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だって、どうせ愛してるし

小さい頃から結婚に憧れていた。両親が不仲だったため一時期は「結婚に夢なんてない」と思ったりもしたが、それでもあたしは人生の大部分において「結婚したい」と思っていたし、ここ数年は「結婚したい」が口癖になっていた。
結婚に憧れる理由は、なんか素敵だから、それだけ。
白いドレスを着て、自分の人生の王子様と愛を誓う、全部の女の子がお姫様になれちゃうイベント、それが結婚式だと思っていた。赤いとんがり屋根のお家に住んで、行ってきますのキス、フリフリのエプロンを着て料理をしながら旦那さんの帰りを待つ。子供の頃のあたしは、それが結婚だと思っていた。
高校に上がる頃には、流石に頭の中のお花畑も小規模になっていたが、それでも現在に至るまであたしは運命の王子様を信じている。本人が聞いたら卒倒すると思うが、夫のことを運命の王子様だと認識し、彼を白馬に乗せてあたしの頭の中のお花畑を走らせている。

一方、お花畑の縮小及び自己肯定感の低下に伴い、結婚式は不要だと思い始めていた。ブスがドレスを着てケーキ入刀!?誓いのキッス!?指輪の交換って何がオモロいん?誰が見たいん?
しかし、あたしの承認欲求は割とデカい。友達に「おめでとう」と言われたい。白いドレスも自慢したい。お色直しでもう一着カラードレスを着たいし、可能ならミラーボールの回る場所で酒と美味い飯を食いながらみんなで騒ぎたい。「今夜はパーティだぜ!みんな楽しんでいってくれよな!カモンDJ!」「フウゥウウ~!」お花畑の埋め立て地には、クラブが建設され、結婚式はしたくないけど、結婚パーリナイ~一生の愛を誓うぜ~を開催したいと思っていた。彼にもそう伝えていた。

入籍を報告すると、友人や親戚は「式はいつ?」と聞いてきた。する気はあまりない、もしくは未定だと伝えていた。返事はだいたい「やったほうがいいよ」「呼んでね」だった。
会社でよく話す、あたしよりいくつか年上の女性にも同じように「結婚するんです」と報告すると「えぇ~!?おめでとうございますぅ~!!」とキャッキャしてもらえて嬉しかった。彼女にも結婚式をする気がない旨を伝えると
「えぇ・・・もったいないですよ!だって結婚式に来てくれる人って、みんな薄給さんのこと好きな人ですよ!みんな薄給さんのケーキ入刀も、指輪交換も素敵だって思うはずです!」
確かにあたしも友達のケーキ入刀を見たい。

彼女のこの言葉や、母からの連打のようなプッシュもあり、あたしはなんとなく結婚式がしたい気がしてきた。

夫にそれを伝えると「ええぇ・・・せんって言ってたやん・・・」と言われた。そりゃそう。彼は結婚式はしたくない派である。
「でもママにケーキ入刀とかしたくなかったらプランナーに言えば何とかしてくれるって言われたし、やっぱおめでとうパーティみたいなのはしたいからブライダルカウンターに行こう」
彼の結婚式スイッチをオンにするまでに少々時間はかかったが、彼は人が好いので、ついに先週ブライダルカウンターへ連行することに成功した。

ブライダルカウンターは適当に検索して出てきたところを予約した。結論から言うと、すごくつまらなかった。
あたしがしたい結婚パーリナイ~一生の愛を誓うぜ~は、白いドレスを着て「結婚しましたイェーイ!」で乾杯、みんなでビュッフェ形式でご飯を楽しんで終了。一般的に言う二次会だ。しかしカウンターは結婚式会場の斡旋場所でしかなく、あたしのやりたい二次会ができるかどうかも定かではなく、ご飯は基本コース料理だと伝えられげんなりしてしまった。
案内してくださったアドバイザーさんはすごく親切で、丁寧で、有無を言わさず式場見学の予約を取ろうとしてきた。夫は前向きに日程の調整を始めたが、あたしは興味がないし行きたくもないので「早起き頑張れないし・・・」とクソみたいな言い訳で見学する式場の数を減らした。後で夫に「態度悪かった」と軽く注意された。
式の費用も、わかっていたけれどやっぱり高い。今までのあたしなら出せた金額だが、休職中で現職に復帰する気も生まれず、転職活動も上手くいっていない宙ぶらりんな人間が出せる金額ではなかった。

やっぱりあたしは結婚式がしたくないのかもしれない。しなかったら後悔するだろうが、したところで金額に見合った喜びが得られるのだろうか。
人前で愛なんて誓いたくない、だって、どうせ愛してるし。

「レストランとか貸し切ってパーティみたいなのできないかな、やっぱコース料理とかやだし、調べてみる」
そう夫には伝えたものの、調べる気は起きず、何もしていない。

世の中の人間がなぜ人前で愛を誓いたがるのか、あたしにはもうわからない。指輪の交換や誓いのキッスを楽しそうだと思えない。父とバージンロードを歩くのなんてコメディじゃないか。自分を俯瞰してみて、本番中に笑ってしまいそう。
もうしばらく、式のことで悩んでみようと思う。時間は人一倍あるし。


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