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どこから来て、何に共鳴し、何を繋いでいきますか? | アイヌ文化発信 関根摩耶 Interview - Vol.1

CHIRUDAの母体である株式会社Yomが運営する
MARLMARLの直営店が北海道・札幌にオープン。
北海道地方では初の出店となり、
店舗内には子どもが楽しめるタッチモニターを常設、
ブランド初となるアニメーションを上映しています。 

"アートな学び" をテーマに製作した
アニメーション本作『シマフクロウのえだ』は、
ディレクションをCHIRUDAが担当しつつ、
アイヌ文化アドバイザーとして関根摩耶さんに監修協力を依頼。

製作を進行するうえでお話を伺い、
一般概念として捉えられているアイヌと
現代の若者が考えるアイヌの2つの視点から、
民族と文化とは一体何かを考えます。




関根 摩耶

アイヌ文化が強く受け継がれる北海道沙流郡平取町二風谷生まれ。
2018年度STV(札幌テレビ)アイヌ語ラジオ講座の講師や、日高管内を走る道南バスのアイヌ語アナウンスを担当。またYouTube「しとちゃんねる」や、各種イベント登壇、講演、ACジャパン北海道地域CMなどメディア出演も務め、広くアイヌ語やアイヌ文化の発信を行う。







独自の美意識から生まれ受け継がれるアイヌ文化


関根さんのYouTube「しとちゃんねる」などを拝見するとアイヌ語に特化した活動が多く見受けられるのですが、やはりアイヌ語をメインに活動されている感じなんでしょうか?

関根:
言語もですが、文化や二風谷で受け継がれている知恵や言い伝え、ものづくりなどを含めて伝えたいなと考えています。母方の家系は工芸家が多いんですが、言語をやっている人が少ないこともあり、言語で注目されることが多い感じですね。

母が工芸やものづくり関係でデザインもやっているので、その流れで色んなアパレルブランドさんとコラボしたりとか、自動販売機のデザインとか、衣装デザインとか。なんかそういうのをアイヌ文様をベースにして作っていくみたいなことをやっていて。そういうところで私が仲介に入ってやったりすることもちょこちょこあります。
あと、伯父は伝統的な工芸品指定を受けている「イタ」を作っていたりとか。おばあちゃんは織物の第一任者で機織りをずっとやっていたり。

「二風谷イタ」(二風谷アイヌ匠の道)
「二風谷アットゥシ」(二風谷アイヌ匠の道)


関根:
私はただ自分が面白そうと思ったことにどんどん関わっていこうとしてしまうので、ドタバタと色んなことに関わってあれ何だったっけ?みたいにはなっちゃうこともありますね(笑)。前話してたあれなんだけどさ、あれって何?みたいになってますね(笑)。

そうなんですね(笑)。
たしかに「アイヌ文化」と聞くと、アイヌ語ももちろんなんですが、アイヌ文様や伝統的な工芸品の印象も強い気がします。「芸術的な民族」と言われることもありますよね。

関根:
そうですね、文献とかだとめちゃめちゃお洒落民族だったって言われてたりするんですけど。 文様を施したり、タバコ入れ一つでも彫刻で格好良いものを作ったり、ピアスしてネックレスしてチョーカーみたいなのもして頭にも「マタンプㇱ」巻いたりとか。日常で受け継がれてきた、生活の中での "拘り" というか、単なるお洒落ではない、そういった美意識高めな人たちが多かったと私は感じています。

アイヌ家 (1904年)
ブロニスワフ・ピウスツキが撮影したアイヌ
「タンパクオプ(たばこ入れ)」(平取町立二風谷アイヌ文化博物館)


関根:
なので、 そういった側面を活かすんだったら、「伝統的な」とか「歴史的にこうだ」じゃなくて、そこを素直に出す表現があってもいいのかなと思っていて。

アイヌ文様は"間"を埋め、飾ることも大切な文様だと私は聞かされました。何も無いところにデザインしていくんじゃなくて、ここの四角をどうやって綺麗にしよう、とか、ここのこんな形をどうやって埋めていこう、みたいな、 "間" を埋めていくための文様でもだったと聞かされているので、これも独自の美意識から生まれているものなのかもしれません。




