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牛血に腐ったトマト色?中国SNSにあふれる独特な化粧品の色味表現

こんにちは、amy(@amy_ci17)です。私は日中ハーフのコスメオタクです。中国語も母語なので、中国のプラットフォームでもコスメ情報をよく見ています。中国のコスメ情報を追っていると、独特で面白い言葉や表現がたくさん出てきますよね。どれも興味深くて、見ているだけで楽しいです。

今回は、化粧品には欠かせない色味の表現について、特に特徴的な表現が多いリップコスメに焦点を当てて解説していきます。

伝統的な色表現は使わない?中国SNS上の色味表現

口紅の色味を表す際、日本語では赤やピンク、オレンジ、コーラルといった色の名前を使うことが一般的ですよね。より具体的に表現したい場合でも、「深みのある赤」「青みピンク」など彩度や明度を付け加えることが大半です。

しかし中国のSNS上では、美容系関連の投稿で伝統的な色表現はほぼ見当たらず、代わりに若者たちが作り出した独創的な表現が溢れています。小紅書(RED)の口紅に関する投稿はどれも色味の説明が付け加えられ、想像もつかないような不思議な表現もたくさんあります。

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出典:小紅書(RED)検索画面、智程优品の小紅書(RED)

ユーザーの投稿を例に見てみると、「梅子调姨妈红(プラムっぽいおばさん色)」「豆沙玫瑰红(あずきローズレッド)」「紫调牛血红(パープルっぽい牛血レッド)」などの色味表現が使われています。これらの独特な表現は言葉として定着しつつあり、動画やライブコマースでも面白い色味表現が飛び交い、時にはその表現の突飛さだけでその場が盛り上がることもあります。

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ライブコマースでも独自表現
出典:李佳琦Austinの小紅書(RED)

なぜその言葉に?独自色表現の意味を徹底解説

中国独特の色味表現は誰もが名付けられるため膨大な数が存在しますが、定番ワードも存在します。赤系、オレンジ系、ピンク系の代表的な色味表現を見てみましょう。

●赤系の代表色:「姨妈色」「牛血色」

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出典:隔壁王阿姨(左)と芯鱼好物の小紅書

「姨妈色」はダークな赤色を指しますが、「姨妈」は中国語で「おばさん」という意味です。この表現は過去に中国で流行った韓国ドラマで、おばさん役の人がつけていたリップの色から来ているという説が有力。また中国では生理のことを「大姨妈」と呼ぶことから、「姨妈色」は「経血の色」であるという説もあります。

よりダークで、黒みが強い赤色が「牛血色」です。「牛血」は文字通り「牛の血の色」ですが、中国では火鍋の具材として牛血を固めたものがあり、その色から来ているのではないかと予想しています。(でなければなぜ「牛」なのか…?「アヒル」でもなんでもいいのでは…?)

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出典:阿阿婉姑娘の小紅書

この2つと対照的な明るい赤色には「正红色」という表現があります。「正红色」はいわゆる「ザ・赤」という感じの色味ですが、日本人が想像する定番の赤よりは少し朱色に近い色味であることから、「チャイナ・レッド」と呼ぶのが個人的に一番しっくりきます。

●オレンジ系の代表色:「烂番茄色」「脏橘色」

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出典:汪汪阿拉蕾(左)と叫我K姐の小紅書

「烂番茄色」の「烂番茄」とは、「つぶれた/腐ったトマト」という意味です。「トマト色で良いのでは?」と思うかもしれませんが、「トマト色」はオレンジが強めの色味だとすると、「つぶれた/腐ったトマト色」はより赤みが強い色味です。使う人を選ばず、特に肌トーンがイエローベースの人にマッチすることから万人ウケする人気カラーとなっています。

「脏橘色」はオレンジ色を意味する「橘色」に、「汚い」という意味の「脏」が修飾語として付け加えられています。「脏橘色」は鮮やかなオレンジに少し暗めのスモーキーさを加えた色で、秋冬の人気カラーと言われています。

