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「アンナチュラル」は主人公の過去を暴かない。

2年前に放送された「アンナチュラル」をAmazonプライムで見て、ハマって、サントラまでiTunesでダウンロードしたイトウカヌレです。

私はドラマをリアタイすることがほぼなく、こうして2〜3年経ってから過去の作品にハマるなんてことがしょっちゅうで。

もうブームの波は過ぎているのだろうけど、これは語らずにはおれない!!ということで、今日はひたすら「アンナチュラル」を見て感じたことを書きます。

アンナチュラル
・中堂さんが少しずつ周りとコミュニケーションを取るようになる姿が良い
・所長の最終的に盾になって守ってくれるカッコよさ!!
・石原さとみの食べる演技がめっちゃ良い(特に肉を食べているとき)
・音楽とシーンが連動して頭に残る
・六郎のボソボソ喋る感が「こういう人いるいる!!」と思わせる
・東海林さんの私服のセンスが好き
・こういう同僚たちがいたら良いなあと思わせる
・なんだかんだでお互い信頼しあっているのが良い
・食べ物がいっぱい出てきて◎(かりんとうネタとか)
ミコト(主人公)の過去を掘り下げず、そっとしたまま終わったことがとてもとてもよかった。

今日はこの、「ミコトの過去を掘り下げずに最終話まで進んだ点」について書いていきます。

✳︎

主人公ミコト(法医学者)は子供の頃、一家心中に巻き込まれひとりだけ生き残る。

劇中何度もその過去への描写はあるけど、結局その点が大幅にクローズアップされることなく最終話まで進んだ。

「ああ、暴かれなくてよかったねえ…」

彼女の肩に手を置いて、そんな言葉をかけたくなるような、そんなほっとした空気と共に最後まで見終わった。

「主人公の過去にシフトしていく」というストーリーの流れは、色々な作品で見てきた。クールの前半は1話完結だけれど、後半になってくると主人公のトラウマや過去にフォーカスをする。

「アンナチュラル」もそうなってしまうんだろうか??と正直ビクビクしていた。もしもその流れになったら見るのをやめてしまうかもしれない…と。

私たち視聴者は予想している。

いつ、主人公の過去を深堀し始めるんだろうか?
どうやって克服していくんだろうか?

それだけ、よくある展開の1つなんだと思う。

でもこの作品は、その流れにならなかった。過去を掘り下げ、未解決事件が解決したのは同僚の中堂さんのほう。

ミコトは中堂さんの手助けをしながら、最終話でこう言う。

「私に絶望させないでください!!」

間接的に自分の恋人を殺したジャーナリストに毒を飲ませた中堂へ、ミコトが放った台詞。

彼女は自分の凄惨な過去を、怒りで乗り越えてきた。悲しむことは、自分を巻き添えに殺そうとした、母親に負けてしまうからだと。

普通の人間ではなかなか乗り越えていくことが難しいであろう過去を、それに飲み込まれることなく生きていく。

そんな姿を10話通して見てきたこちらは、どうか彼女の過去が暴かれませんように、人の悲劇をネタとしか思わない奴らの餌食になりませんように!!と願う。

ミコトには、一家心中の責任は何もない。
彼女は被害者だ。

何もできない小さな子供。練炭を焚くのを手伝わせた母親。

それを週刊誌やメディアにおもしろおかしく書かれるなんて、許さない。

私はすっかり、彼女のファンになっていた。

✳︎

最終話、26人の連続殺人鬼をミコトの言葉が追い詰める。

「あなたを理解する必要もないし、不幸な生い立ちなんてどうでも良い」

「ただ同情はします」

「自分自身を救えなかったその孤独に、心から同情します」

連続殺人犯とミコトは紙一重。どちらも過去の生い立ちが辛いもので、道を踏み外し復讐へと突き進むことだって、できる。

でも彼女はそうしなかった。医者になり、心中の道具となった練炭を研究し、不条理な死を許さないと法医学者の道を進んでいく。

ミコトは自分を救うことができたんだろうか?

そう考えたときに思い浮かぶのは、UDIの同僚たち、そしてミコトの家族。あたたかく、ミコトの気持ちや過去を無理やり暴いたりしない。

その姿を見ると、暗い過去があっても人とつながっても良い。親しい相手だからと言って、なんでも話す必要はないんだと気付かされる。

ミコトには居場所があった。安心で安全な居場所が。

私だって、人に言いたくないことがたくさんある。ミコトのような悲惨なものではないけれど、とても親しい相手だろうと言いたくないことはある。

もしもそれを、無理やり暴こうとする人間がいたらどうか?

一瞬にして、その相手との関係は安心で安全なものじゃなくなる。

自分にとっての核心みたいなものは、バカにされたり、否定されたり、笑われたりして良いものじゃない。そっと心の中に持ち続け、墓場まで持っていっても構わないのだ。

いくら信頼できる相手だからと言って、なんでも話す必要はない。そして逆に、相手のことを好き勝手にこちらから暴くことも許されない。

人間関係を築く上で、もしかしたら一番大事なことかもしれないそれ。この作品を通して、さらに想いを強くした。

ミコトにUDIの仲間がいてよかった。
あたたかい家族に引き取られて、本当によかった。

これからも彼女はロッカーで朝っぱらから天丼を食べ、仕事の合間にかりんとうを食べ、不条理な死に立ち向かうのだろう。

素敵な作品は、その登場人物が本当にこの空の下で一緒に生きている気にされる。UDIは架空の施設だけど、日本のどこかにあるような気がしてならない。

「絶望する暇があったら、美味しいもの食べて寝るかな」

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