転生したら大谷翔平のキンタマだった件part2
タクロウは思考した。
キンタマになってからタクロウは生前よりも研ぎ澄まされ深く広い思考ができるようになっていた。なにせタクロウには過去から現代までの先人の知恵や技術のすべてが脳内にそなわっているからだ。タクロウはまず気持ちを落ち着けようと千利休を初めとした茶人や松尾芭蕉など風流人、近代や現代の優れた思想家、小説家、エッセイスト・・・様々な作品の知識にアクセスし、今後キンタマとして「いかに生きるか」という哲学を構築しようとした。
しかし1時間もするとタクロウはあきらめた。理由は簡単だった。今までのどんな人類もキンタマになった人物はいなかったのである。タクロウはため息をつくイメージで大谷翔平のキンタマを丸くすると今度は息を吹くイメージでキンタマをしぼませた。
「ふぅ無理だなぁこれは」
タクロウはキンタマとしての哲学を構築することはあきらめたが、一つ大切な事実に気づいた。生前、人間だったときに手足や体を動かすイメージを持つと、大谷翔平のキンタマも連動してそれらしい動きをするのである。
タクロウは「これはなんとなく使えるぞ!」と興奮した。タクロウは他にもキンタマの特性に気づく。例えば、生前うんこをするようなイメージで気張るようなイメージを持つと、右玉と左玉に力がはいることが分かった。
「なるほど!これは面白い。尻と感覚が似ているんだなぁキンタマは!はっはっ!」
タクロウは人体とキンタマの意外な事実に気づき少しおもしろおかしくなったが、その後むなしい気持ちが波のように押し寄せた。せっかく面白い事柄が出てきても誰とも共有できないからだ。
しかしタクロウは考えた
「どうにかしてキンタマのままでもコミュニケーションを取る方法はないのだろうか?」
タクロウは頭に詰め込まれた知識を総動員した。すると1つの考えが浮かんだ
「なんとかキンタマを自由自在に操って、大谷翔平の陰毛を抜く!そしてその陰毛で文字を作ろう!」
タクロウは思いつくと行動が早かった、それから何度も何度もキンタマを自由自在に動かすための練習に励んだ。練習をつづけるなかで何度もくじけそうになるときもあった。しかしそういうときはタクロウは最も有名なボクサーの一人あるメイウェザーの格言を思い出した。「お前が休んでる時、俺は練習している」メイウェザーの言葉はキンタマになったタクロウに重くしみた。もちろんタクロウは知っていた。世界の中で自分だけがキンタマであるのだからこの努力は自分にしか分からない。しかしタクロウは既に自分をキンタマという目線でみることはやめていた。世界中のありとあらゆる存在をライバルだととらえて自身が努力をすることをやめたりはしなかったのだ。タクロウの努力はおよそ20日間にもわたって続いた。大谷翔平が寝ていようが、うんこをしていようが、しっこをしていようが、練習をしていようが、タクロウは四六時中キンタマを揺らしてその動きを我が物にしようとしていた。
肝心の大谷翔平はなにやら最近キンタマが騒がしいことがあるなと思いつつも特段気にすることはなかった。今は大谷翔平にとっても大事なシーズンでキンタマが少し騒がしいくらいで悩んでる暇はなかったのである。
タクロウはキンタマとしての動きを練習して20日後、ついに手足のようにタマブクロをあやつれるようになった。タクロウが生前、ジャンプをするイメージで力をいれるとキンタマもジャンプした。タクロウはたった20日間という期間の中で人間の動きとキンタマの動きをシンクロさせ、人間だった頃の動きの大半をキンタマで再現出来るようになったのである。
タクロウは
「時は満ちた!」
と一言心のなかでつぶやくと、思い切りキンタマをジャンプさせ頭上にある大谷翔平の陰毛をタマブクロで抜き取った。
「イテッ!」
大谷翔平は何となく股間に痛みが走ったが、チャックに陰毛がはさまってしまったのだと思いやり過ごした。
タクロウは少しひやっとしたが、大谷翔平が起きている間に陰毛を抜くのは難しいなと思い、寝ている間に陰毛を抜き取る作戦を思いついた。
