ことを記しておきます。

フランス在住の写真家・森田幸子さんのアーティチョークの写真。
森田さんの作品は、かつて恵比寿〈アンティーク・タミゼ〉に飾られていた、大きな靴のポスターを見て以来ずっと憧れていた。好きなテイストの原点だと思う。

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