●ピンク系の代表色:「豆沙色」「奶茶色」

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出典:Jerrain_(左)と超爱你の小紅書

「豆沙色」は直訳すると「あんこ色」です。日本語でもリップのカラーを「あずき色」と言うことがありますが、それと同じように使用されます、中国の「豆沙色」はあずきよりも明るい色味。ローズピンクのようなカラーは優しい雰囲気を連想させ、少女感を醸し出すのに最適なカラーです。

「奶茶色(ミルクティー色)」はニュートラルに使えるピンク色。同じ言葉でもヘアカラーでは「ミルクティーのようなブラウンベージュ」を指しますが、リップではヌーディーピンクを指します。前頭に修飾語を追加して「〇〇奶茶」と言うことも多く、修飾する言葉によって色味が変化します。例えば「白桃奶茶(白桃ミルクティー)」は比較的高明度でピンクが強いカラーですが、「乌龙奶茶」は中明度でブラウンに近いピンクです。

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お茶好き中国女子も想像しやすいお茶表現
出典:猫茶芝(左)とShirleyWWWの小紅書

●番外編:絶対に贈ってはいけない…禁忌カラーとは?

中国ではピンクのリップを使う人は少なく、ピンクの場合は前述のようなニュートラルな色味が人気です。ピンクの中には、プレゼントしてはいけない“禁忌カラー”があります。それが「死亡芭比粉(死亡バービー色)」。バービー人形のようなビビッドピンクのリップは「(アジア人には)死ぬほど似合わない」「付けたら顔面が死ぬ」という意味で「死亡」という言葉が使用されています。

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出典:虫2美妆日志の小紅書

これら表現の使用の特徴は大きく3つあります。

(1)従来の「伝統的な色」よりも比喩表現が使用されています。中でも食べ物(特に果物)を使用した比喩表現が多いですよね。同じ赤でもどの食べ物に近い赤なのか、具体的に提示されています。
(2)ネガティブなイメージの言葉でも使うこと。血や脏(汚い)という文字はあまり良いイメージではありませんが、正確に色味を表現でき、なおかつインパクトもありますよね。
(3)自由自在にアレンジできること。「奶茶色(ミルクティー色)」のように、修飾語を自由に付け加えることができ、アレンジ度が非常に高いです。実は、上記で紹介した代表色は全てベース色であり、そこからさらに何十・何百通りものアレンジが加えられた派生語が存在していて、今この瞬間にも新しい言葉がどんどん誕生しています。「少ない文字数でも多くを伝えられる」という中国語(漢字)の特性が、この特徴を可能としているのではないでしょうか。

このようにして色が想像しやすくなった一方、新しい言葉が誕生しすぎるあまり、どんな色を指しているのか分からなくなるケースもしばしば見受けられます。

ブランドも表現を取り入れて発信

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出典:「橘朵(Judydoll)」の小紅書(RED)

中国の独特な色味表現はユーザー間の楽しみに止まらず、コスメブランド側にも影響を与えています。公式サイトやアカウントでは、新たに誕生した色味表現を積極的に商品のネーミングや説明に取り入れ、ユーザーと同じような表現を共有しながら販売しています。

中国コスメに限らず、海外コスメブランドも影響を受けており、中国語サイトには各品番に加え、色味表現が付け加えられていることがあります。

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出典:「M·A·C」中国公式ホームページ

中国では、これらの独特なリップの色味表現はアイシャドウ・チーク・メイク(〇〇メイク)などのメイクアップに限らず、髪色・ネイル・衣類、さらには日用品など幅広く使用されます。美容・コスメから始まったそれ用の色味表現が、現在では多くのジャンルの色表現として広まっているんです。

今この瞬間にも新しい言葉が誕生している中国のリップ色味表現。本来の枠を超え、さまざまな領域で広まりつつある独特な言葉たちは、果たして現代の色彩語として定着していくのでしょうか?この先どうなっていくのか、楽しみです。
この記事が、皆さんの中国コスメを購入する際の参考になれば幸いです。


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China Cosmetic Lab powered by JBA
一般社団法人日本美粧協会 | Japan Beauty Association

Top  Image:小紅書の検索画面


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