見出し画像

夫にラブレターを贈る

久しぶりに夫宛ての手紙を書いた。
遠距離恋愛をしていた頃は、記念日や誕生日に手紙を送ったし、彼も送ってくれた。
お世辞にも綺麗とは言えない文字で宛名を書いた、可愛らしい封筒がポストに届くのが嬉しかった。
一緒に暮らし始めてからは、毎日顔を合わせるし、1人の時間も少なくなって、わざわざ手紙を書くことはほとんどなくなった。
しかし、久しぶりに気持ちを文字に書きたくなったので、便箋を引っ張り出してきた。

書き上がってから、渡そうかどうか、かなり迷ってしまった。
何を書くか決めずに書き始めた手紙は、とびきりのラブレターになってしまったから。
まあ渡さなくてもいいし、と思って、全部思うままに書いてみた。
そしたら、ラブレターが出来上がった。

本当は嫌なこともある。
風呂場がびしゃびしゃになるからシャワーは座って浴びて欲しいし、トイレの床に掃除機かけるのをやめてほしい。
あと30分で仕事終わるね、と言った後に1時間は仕事するのやめてほしいし、フルグラの上の方のおいしいとこだけ食べて下の方を残すのやめてほしい。
許せないほどではないけど、ちっちゃなムカつきはいくらでもある。

けど、それ以上の感謝と愛がある。
私は働き続けるつもりだから、と宣言して結婚したのに、結局辞めて無職になった。
調子が悪いと泣いてばかりで、わたしは幸せじゃないと当たり散らした。
私がただ家にいるだけになっても、家計にお金を入れなくなっても、家事はほとんど半分ずつのままだ。
夫は文句も弱音も言わなかった。
一緒に泣いて、抱きしめて、隣で眠ってくれた。
仕事がどれだけ忙しくても、私が出来なかった家事をこなしてくれた。
朝家を出る時、いつも、楽しく過ごしてね、と言ってくれた。
正直なところ不思議だ。
たぶん私を愛しているからできるのだろうけど、そんなに人を愛せることなんてあるんだろうか。
夫はひとりでも何でもできちゃうタイプなので、余計に不思議だ。
仮に私がいなくても、そんなに寂しく思う暇もないくらい、やりたいことがたくさんある人だ。
なのに私に尽くしてくれる。
よく分からない。
けど、おかげで救われた。というか、夫のおかげで生きている。
本当はものすごく、感謝している。
一生かけても返せないかもしれない。
こんなに愛される経験をくれたことに、とても感謝している。

手紙は、結局、勇気を振り絞って渡した。
愛する人に感謝と愛を伝えたい。
そんなことは考えたくないけど、もしも伝えられなくなってから、それを後悔するのだけは絶対に嫌だ。
私はあなたのことを世界で一番大好きだと伝えておきたい。
とてつもなく恥ずかしいけど、伝えずに後悔するよりましだと思うことにする。

夫は、突然出てきた手紙にびっくりしていたが、それを静かに読んで、しばらく黙っていた。
ありがとう、とひとこと言って、なぜか次の日の夜にもう一度、手紙ありがとう、と言われた。
少しくらいは伝わったかな。
また気が向いたら書くことにしようと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?