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「自律する子の育て方」工藤勇一・青砥瑞人

 学校の本質は、子供たちを自律させること。

 本書は、麹町中学校にて校長をされていた工藤さんと、脳神経発明家である青砥さんによる共著。手段が目的化されている今の教育界を脳科学の知見から考えていく一冊。非常に勉強になり、考えさせられる本である。
本書で大きく取り上げている二大テーマが

①心理的安全性と ②メタ認知能力

心理的安全性は、Google社にて有名になった言葉で、チームが生産性を上げるために最も重要視されるもの。
メタ認知能力は「自己を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ機能を指す言葉。
ビジネス書でよく目にする二つの言葉を教育にも生かす。

「学び」と「幸せ(ウェルビーイング)」
私はこの二つこそが、教育の究極的なゴールではないかと思っています。
すなわち子供たちの脳を「率先して自分を成長させられる脳」かつ「率先して幸せな状態をつくることができる脳」に育てることです。

P29

脳の見える化によって、今まで感覚的に行ってきた教育についても様々な研究が施された。我々は、教育を語る前に、まず人間の脳について知る必要があるのではないか、子供の前に人なのだから。
そのために非常に有益な脳の大原則が以下の3つ。

①use it or lose it
(脳の神経細胞は使わなければ失くすだけ。脳には約1000億個の神経細胞、ニューロンが存在するが、そられは使分ければ機能を失っていく。人間の脳は10歳くらいまでは神経回路を柔軟につなぎ変えていくことができるのですが、それ以降は一度つながった回路を組み替えることは容易ではない。)

②人の意識は有限である
(脳の作業台には限りがある。作業台が雑多な状態では、深い思考も高い集中力も発揮できない。)

③人は本来、ネガティブ思考が作動しやすい。
(人は褒められた記憶よりもダメだしされた記憶のほうが圧倒的に残りやすい。)

脳神経的には、激しく叱られるほど頭に残らない…
同じミスを繰り返すこどもがいたとしても「大人がそれをどう伝えているか」に意識を向けない限り意味がない。
怒られた子供は、怒られた内容はほとんど覚えていあない一方で、怒られた記憶しか残らない。労力の無駄である…なんだと。笑
振り返ってみると自分もそうなんだと痛感させられる。確かに何について怒られたのかはたいして覚えていないことが多いな…
しかもなんと、
叱っている大人こそが心理的危険状態に陥っているという事実…
しっかり自分を見つめよう。。。

子供自身が心理的安全性をつくれるようになるためには、かける必要のないストレスは排除しつつ、少しづつストレスの経験(葛藤)を積ませることが大切。適度なストレスを与えないと子供は何もかも「依存」する体質になる。

自分と向き合う時間がない人ほど他責になる。

P153

メタ認知能力をどのように鍛えるか。
①葛藤
②夢(目標)
本書に紹介されていた稲盛和夫さんのことば
「同じ夢を見続けているとその夢はどんどん鮮明で、細かいところまでわかるようになり、ついにはカラーで見えるようになります。それがビジョンです。

対人トラブルは自分を知るチャンス。

P199

「気に食わないことは、たいてい自分が気にしていることやこだわっていることだ。

最後に。。。
自分の理想を押し付けない。
人はみな発展途上であるということを理解する。
子供を成長させようなんて思わない。
自ら成長できる人になれる手助けをしよう、くらいの気持ちで。

たくさんの学びを得られた一冊。教育関係者の人にはぜひおすすめの本書である。

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