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わたしの10年もの 〈1〉


〈POSTALCO〉のカレンダー“ONE YEAR WALL”

一年の終わりに、翌年の真新しいカレンダーに切り替える瞬間はすがすがしい。それだけのことなのに、暮らしも気持ちもまっさらになったような気分になる。だからこそ毎年違うデザインを楽しみたい人もいるかもしれないが、わが家の場合、家族の一年の予定がぎゅうぎゅうと書き込まれたこのカレンダーがまっさらに更新されるとき「いよいよ新しい年がやってくるな」と心が晴れる。

このカレンダーとの出会いは2016年。いきなりまだ10年使っていないものを紹介してすみません。2020年で現在5枚目。10年にはまだ折り返し地点だけれど、廃番にならないかぎり使い続ける自信がある。

どこの家もすっかり新しいカレンダーに替え終わっていたであろうその年の2月、大阪の雑貨店でセールになっているのを見つけた。ポスタルコは好きなブランドだったけど、「ちょっと書くところが狭いかな?」というのが第一印象。でも、日焼けした古い紙のような質感とタイポグラフィーの美しさが気に入った。ちょうど息子が生まれて半年が経ったころで、夫とのスケジュール共有が切実になっていた時期だった。

商品名である“ONE YEAR WALL”は、一年を一枚の紙に収めることで「一年の時間の流れを可視化する」というもの。いかにもマーク・エイブルソン氏らしいなと思ったけれど、その時はそのコンセプトがそれほど重要な意味を持つとは考えていなかった。帰宅して早速、日々目にする冷蔵庫に貼ってみると、まるであつらえたかのようにピタリと横幅が収まった。

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夫は青、私は赤、共通の予定は黒、と書き込むカラーを決めた。空欄の小ささは、使い始めるとさほど気にならなかった。あくまで家族の予定を共有するためのもの。うちは子どもは一人だし、詳しい予定は各々手帳で管理すればいい。ひと月、ふた月、過ぎてゆくたびに書き込みが増えた。カレンダーをめくる必要がないから、月と月のさかいめにペラペラと紙を往復しなくていい。エクセルの列のように、左から右へと流れる月が残り2列ほどになったとき「今年ももうすぐ終わりだね」と実感する。そして、カレンダーを替えるとき振り返る。

「今年もいろいろあったねぇ」

「一年の時間の流れを可視化する」って、こういうことだったのかと腑に落ちた。「この月忙しかったんだなぁ」「息子の通院大変だったね」「ちょっとサッカー行き過ぎちゃう?(夫は社会人サッカーが趣味)」、赤青黒の文字の密度を眺めると、一年が俯瞰して見えてくる。ひとしきり一年を振り返ったあと、どちらからともなくこう言う。「一年おつかれさまでした」。

過ぎた年のカレンダーも捨てがたくて毎年保存している。紙一枚なので場所も取らないし、最近では息子の字が加わったりして立派な「一年の記録」になりつつあるからだ。

家族の予定をGoogleカレンダーやアプリで共有しているという人も多いと思う。腕時計がスマホの時計に変わったように、なぜ、紙のカレンダーはアプリに変わらなかったのだろう? 

その答えは、来る日も来る日も家族に眺められ、一年を記録しつづけるこの紙が、愛おしくなったから......としか言いようがない。「情がうつった」とでも言うべきか。古典的だけど、そんな感じ。

初めて部屋に飾り、翌年、アプリではなく同じものを使おうと決めたその時から、“ONE YEAR WALL”はわが家の家族になったんだと思う。

◯〈POSTALCO〉“ONE YEAR WALL”

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