九官鳥(10)
百十日目(懐疑的な風景)
「本当にそんなことができるのかね?」
「まあ、それでこの世の中は動いていますから」
あたし達の間の懐疑的な雰囲気は一切ぬぐえない。
「[リンドウ]は、そんなことに巻き込まれたりはしたことがある?」
「いいえ一度もありません。ただ、私は孤児院と言う場所で育ちましたから。その、何て言うのでしょう?この世の中をまっすぐ見ていないというか、そういった子が多くて。何人かはそんなことに巻き込まれたりする子もいました」伏し目がちに、あたしに説明をする。
その説明をあたしは目をつむって、咀嚼する。
食んで、噛んで、咀嚼して、思考をくるくるめぐらす。
「[リンドウ]あたしには、そのシステムが良いものとして理解できないのだけれども。本当に人間は人間をさばくことができるのかい?」
[リンドウ]は先ほどからの繰り返しで、
「はい、そうです。人間のシステムの中には[法]と言う[規則]がありまして。その[規則]を破った人間を[規則]と言う[法]をもって人間が裁くのです」4回目の同じ答えを返してくる。
「ばかばかしい」
「すみません。何度説明してもそれで人間の世界はそうやって動いているのです」
しゃんとして、背筋を伸ばして、あたしは
「裁く人間はなぜ人間をさばけるのだろう?あなたは言う[法]を使う。[法]は[規則]。[法]は誰が作ったの?人間たちの多数決?では、少数の意見は必ず取り入れられることはないのでは?まず聞いてもらえないわよね。極端に言えば間違った[法]でも、多数決で決まってしまえば、[法]は[法]なのよね。だからしょうがないの?守らないものを処罰するもの?間違った[法]で命を落としたものはどうなるの?人間は人間の命を多数決で決めるの?言葉にするとおかしいわよね。あなたたちは、ずっと多数派の[法]による[規則]の中にいなくてはいけないわけよね。少数派は認められることはないのだから。でもその中で[法]で裁く人は本当に[法]を破ることはないのでしょうか?[法]を破っても見つからなければいいという事?誰がそれを許すの?人間?」グルグル回る答えのない問答、
[リンドウ]は困っている。
あたしも困っている。
救ってもらえる[法]はなさそうだ。
ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん