見出し画像

「Erewhon」感想



これまでの実況メモ


全体感想


まさしく自分が期待していた通りの「因習」エロゲだった。
俗世から隔離された山奥の村で、村中の娘たちから性的な奉仕を受けるという王道テンプレな展開ながら、美麗なグラフィックと民俗学に精通したライターによって構築された上質な空間、そして圧倒的物量を誇るエロスの濁流によって、こちら側の規範が解体されてゆく様を存分に堪能できた。自分が融けていく感覚って、すごくえっちだよね…

物語が進むほど、来待村の因習がいかに業の深いモノかがプレイヤーに開示されていき、その度に作品に引きずり込まれていく感覚を覚えた。特に凄かったのは、取り替え子編ラストの十子の肉を喰らう~村を焼くまでの一連の流れかな。ひぐらしの祟殺し編を思い起こさせる怒涛の展開の連続に、口をあんぐり開けたまま無心でプレイしていた。それだけ雰囲気に呑まれていたという証拠だろう。

作中にて殺人、近親相姦、カニバリズムと村社会における禁忌は大体コンプリートしていたんじゃないかな?やべぇよこの村。
中でも、特に「カニバリズム」に焦点が当てられていた。時間の流れを超越する摩訶不思議な洞窟の中で、ヒロインである十子の肉を食む主人公。洞窟が”常世”のメタファーならば、さながらヨモツヘグイか。であれば、「生きて」という十子の願いと共に肉を体内におさめた主人公が、この世ならざる化け物になり果て、永遠の生を生きることになる展開にも納得感が生まれる。十子の願いは叶ったものの、同時にそれが主人公へと架せられた十字架として重くのしかかり続けるのが残酷だ。願いは祈りへ、そして祈りは呪いへ。

無間の 地獄を這う
 あなたに 生きてと
我が身を 呪い泣く
 願いを 祈り続ける

Erewhon主題歌「迷ヒ我」より

洞窟の中で彷徨い続ける主人公の中で、もはや十子への想いが、剥奪された死への憧憬と共にぐちゃぐちゃになっていて、このあたりの複雑怪奇な心理描写はなかなかに自分好みだった。「十子への想い」だけが蓄積され、結局「十子をどうしたいのか」、当の主人公自身もはや判らなくなっている。「迷い嘆きつづける」ことが主人公の本質で、その性質は終盤の連続する選択肢群にもよく反映されていると思う。最後の最後、大事な場面さえ、自身では決めあぐねると…この辺は没入感を阻害していると感じたし、選択肢を選ぶ楽しさもなかったけれども、「主人公」の表現としてはまあ一貫していて納得感はある。彼は主人公属性のない、ただ巻き込まれただけの一般人なんですよ…
一応トゥルーエンド?的なものは「雪の夜」と「悪夢の果て」の2種類存在している。
「雪の夜」エンドでは、憎悪の渦に吞まれなかった来待村を見届けた主人公が、最後には消滅するという形で幕が下りる。このシーンは一面雪景色に染まった来待村が印象的で、それまでの幻想的で狂気的な赤の世界の面影は、もはや”どこにもない”。まさしく「Erewhon」のタイトル通り。寂しさと、過ぎ去った季節のイメージが強く喚起される終わり方で、エロゲ界では貴重な「秋ゲー」の風格が漂っていた。…まあ秋ゲーというにはちょっと淫臭がキツイが。
もう一方の「悪夢の果て」エンドは、洞窟に落ちてきた十子に主人公自身の肉を喰わせる、という終わり方。十子から受け取った祈り/呪いを十子自身に還すことで、真に十子から解放されるという、なんだか神話のようなオチでこっちも結構好み。美少女の肉を食べ、そして最後には美少女に食べられるという…

…それにしても、「美少女の肉を食む」という行為は一体何を意味するのだろう。やはり性行為の延長線上にある表象なのだろうか。対象を蕩尽しつくした果てに、文字通り「一つになる」という、究極のエロティシズム。…う~ん、僕にはバタイユorサド的な才能(性癖)は無さそうだ。あ、でも美壽々さんが肉を食むときの咀嚼音はかなり淫靡だったな~。なるほど、咀嚼音から性交の抽送音を連想しているわけか…

本作は一応ループものではあるのだけども、その為にわざわざ別のSF要素を持ち出すのではなく、「まれびと」という因習ものに馴染み深い概念をそのまま拡張してループに繋げていく展開には、「雰囲気崩れなくてめっちゃいいじゃん!」と感心していた。それとも「因習」エロゲでは、結構手垢のついた手法だったりするのだろうか?因習とループ…うむむ、もっと因習エロゲの経験を積まなくては…

ちなみに上記で”一応ループもの”と書きはしたが、本作には一般的なループ作品で得られるようなカタルシス(主人公が過去を改変してヒロイン救済してくっついてめでたしめでたし~的なやつ、語彙力皆無ですまそ)はほぼ存在しないといってよく、そこはループものアンチの自分としては好ましかったかな?
本作の主人公はループしても終始迷い嘆くばかりで、基本何もしない。因果の糸を断ち切るのはほんと~に最後の最後だけ。それさえも達成感が得られる、というよりは「やっとこれで終わった…」という疲労の色濃い安堵感が漂うばかり。緩慢な自殺へと歩を進め、最期には、まるではじめから存在しなかったかのように「ふっ」と消えて無くなる。盛り上がるわけでもなく、寂寥感を感じさせる終わり方。「Erewhon」という言葉は、もしかすると主人公の方にもかかっていたのかもしれない。…というか、今更ながら作品タイトルが「Erewhon」なのが良いな。作品全体は「和風」のイメージで貫かれているのに、タイトルだけが「洋風」という対比。BLEACHじゃん。
とにかく、過去改変を行った主人公が誰からも肯定されることなく、最後には泡沫の幻の様に消えてしまうという終わり方が、気に入っているのだろうな。