二風谷から始まる家族とコミュニティ


関根:
私の家族は「二風谷工芸組合」という工芸組合に関わっていて。長年ずっと私の先祖とかおじいちゃんおばあちゃん達が頑張ってきたところなので、どこから見ても、あぁこれは素敵だな、本物だなと思われるものづくりが出来るところだと私は思っています。


関根:
二風谷は華やかな観光地ではないかもしれないですが、各家庭やコミュニティで言語や工芸の技みたいなものが受け継がれていて。次の世代に技術や知恵を継承することにもすごく力を入れている地域です。なので、私もすごく信頼しています。

お話を聞いていてその、家族観というか、"家族間の繋がり" みたいなのがとても強くて素敵だなと感じるんですけど。

関根:
家族多いんですよね、めっちゃ。常にてんやわんやでした。最近では、おばあちゃんのひ孫たちがもうずっと走り回っててみたいな。
家族の多くが工芸に関わっているので、みんなそれを見て育っているのだと思います。なので特にメディアだと三世代とか、そういう取り上げられ方をすることも多いかもしれません。

子どもたちが周りにいつもワヤワヤしてて、私も生まれてすぐの頃は、誰からも踏まれないようにテーブルの下に置かれていたこともあったようです(笑)。


そんな地元で育ったので、子どもたちがいるのって楽しかったなと思って、大学ではずっとベビーシッターのバイトとかしたり。
なので、お仕事をお受けする時の判断基準が普段はあるんですけど、MARLMARL、子ども用品か〜!とか思っちゃって(笑)。

子どもって一番頭が柔軟で、色んな影響受けるけど、「当たり前常識」みたいなのも無い段階だから、そういう色んな文化に触れるとか、色んな人たちがいることとか、そういう取り組みに関われるんだったら嬉しいなーと思いました。

そうだったんですね!ありがとうございます。
そうですね、今回札幌に出店することになって、アイヌっていう素晴らしい文化も残っているので、良い方向に進められたらいいなと私も思って。特殊な文化として変に無視してしまったり、昔からの価値観とかを子どもに押し付けたくないなとも思いますし。子どもたちの純粋な関心と興味で知ってもらって、そしてそれをちゃんと受け止めてあげられる環境が出来たらいいな、なんて。
アイヌ語の子守歌とかもありますよね、すごく素敵なものが。他にも子ども向けの絵本だったり、遊びだったり、子育てに関することとか、子どもにまつわるお話やアイヌ文化ってありますか?


関根:

めちゃめちゃあるんですよね。それこそ狩の練習みたいなものがあったりとか、ボードゲームみたいなものがあったりとか。
私がよく小学生とか保育園児とかにやるワークショップでは、折り紙にただ文様を描いて切り絵のように切ってもらって、完成したアイヌ文様をラミネートするみたいなこともやったりします。

 「シンタ(ゆりかご)」(アイヌ生活用具コレクション)


関根:
あとは、「シンタ」っていう赤ん坊のゆりかごがあるんですけど、それが魔法の絨毯みたいな感じで空を飛んだりするような物語もたくさん残っていて。雷の神様がシンタに乗って、シンタをトントンして進んで、色んなことを進めていったりするっていう「カムイユカㇻ(*)」もあったり、独自の物語がいくつも残っています。

*【カムイユカㇻ】
カムイユカㇻはクマやキツネやシマフクロウ、あるいは火や雷といった、アイヌのカムイ「神様」たちの体験談を語ったものですが、それぞれには独自のメロディと、サケヘ「折り返し」と呼ばれる、独特なフレーズがついています。このサケヘは、刊行物ではよく「V」という記号で書かれているものですが、もともとは繰り返しを表すのに✓の活字が昔はなかったので、その代わりにVを使っていたのが、定着してしまったのでした。
カムイユカㇻはサケヘとメロディの絡み合いが面白く、アイヌ語がわからなくても、聞いて楽しめるジャンルです。というより、音を聞かないと本当の面白さがわからないジャンルだと言えます。

平取町立二風谷アイヌ文化博物館




Vol.2 - 世代で違う認識、文化に触れるということ



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