タクロウは夜を待つために少し眠ることにした。タクロウはキンタマになってから初めて気づいたが、人間と同じように精神的に眠ることもできるのだ。タクロウはキンタマとして眠りについた。
そして大谷翔平が眠りについた後、タクロウは目が覚めた。
「よしちょうどいいタイミングだな。大谷翔平の陰毛を一本一本抜いていこう」
タクロウはそう思い、また勢い良くジャンプをするイメージを持って頭上の陰毛を抜こうとした。タクロウが陰毛をつかみ取ろうとしたそのとき、タクロウのタマブクロは空を切ってしまった。
「はっ?なぜだ?」
タクロウは再度ジャンプのイメージを持ったが、何度やってもタクロウのタマブクロは空を切った。異変に気づいたタクロウは器用にタマブクロをあやつってズボンをたぐり寄せ、自分自身をズボンの外に押し出した。
その瞬間タクロウは絶望した。大谷翔平が陰毛をすべて剃ってしまっていたのである。きれいに剃られた大地はパイパンと呼ぶに相応しい光景だった。
タクロウは心の底で泣いた。涙を流すイメージを持ったが、もちろんキンタマから涙が流れることはない。こんなにも悲しくてむなしい気持ちになるのに涙一つすら出ないなんてタクロウは本当に自分がキンタマになってしまったことを呪った。
タクロウはしばらく沈黙した。そしてタクロウは今までの特訓を思い出した。それは血のにじみ出るような努力だったが、タクロウには話相手もいなかったので特訓の間はずっとメイウェザーをイメージとして作り出し、それを師匠として対話を行っていた。
そして特訓の時のように作り出したメイウェザーのイメージに弱音を吐いた。
「メイウェザーさん、僕はもう無理です。こんなにも努力をしても僕の努力はパイパン一つに負けてしまいました。悔しいです。」
そうするとイメージのメイウェザーはぽつりとタクロウに語りかけた。
「タクロウ。お前の努力は俺がずっと隣で見ていた。一つ作戦がうまくいかなかったからと言って男がそう泣くもんじゃない。お前は練習ができる男だ。きっと次がある。」
そう言ってメイウェザーのイメージはスゥーッとタクロウの目の前から姿を消した。
タクロウはメイウェザーにたくさん聞いてもらいたいことがあったが、そう甘えられる物じゃない。しかし、メイウェザーのイメージからもらった言葉にタクロウは自身をもう一度鼓舞して作戦を考えた。
また深く広い思考を行った。するとタクロウは陰毛を使った作戦よりも少し、チャンスは低いかも知れないが、確実にいつかはそのメッセージが届くのではないかと思う作戦を思いついた。
その作戦はタクロウの生前に見た金曜ロードショーでやっていた映画インターステラーにヒントがあった。インターステラーの物語では主人公が危機に瀕した人類に大切な情報を送るためにモールス信号を使って情報を過去に送る場面がある。タクロウもインターステラーの要領でモールス信号で自分の意志を他の人々に伝えることが出来れば何とかコミュニケーションがとれるのではと考えた。
そう考えたタクロウはインターステラーの主人公クーパーになりきり地球の一つや二つ救えるような気持ちになった。そして行動した。タクロウはキンタマになってからというもの行動することに非常にこだわりを持つようになった。今までたくさんのプロフェッショナル達の知識にアクセスする中で彼らがどうやってその技術や知識を形成していったのかを知ったからだ。彼らはいつもとてつもない量の行動を行っていた。決して頭でっかちで彼らの知識や技術が生まれた訳ではない。タクロウは知識や技術だけでなく先人達の姿勢からも学びを得ていたのである。
そしてタクロウはモールス信号を理解し、何とか右玉と左玉を器用にあやつることで「トン・ツー」の音を作り出すことに成功した。いよいよタクロウは他の人々とのコミュニケーション手段を得たのである。
(つづく)
※何度も書きますが現実の大谷翔平選手とは一切関係ありません。
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