エロシーン関連だと、かなり熟女勢が目立っていた印象。やっぱり年上&非処女属性最高~!!!!経験豊富なご婦人方に責められるのたまりませんことよ。ヒロイン勢だと一番最初の稀世良との出会い→接吻→まぐわいの流れが良かったかな?あそこで一気に作品に引き込まれた感じ。稀世良の髪が広がる様が、風に舞う椿の花びらと共に妖しい魅力を振り撒いていたように思う。後は稀世良の足コキかな~。一枚絵のクオリティも高かったし、何より画像アップロードする為にちんこを塗りつぶす作業がマジで楽しかったので…

不満といえば、やはり物語後半における稀世良の出番のなさだろうか。主人公のことを「お兄様」と呼ぶのだから、「実は本当に兄妹なのでは?」などと色々背景を想像していたけど、結局何もなかった。…しかし一方で、全クリした今となっては出番の少なさゆえに、かえって彼女の魅力が引き立てられている部分もあるのかな~と思い始めてきた。最終的に、ヒロイン3人のなかで一番魅力的という評価になったし。途中までは十子が一番良かったんだけど、最後にプッシュされ過ぎて萎えてしまったので……すまん、またお得意の逆張りですね。
稀世良の存在はミスリードみたいなもので、如何にも何かありそうだとプレイヤーの深読みを誘いながら、その実「清ら」なだけの、裏のない女の子だった。彼女は美壽々の娘で、いわばこの憎悪と悪意に満ちた村の象徴でありながら、その中身は一欠片の悪意もないほど澄んでいて、そのギャップが彼女の魅力を上手く演出しているように思う。稀世良は幻想的で狂気的な赤の世界にしか生きられない、儚い存在なんだ…
だからこそ、「雪の夜」エンドで稀世良を生ませる描写はいらなかったと思うよマジで。

まとめ
非常に質の高い「因習もの」エロゲ
男衆にも声があったら完璧だったかな~
あと、ホラーゲーム「Siren」に結構雰囲気が似ていると思った。
赤のイメージも、異客の肉を喰い不老不死になるというくだりも…
ちょうどSirenがエロゲ化したらこんな感じなのかもな~と、Siren大好きな私としてはご満悦でした。


「Erewhon」感想の感想

さて、エロゲプレイ後の一番のお楽しみと言えば批評空間の感想を読み漁ることである。この為にエロゲやっていると言っても過言ではないな!

今回の「Erewhon」でも、ためになる感想や面白い感想に巡り合うことができました!そんな感想たちにリスペクトの念をこめ、誠に勝手ながらこの場で取り上げさせていただきたく存じます。

※取り上げさせていただく感想について、なにか不都合や問題等ございましたら、コメント欄にてお知らせください。

※ここではエロゲ―批評空間から感想の一部をとり上げて、その感想の感想を綴っていきます。
なお、本来は引用元のリンクも載せるのが筋だとは思いますが、エロゲ―批評空間のリンクを載せるとnote運営にBANされるとの噂がありますので、ここでは引用のみに留めておくことを、予めご了承ください。

        ↓↓↓↓↓↓ここからスタート↓↓↓↓↓↓

peacefulさんの感想の感想

冒頭にて、ドイツ新ロマン派の詩人カール・ブッセの「山のあなた」(上田敏 訳)が流れてきます。

山のあなたの空遠く 「幸」住むと人のいふ。
噫、われひとと尋めゆきて、涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く 「幸」住むと人のいふ。

本国より日本の方が有名になった詩なので、ご存知の方も多いと思いますが、直訳すると、

山のずっと彼方に「幸せの理想郷」があるというので尋ねて行ったが、
どうしても見つからず涙ぐんで帰ってきた。
あの山の、なお彼方には「幸せの理想郷」があると、世間の人々は語り伝えるのだ。

という詩意です。

ですが本作では、直訳よりも、むしろ暗喩の意味合いで引用されていると思われます。
山の向こうにある幸せとは、「未だ出会っていない将来の自分自身」のこと。
物理的な距離を移動するだけでは出会うことはできない。
今の自分自身を越えて、また別の成長した自分自身と出会うことができて、
始めて幸せを見つけることができる、と人々は言っている。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  peacefulより

はえ~すっごい博識…「幸仁」という主人公の名前そのものですねこの詩は。山の向こうにある幸せを「未だ出会っていない将来の自分自身」という、本作のループ性との関連も伺えそうな解釈につなげるられる洞察力が素晴らしい。僕がやっているのはただの無根拠な逆張りであって、それは結局のところ物事の表面だけをさらっていることと何ら変わらない。peacefulさんのように、しっかりとした知識に基づいて表現の裏まで読み込むということが僕にはどうしてもできないので、こういうことが出来る人は本当に尊敬します。

この小説『Erewhon』は、後の世の多くの人々に影響を与えた作品でもあります。
例えば之に強い感銘を受けた芥川龍之介が、1927年総合雑誌『改造』誌上に『河童』を発表。
また1932年、オルダス・ハクスリーのディストピア小説『すばらしい新世界』にも影響を与えました。
実はこの2作品にも本作が参考したと思われる要素があり、
『河童』では河童の肉を食用とする描写や、『すばらしい新世界』では結婚を否定しフリーセックスを推奨とする等、シナリオを構成する上でのアイデアになったのではと私は考えています。(本当の所は分かりませんが……)

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  peacefulより

へ~小説「Erewhon」のことは知っていたけれど、「河童」は知らなかったな…河童の肉を食用とする描写があったんだ。てっきり人魚姫に肉を喰う~的なやつが元ネタかと思っていたけど、Erewhon繋がりでそれらしい元ネタがあったんですね…
「すばらしい新世界」は名前どっかで聞いたことがあるな~
ディストピア小説って大概セックスが厳しく管理されているか、逆にフリーセックスかの二択になりがち。エアプだけど…

さて、作中より年代は1988~1989年。 
地図にない村という外界から隔離され閉鎖的な地に足を踏み入れた主人公である幸仁。
そこには美しくも禍々しい赫い椿が狂い咲きしていました。
背景CGの美麗さも然ることながら、この椿にも作中で告げられた以外の意味を私は考えてしまいます。
調べたところ、椿全般の花言葉には「控えめな優しさ」と「誇り」があり、
また色毎にも花言葉が用意されている珍しい花でした。
そして色毎の椿の花言葉にメインヒロインを当て嵌めると、中々どうして綺麗に該当するではありませんか。

赤椿「謙虚な美徳」「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」→十子

白椿「完全なる美しさ」「至上の愛らしさ」「申し分のない魅力」→稀世良

ピンク椿「控えめな美」「控えめな愛」「慎み深い」→サエ

これを狙ってキャラメイクしたならともかく、偶然だとしたら非常に興味深い一致ですね。
あと花言葉以外にも椿には「不吉」の意味合いが含まれており、
花弁が根本部分で融合している為、一枚一枚花弁が落ちずにポトッと落ちる姿が切腹、斬首を連想され、
武士階級に忌み嫌われた逸話は有名ですが、その「不吉」の印象が本作のビジュアルに上手に重ねられているのは御見事!

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  peacefulより

はえ~すっごい…やっぱり花言葉ガチ勢になるべきなのかこれは?
椿の花言葉もプレイ中に調べてはいたんだけども、あまりに意味が多すぎてぶん投げていた。まさか色ごとに花言葉が違っていたとは…

私が特に気になったのが稀世良でした。
十子の毅然とした態度に裏付けられた高潔な精神や、サエの死んだように生きている悲哀と諦観、そして生まれる劣等感。
良く言えばキャラ立ちがしっかり為されている一方で、何処か既視感を覚えずにはいられないその佇まい(設定)。
新鮮味という面で少し物足りない印象を抱く中で、稀世良は私の中で抜群のインパクトを残しました。

ビジュアルは古風奥ゆかしい清廉な印象で着物が似合う美少女だけど、
(CV.小波すずさんの)薬物染みた脳に直接語りける様な甘い声色により、非常に蠱惑的な魔性の少女に変貌。
それに慣れてしまえば、優しく柔らかくとろけるような可憐な声の中毒性にヤラれてしまいます。
また主人公に対して被虐と加虐の混在した歪な愛情を向けるヤンデレぶりを発揮する事で、
赤ん坊を上手にあやすかの様な滲み出る母性を感じさせながら、
ロリ娘に便器やちり紙やら玩具扱いされる内に、何か新たな性癖に目覚めそうで別の意味で恐怖しそうです (笑)。
あどけない可愛さと淫靡な狂気が同居しながらも、大和撫子で好きな人に尽くすタイプなので、どこか憎めず、同時に好感を抱かせるという不思議な魅力溢れる素晴らしいヒロインに思えます。

(しかしながら、その影響で後半における彼女のあまりの出番の少なさに心底残念がりましたが……)

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  peacefulより

ふむふむ、peacefulさんは稀世良推しか~
たしかに彼女の第一印象は強烈で、いっきに作品に惹き込まれる妖しい魅力に溢れていた。CV小波すずさんの声も良かったし…
ただ、ヤンデレかといわれるとそうでもない気がするな~
僕はヤンデレの魅力を構成するのに欠かせないものとして「嫉妬」があると思っていて、そこは彼女が持ち合わせていないものだと思う。彼女はどこまでも純粋に「御廻様」の嫁御前として育てられてきた娘であり、単に「御廻様」に向ける愛情が深すぎるだけで、それはヤンデレとはまた区別されるもののはずだ。そう、「嫉妬」とはどこまでも人間臭い感情で、どこか浮世離れした彼女には似合わないと、そう私は思うのですよ!

母性を感じさせる~のくだりは同意。しかも淫靡さとあどけなさが両方そなわり最強に見える。母性ロリ最強!母性ロり最強!

そして物語は佳境(血塗られた過去)に。
千年の恨みが発端となり、食らい(カニバリズム)、犯し、破壊し、奪う。
そんな人間の欲望の本質を突き、砕かれた人間への信頼に追い打ちをかける醜さと非情さの発露は凄惨を極めます。
ちなみに本作は、人生を無茶苦茶にされた一人の女の復讐心が軸になっており、無慈悲な喜びを糧としながら村に関わるあらゆる全てに永遠の苦痛と不幸の坩堝に落とそうとする狂気の沙汰は、物語全体に張り巡らされた因果(応報)を象徴し、読み手の理解を得やすい流れを構築できたと思います。

その上で複雑に絡み合った糸を断ち切る術を主人公の行動に託しながら、
最終的にプレイヤーの選択に委ねる演出は興味深く感じました。
悪夢を喰らう前のクソみたいな人生を振り返りながら、終わらない生を生きるだけの無間地獄。思考停止と逃避という狂えない伽藍堂を埋める為に、愛した人の理想に追従し夢想してゆく日々。何度も救いに手を伸ばそうとする彼の逡巡と、その決断によってもたらされる絶望に心を痛めずにはいられませんでした。

結果、作品全体を通して彼の救済を描こうとする意図(テーマ性)が見えてきます。

その役目をプレイヤーの選択肢に委ねる事で、定まった運命からの脱却と複数の救いの道筋を提示して、
冒頭の詩の様な幸福に出会う手助けをする狙いがあると考察。

しかしながら、どの結末も真の意味で主人公が救われたのかは疑問が残ります。少なくとも彼は何かに成れたのでしょうが、それは普通の人間が憧れ、望んだ自分の姿とは言い難いはず。「未だ出会っていない将来の自分自身」に出会う事が幸せの形なのだとしたら、本作における幸福とは、従来の意味合いと変わってくるのではと考えてしまいます。

それがライターの心の蟠りになったのかも知れませんが、
特定のENDにおいて、最後に主人公が赤から白い世界へと旅立つ(消失した?)かの様な演出がとられています。
結末を敢えて暈す試みは、偏に読み手の想像力に任せたと言っていいでしょう。
その先に彼が真に願った幸福と救済がある事を信じて、ここらで筆をおかせてもらいます。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  peacefulより

なるほど~幸福の解釈か…「未だ出会っていない将来の自分自身」という言葉をループ性の暗喩としてしか捉えていなかったので、ここで暗喩から本来の「山の向こうの幸せ」という言葉に立ち返り、改めて主人公にとっての幸福が何だったのかに思いを巡らせてみる。

「山の向こうの幸せ」とはつまるところ、そんなものは「どこにもない」ということでしかないのだと思います!理想郷は存在しないからこそ理想郷なのだ。

…さて、これで終わらせてしまっては何ともつまらないので、「山の向こう」を”あの世”と解釈して考えてみよう。

主人公は洞窟にて十子の肉を口にした時点で、もうこの世ならざる者に成り果ててしまったのだから、普通の人が憧れるような「幸福」はどちらにしろつかめないのではないだろうか。つまり、主人公はもうとっくに死者なのである!

>「死なないということは、生きていないということだ。少なくとも俺にとっては」

死を剥奪された時点で、それはもう死者となんら変わらないのである。死者は何も求めない。いや、死者が求めるものがあるとすれば、それは今も昔も「安らかな眠り」なのではないだろうか。因果の糸を断ち切り、ようやく眠りにつけた主人公は、その意味で間違いなく幸福だったし、救済されたといって良いと私は思います!
十子との関係性は、浅生詠氏が名前を出していた折口信夫「死者の書」あたりに何かヒントがありそうな予感がある。生者と死者の恋が描かれているらしいので…


以上、 peacefulさん、本当にありがとうございました!
私も精進せねばと、 peacefulさんの 知識に富んだ感想を読んでいて強く思いました。いつかこういう知識に裏付けされた文章を私も書けるようになりたいです。

tkktさんの感想の感想

人権蹂躙が日常茶飯事のガンギマリ村で、独自のエロス因習を享受しながら幸いを探す残酷スケベゲーム。マイナー特殊性癖プレイを排し、和姦から輪姦凌辱、貪欲人妻交尾といったマジョリティ性癖に合わせたエロシーンを網羅する構成で、それぞれの質も非常に高かった。いっぱい出た。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  tkktより

「人権蹂躙が日常茶飯事のガンギマリ村」という、出だしからキレ味が鋭い文章で笑いを誘う。それでいて、どんなゲームなのかが短い文章にコンパクトにまとめられていて凄い。

全然Erewhonとは関係のない話だが、tkktさんの一言感想で一番面白いのは「ク・リトル・リトル」のものだと私は思う↓

腸壊免職寸前でなおヒロイン枠にしがみつく浅ましきヤンデレ女子達による主人公争奪戦と、畸形・欠損者同士の蟲毒じみた異能バトルのダブルコンフリクトを軸に、ウンコビリティに富んだおもしろ交尾を適宜織り交ぜる事により作品全体のシュール度を上げ、過度に重苦しくならないように設計されています。あまりの悪臭にオーガストの鼻毛がグングン伸びるけど、それはもう仕方がない。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「ク・リトル・リトル ~魔女の使役る、蟲神の触手~」感想  tkktより

wwwいやーめっちゃ面白いわwww
tkktさんは私と同じく淫夢厨であらせられるので、使用する語彙は近いものがあるはずなんだけども、この言語センスは真似できないな~。羨ましいどす😭😭😭

…脱線しすぎたのでErewhon感想に戻ります!

Q:抜きゲー? 非抜きゲー?
A:故に抜きゲーですね。浅生さんも明言している通り。立ち絵がある女性は基本濃厚エッチありますし、シーンとシーンの間もかなり短く作っています。70回も登録枠ありますからね。ちなみに参考までにユーフォリアが61回ですから、推して知るべしです。シナリオより若干エロを強めに楽しむつもりで買うのが正解でしょう。とはいえ、勿論シナリオ上の動機付けやキャラ付け、残酷描写が巧みだからこそのエロシーンへの感情移入度と膨張率ですから、結局はどちらも相互に高め合う感じになっていると思います。「メッチャ読み応えある抜きゲー」かな。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  tkktより

未プレイにもネタバレなしで優しく解説してくれるtkktさんすこ。
っていうか、本作70回もエロシーンあったのかよ…そりゃ脳みそガンギマリ村に洗脳されますわ…
まあ僕は本作では一回も抜いていないんですけどね!
多分八千代さんが正弥さんを逆レイプするエロシーンがあったら抜いていたと思う。どうして無いの😭

・永見 稀世良:ガール御稜威ボーイ。

 物語は幸仁が彼女に魅入られ、村へと誘われた所から始まります。稀世良は後に「誰でも良かったワケない」と述懐してくれますが、ここに偽りは無く、言わば一目惚れに近い感じですね。そしてその場で彼女に望まれるまま体を重ねてしまう。彼女と幸仁との関係は、ほぼこの時点で決したと言っていいでしょう。主導権は稀世良ちゃん。彼女の最愛のかけがえないオモチャが幸仁。マヨイガに引きずりこむ人ならざる何かのような。そんな妖しい魅力に満ちた彼女は、どこか底が知れず、幸仁は中々彼女の愛情を信じられない。だというのに業を煮やすでもなく、嫣然としているのみ。そんな彼女にますます恐怖を募らせる幸仁、という構図が暫く続きます。

 そんな関係が変化するのが、嫁御前に選ばれた稀世良ちゃんから御稜威を貰うという段。彼女の渡す御稜威というのは、まあほぼ残虐性とイコールで、お育ての甲斐があるお兄様は彼女自身や他の女への凌辱行為を唆され、それを経るうちに祭を乗り越えるメンタリティを得る。飴と鞭の使い方が秀逸で、お兄様を追い詰めるのも、お兄様を母性で包むのも稀世良その人という、まあ掌の上でコロコロですわ。

 祭を無事に乗り越えた主人公は、稀世良への依存の正体を「恋」と定義します。本当の恋愛感情かどうかは分かんないです。ちなみに婚儀の後のセックス中、幸仁は「好き」という言葉を伝えてみます。稀世良はその瞬間絶頂しました。彼女の偏愛はガンギマリ過ぎていて、千の言葉でも信じ切れていなかった彼が、偽りようの無い体の反応を以って、ようやっと彼女の愛情を真実と認められる。今作の和姦の中では、このシーンが一番好きです。言語ってのは不完全ですから、セックスするんですよね。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  tkktより

ガール御稜威ボーイは草。ガールが主語なのもいいですね、主人公は終始稀世良にリードされっぱなしでしたから
確かに稀世良が「好き」といわれて絶頂するシーンは良かった。僕の中では稀世良ルートは「好き」の一言を際立たせる為だけに、過剰な淫語と倒錯的性行為の数々があったと思っているので…
ただ、やっぱりどうしてもこの稀世良との和姦は淫語なしでやってほしかったな~というのが正直なところ。
ただ、「壺中桃源」というエンディングタイトルを考えると、あの和姦~中だし結婚宣言までの一連の流れは、主人公が村の因習に完全に取り込まれたことの証明として、淫語全開なのがやっぱり正解か…

・永見 美壽々:永海千年の集大成は、憎悪に狂った「くなど神」

 赦されるワケないし、赦すワケないし、赦す高潔なんて一番赦さない。憎悪に狂った岐の神の道案内は、全て地獄行きでした。いやぁ凄まじかった。義姉妹が「昔はああではなかった」と評していますが、確かに彼女は昔は完璧でした。だけど彼女の周りの全てのモノが、彼女の完璧を寄ってたかってボロボロと剥ぎ取ってしまった。夫を喪い、子も消息不明。義理の姉妹は責任放棄。苛烈を極める輪辱に失われていく貞淑と高潔。千年守ったアイドルの枕営業は醜悪極まり、所詮は餌と快楽を甘受するだけの意思の無い異客でしかなかった。それでも尚、心の拠り所として、永海の誇りとして守りたかったソレの肉を食らわされた絶望は筆舌に尽くしがたいモノだったでしょう。かくして「ヒト」として死ぬ権利すら奪われた後に残ったのは、村すべてを覆う極大の憎悪。最大多数の最大苦痛を常に考え続ける妄執は、ついに伝統すら捏造する。コレが村の真実でしたね。真面目一徹で高潔と正義の才女をダークサイドに落としたらマジヤバい。憎悪全振りで有能なアンチヒロインの出来上がり。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  tkktより

「千年守ったアイドルの枕営業は醜悪極まり」とか「最大多数の最大苦痛」とか、相変わらずワードセンスがすごいwww

美壽々さんについては尊厳破壊の過程が丁寧に描かれていて、「そりゃあ憎悪に狂うのも納得ですわ」と思わせるだけの説得力があったと思う。

結局は時を一番はじめまで巻き戻すことで、全てを無かったことにして解決してしまったんだけれども、もしも憎悪に狂った美壽々と直接対峙してどうにかするという展開があったならば、きっと鍵になっていたのは稀世良なんだろうな~とか妄想している。自分は途中まで「主人公は実は記憶を失っていて、その正体は太歳の肉を喰った正彌」だと予想していたので、記憶を取り戻した主人公が洞窟パワーでループして稀世良と組んで美壽々さんを救済する方向に行くのかな~とか思っていた。稀世良が執着しているのは村の因習ではなく、あくまでも「御廻様」であるのだから。正彌と稀世良にはどうやら美壽々さんも思うところがあるようなので、そこを突いて崩していくのかと。

>「たとえ私が産んだ娘が鬼に選ばれても、私はその肉を喰らうでしょう」
 「この腹を痛めて生まれた娘であっても、それはこの村に連なる忌まわし 
  いものなのだから」

この台詞から、美壽々は自分自身さえも許せない、ともすれば一番憎いのは美壽々自身なのではないか、と私は感じた。娘への虐待=母である自身への虐待という図式。一方で、稀世良は美壽々によってそれなりに大切にされて育てられてきたという描写も見受けられる。まずは御廻様と出会うまで処女であったこと。村の因習からは距離を置いていることが伺い知れる。また文字が読み書きでき、村の歴史や文化、異客についての知識も美壽々から教育を受けていること(まあ捏造された歴史と文化なんですけどね。ただ、村の因習が噓塗れだってこと、多分稀世良は知っていたんじゃないかな)。そして、稀世良が鬼役になった際には、美壽々が介入し、どうにかして稀世良が嫁御前の地位に戻れるよう奔走していたこと。これは、心の奥底では稀世良を犠牲にしたくないと思っている親心の表れではないだろうか?本当に心の底から娘が憎いのなら、稀世良が鬼役に選ばれようと頓着はしないだろうからだ。ただし、これについては十子が姫様の生まれ変わりであることを考えると、やはり十子を御三家で喰らうためにはどうしても彼女を鬼役に仕立て上げる必要があったから介入したのだと考えた方が自然ではある。それに、上記に挙げた描写の数々も、結局は因習を維持し、末永く苦しみを与えつづけるために稀世良が利用できるからそうしているに過ぎないのだろう。
しかし、では美壽々には、もう僅かばかりの良心も存在していないのだろうか?
私はそうではないと思いたい。下記の台詞から、私は可能性を見出した。

>「正彌が生きながらえ苦しみつづけるのは、美壽々にとっても喜びがあっ
  た。ときどき、”わずかな悔苦が美壽々の胸を掠めたが”、すぐに復讐の
  無慈悲な喜びにかき消された。」

この台詞には美壽々に僅かばかりの良心が残っている可能性が示唆されている。正彌はこの村において唯一最後まで御三家の女たちを助けようとした男である。そんな彼の良心を踏みにじる美壽々は、それこそ悪逆の限りを尽くした勝や村長達となんら変わらない。そんなことは美壽々自身とて百も承知のはずだ。だから、美壽々の憎悪の炎は自分自身にも恐らく向けられていて、それが故に決して炎の勢いが弱まることがないのだろう。自分自身が一番憎い。さながら自縄自縛のようになっているのだと私は思う。で、ここから抜け出すためのきっかけとなる人物がいるとすれば、それは当人である正彌をおいて他にはいないのではないだろうか。そして、さらにここで稀世良の存在がポイントになってくるのだ。正彌がきっかけとなって美壽々に良心が蘇ったのならば、今度は犯してきた罪の重さに美壽々自身が耐えられなくなり、恐らくこの世から消えようとするだろう。ここで稀世良が美壽々の罪を赦すことで、彼女の救済が果たされる、という筋書きだ。美壽々にとって稀世良はただの利用できる道具程度の存在だったかもしれない。だが、彼女は曲がりなりにも大切に育てられ、そして御廻様と出会うことであろうことか「幸せ」にさえなってしまった。そんな稀世良だからこそ、この村で唯一美壽々を赦すことができる。親子の情が、美壽々を人に戻すのだ。主人公=正彌がきっかけとなって美壽々の良心を呼び覚まし、最後には稀世良が美壽々を赦すことによって救済がなされる…そういうシナリオが途中まで私には見えていたのです。長々とすんません。

……まあ結局ただの妄想なんですけどね!そもそも主人公≠正彌だったし。
ただ、「悪夢の果て」エンドの後にはこういう展開もあり得るかもしれない。洞窟パワーで稀世良が食われる前にタイムスリップして、これまた洞窟パワーで正彌も一緒に連れてきて、主人公の肉を喰って究極完全体になった十子が「この因習を終わらせに来た!!!ドン!!」的な感じで何とか…

サエ:手遅れのシンデレラ

 王子様おっせーよ。もうとっくに百人斬りのガバガバマンコになっちゃったよ。ただ美壽々が十子の命ひとつで手打ちとして逃がしてくれたのは、そのように十分に彼女については憎悪を晴らせたという判断もあったんでしょうかね。それとも平穏で幸せな日々の中でこそ消せない古傷の痛みはいや増すという残酷な判断でしょうか。……後者だろうなー、赦すとかもう無いだろうしね、彼女の辞書に。入れ替えも多分知ってるんだろうけど、クソ妹の娘なんて苦しめるだけ苦しめたいよね。仕方ないね。

 マサが今際の際に放った特大のウンコはマジで最悪最低でした。スッキリしたのは本人ばかり、周囲には悪臭を撒き散らし、健気に世話を焼いてくれていたサエは特にゼロ距離でウンコ汁ごと顔面に浴びる事となります。「死にかけの狂ったババア」とかキャラ崩壊の極限みたいな暴言も……

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  tkktより

マサのウンコが~のくだりが面白過ぎるwww
サエについてはまあ可哀想な奴隷少女だったという印象。というかこの作品の女性陣の印象は基本的に皆可哀想から始まるな…
髪下した時の美少女感はギャップ良き。
ルートとしてはサエルートが一番面白かったかな~
ただ、全クリした今となっては、サエルート後の十子はあの後御三家に喰われてしまったのだろうな、と考えてしまう。死んじゃったらほんとに聖女じゃんかよ…

・みどり、八千代、正彌:手遅れのシンデレラ

彼女の王子様は、何の因果でしょうね、みどりの息子でした。そしてやはり遅きに失しました。推測ですが、彼女が正彌を犯した時、彼は童貞だったんじゃないかな。(失敗に終わったとは言え)女達を窮地から救ってくれた善性と強さの塊のような彼が女性をみだりに犯すような卑劣漢な筈もなく、さりとて妻帯とも書かれてなかったと思うし、清らかなままなのでは。もしその前提なら、天パの精神ダメージは中々キツイ。彼に晒した自分の体は汚濁まみれ。しかも彼の母は怨敵。恋心を認めたら発狂してたかもね。実際、出会い方が違えば結婚していたらしいですからね。最初は身分の違いを笠にオラついてたパーマネンツだけど、彼の実直な人柄に次第に惹かれていき、村での世話役を彼に申しつけるようになり、やがて彼と彼女は互いの初めてを捧げ合う。そんな未来があったかもしれないのに。現実は何だ? 汚い爺の肉棒で処女を散らし、幾多の男の肉棒を咥え込んだ後、王子様に出会ってしまった。母娘二代、血は争えんね。つーか上手過ぎだろう、ここら辺の書き方。プロットどうなってんの? 浅生さん見せてw

 初恋を吹っ切る為に、そして怨敵に絶望を与える為に考え付いた悪意ギュッと盛りみたいな近親相姦は、今作の強姦シーンの中で一番好きです。あれだけ御自慢だった息子の御自慢のムスコで孕んだ子を、だけど言祝いだみどりはそのまま絶命。まんまと上首尾の八千代は、満面の笑みでその忌み子を育てます。この激熱の悪意ラリー。だからプロットよ。相当緻密に組んだんだろうね。本当いやらしい。

 ちなみにだけど、八千代無線は多分だけど美壽々ほどには子供の事を割り切ってないと思います。サエ編で意地を張る娘を説得しようとするし、稀世良編で消された息子(義理でも)について少々心を痛めていた感じでしたから。まあ良くも悪くも単純というか、おバカというか。悪感情も良感情も深いのかもね。僕は結構好きだったりする、この人。ただその単純さ故に、サエ憎しで余計な事(荒態の提案)をして娘のルートで面倒を起こしてしまうという。真相編からの因縁がスーッと伸びて一番最初の個別ルート(しかも因果応報とも言える自身の娘のルート)へ繋がってるんですね。マジ綺麗。いや、汚いんだけどね、醜悪なんだけどねwていうかこんだけカッチリ組んでて、そん中でキャラの性格(このパーマなら絶対やるよね、憎きクソみどりの娘なんて痛めつけるチャンスがあったら後先考えないだろうね、という性格)もキチンと生きてる、ただの駒にしてないって、相当ムズイと思うんだけどね。デジタルに組んでる途中に感情ありきの非効率・非合理な行動を入れるんだから。しかも一番最後から、親子三代の因縁を絡めつつ糸引っ張て来て、一番最初に張るんだからね。キャラ造形、憎悪の描写、伏線回収、どの観点から見ても秀逸以外の言葉が出てこないよ。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  tkktより

tkktさんはクリトルリトルの感想でも童貞と処女が初めてを捧げあうシチュエーションについて書いていたので、そこが性癖なのかも。自分は貞操にはあまり執着していないので(非童貞非処女大好き!)、ここは性癖の不一致かな~
あ、でもショタの童貞食いは大好きだよ!

八千代さんと正彌のカップリングは本作で一番エモかったです。
この二人の描写もっと見たかったな~
「雪の夜」での結婚に至るまでのくだりをkwsk

なるほど~言われてみれば八千代さんとサエの親子二代で手遅れのシンデレラになっているのか…親の因果が子に報いた結果、同じ構図が反復されているというのは確かに美しいかもしれない。

・阿式 十子:恋せぬ自己犠牲の乙女

 一言で言うと、公人ですね。公益、利他、善性、正義。基本的には彼女の目は村全体を見ています。故に個人間でする恋愛というシステムには絶望的にそぐわない精神性だったりします。恋なんて言わばエゴとエゴのシーソーゲームですからね。だけど彼女は多分、シーソーに跨っていても、公園で親とはぐれた迷子を見つければ立ち上がって走って行ってしまうんでしょう。シーソーの駆け引きの埒外。最初の寝取られシーンで、「何の相談もなく決めてしまった十子」というようなモノローグがあったと思いますが、幸仁の価値観では到底受け入れられないのも当然です。愛を囁き合い、けれど体は供出してしまう。愛してはくれるけど、恋してはくれなかった。幸仁は最大級に誤解してたんですよね、彼女を。なまじっか、自分の居た世界の価値観にも理解がある為に、自分の考えを共有してくれると思っていた。けれど実際の彼女は村への真なる奉仕者であり、赦す高潔だった。恐らく美壽々が、一番、反吐が出るクラスで嫌いな人種でしょうね。十子が全ルートで輪姦の憂き目を見るのは、村のシステムが高潔から食い散らかすように組まれているからですしね。過去の高潔なる自分が穢されたのと同じようにしたいというババアの切なる願いが強すぎる。ババアが十子編において例の八千代の失態に乗じて介入し、幸仁に残虐の御稜威を注いでおいたのは、十子の精神性なら必ず稀世良の代わりに鬼役を買って出るだろうと見越し、その際に全力で責め苦を与える為だったんでしょうね。美壽々にしては強引な割り込みをしてまでこのようにしたって事は、やっぱ十子の高潔は一番ぶっ潰してやりたい物なんでしょうね。そしてそれを百も承知で貫くのが十子という少女ですね。

 従って十子に関わると、この高潔を受け入れ、思うようにさせてあげられるか? それとも子供じみていると言われようが、異文化への不寛容と罵られようが独占したいか? というせめぎ合いの妙が常に付きまとってきます。最後の選択肢ですらそれでしたからね。独占をすれば心は手に入りません。高潔を壊すということは、彼女のアイデンティティを否定する事でしかなく、「俺が壊した俺だけの十子」は二度と「幸仁さん」とは呼んでくれませんでした。供犠の宴へ出せば、愛する幸仁さんが自分を見限り村を出やすいように共有妻のような立場に自らやつします。心か体どっちが良いですか? ……どっちも寄越せや性悪ババアが。何だその浮世絵みたいな眉毛は。閑話休題。まあ男心というか独占欲の使い方が上手いよね、やっぱ。しかも皮肉っぽく使わないからあんまり嫌味に感じないんだよね。

 さて。十子ちゃんの秘密を知った上で物語を見返してみると、考えようによっては、彼女もまた御廻様のような存在なのかもしれません。輪廻転生を繰り返し、村に生まれてくる姫の生まれ変わり。また自身の体を食わせてでも衆生を救うアンパンマンみたいな習性も引き継いでいます(あの姫が実際は何を思い考えていたのかは人の身では分からないですが)。醜悪な来待村にあって、一人だけ異質、掃き溜めに鶴と言うか、まさに異客というか。定期的に産まれ来る異文化=御廻様みたいな。村の外へ帰っていくか、村内で地産地消されるかの違いだけですかね。

 村の中だけで完結し、輪廻し、食われて、また廻る。愛と勇気だけが友達で、恋より優先すべき高潔がある。寂しい子だよね。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  tkktより

なるほど~
自分も実況メモで、
>「こんなマジキチ村に尽力し身を捧げるとなると、そりゃあもう村の肉便器という醜悪な形での発露になるのも納得ですわ…
そして十子自身はそれが尊厳を踏みにじる行為であると最後まで認識していなかったというね。尊厳凌辱を当人に悟らせない形で行う、ということにすごい悪意を感じる…」と書いていたように、十子の仕打ちには凄い悪意を感じていたんだけども、村のシステムが高潔から食い尽くすようにできているのならば納得。過去の美壽々そっくりの高潔さが美壽々は一番許せないというのにはマジで同感。

>「愛してはくれるけど、恋してはくれなかった」
そうなんだよな~。結局十子とは対等な恋人としての関係は築けなかったもんな~
一番最初の十子ルートでの、十子と主人公との関係性の変化が良かっただけに、あの露悪的な終わらせ方はもったいなかった。以降のサエルートでは聖女になり、最後のルートではもう主人公の十子への想いは信仰になっていたからね。ここも最初の十子ルートでの十子→御廻様への信仰と対称になっているのか。なんにせよ、全然対等な関係じゃないので萌えませんでした…

輪廻転生については何か言えそうだけど……何も思いつかないない!

ボーカル曲は一曲だけですが、完璧に近いですね。歌詞にリンクしたようなムービーもセンスの塊で購買意欲ガン煽りでした。BGMに関しては、太鼓の音を本当に上手く使っていたのが印象的でした。祭の非日常感と高揚感をエロシーンと上手く絡めてましたね。開戦の合図のようでもありました。良かったです。

ErogameScape-エロゲー批評空間-「Erewhon」感想  tkktより

これはマジでそう!
実況中に感想書く時もずっと迷ヒ我をながしていたので、プレイ時間が通常の3倍になってしまった。すごく雰囲気のある曲で、歌詞も完璧でした。


以上、tkktさん、本当にありがとうございました。
tkktさんの言語センス、マジでリスペクトしています。
とりあえず日本語ラップの勉強をすれば、少しでもtkktさんのセンスに近づけるかな~?精進せねば!(ところで何故ラップ?)


・最後に
ここまで長々と読んでくれた方には、心からの感謝を申し上げます。
特段実況メモに残したこと以上のものは書き記せなかったので、そこは申し訳なく思います。理想としては、実況メモではライブ感溢れる生の文章を、全体の統括ではウィットに富んだレトリックを用いた批評文を紡ぎたいものなのですが、如何せん実力不足なもので…
生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?