梅花、雨の中そぼろ濡れる

東莞市の夜の街、樟木頭鎮には有名なお寺も有名な公園もなく、
あるのは、裏さびれたカラオケとサウナだけ。
香港からのエロ親父から、お金を巻き上げて成り立つ街。
そんな小さなカラオケが乱立する中心部から少し外れた
川沿いにあるのが「ホテル ビーナス」、
一泊、130元、日本円にして1,700円程度の安宿、
主な客はカラオケでお持ち帰りした
小姐しょうふと寝るカラオケの客。
なので、昼間もそれなりに客はいる。

酒店「ホテル ビーナス」にほど近い、
この辺では中規模のカラオケ店である「天堂パラダイス」に、
梅花メイ ファアはいた。

おばばの指令は、香港から来る日本人、佐藤の暗殺。
新しい日本人が来ると、佐藤はこの天堂パラダイスで
中国のカラオケのシステム教えるらしい。
この佐藤、表は香港の日本企業の董事長だが、
香港の黒社会の広洪会とのつながりもあり、
四川の斧頭幇ともつながりがあると噂されている。
資金力も相当あるようで、最近ではおばばの足元、
湖南省の黒手党にもツテを付けているようだ。

天堂に来て、2か月、これは長丁場になるかなと思っていた矢先、
佐藤が日本人二人と、香港人二人と現れた。
チーママにお願いしていた様に、佐藤に付けるように
進めてもらったが、佐藤はどこかに電話をして、
自前で小姐しょうふを呼んだようだ。
聞き耳を立て居ると、四川の斧頭幇から勧められた
小姐しょうふを呼ぶように言われていたらしい。
仕方がないので、加藤と言う若い日本人に付く。

ワインの七喜セブンアップ割りを負けたら飲むと言う
ダイスゲーム「吸牛チュゥー ニィゥ※1」をして、
加藤はかなり酔っぱらったのか、盛んに胸に手を伸ばす。
それを見ていた佐藤は、カラオケは終わりと言い、
的士ディク シーで、女の子達と「ホテル ビーナス」に向かう。

各部屋に別れ、加藤とシャワーを浴び、キスをすると
我慢しきれなくなったのか、慌てるように、キスを返して
胸を揉みしだき、入れてくる。
あっという間に、終わり、満足したのか、お金を払おうとしたので、
お茶を進める。
ごくりとお茶を飲み、酩酊し始めたので、
ホテルのレセプションに電話をして、同僚の日本人を呼んでもらう。
数分して現れた佐藤に急に運動したせいか、酔いが回り
酩酊しているようだ、まだお金をもらっていないと伝えると、
お金を差し出したので、着替え始めながら、隙を伺うが、
入り口の扉に寄りかかり、こちらを観察している小姐が
手練れの刺し姫の様で、隙が見つからない。
佐藤が、虎四フゥ スゥこれは薬かと聞いている。
おばばからの薬だから、調べても薬と分からないはずだし、
実際にかなり酔っぱらって運動したので、区別はつかないはずだが、
危ないと思い、「帰ります。」と部屋を出て行く。

ホテルのフロントで表を見たら雨が降っていたので、
的士ディク シーを呼んでもらいエントランスに寄りかかり
待っていたら、虎四フゥ スゥが、後ろから
「おばばの指図か？」と聞いてきたが、分からないふりをした。
「おばばの指図か？」ともう一度、聞いてきたので、
「チーママに言われて、日本人と寝ただけ。」と答えた。
怪しんではいるようだが、確証は持てていない様で、
「次にあったら、喉を掻っ切る。 わかったか？」
「いつも通り、天堂で体を売るしかできないの。
明日も天堂で体を売るわ。」
「ふん。」と息巻いて虎四フゥ スゥは去っていったが、
おばばに拾われてから、初めて同じ様な刺し姫に会い、
少しドキドキしたが、的士が来て「天堂へ」と言い、
乗り込むと、落ち着いて考えられるようになった。
天堂に着いてこれからお店に出ようか迷ったが、
もう夜も遅いので、客も少ないだろうから、
お店に出るのはやめて、借りている花園に歩いて帰ることにした。

そぼ降る雨の中、初めて失敗したなぁと梅花メイ ファアは
考えながら、雨を気にもせずに歩く。

当分は佐藤は来ないだろうが、虎四の目をくらますためにも
お店には出続けて、次回を待つことにして、
おばばにその旨を連絡した。
おばばからは、次の指令を待てと連絡があったきり、
今も連絡はない。
虎四と戦って勝てるかどうか、おばばも気にしているのだろう。
連絡を待ちながら、今日も天堂のカラオケで体を売る
梅花が居た。

・・・
これは創作で、主人公に似た名前の人もフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。　
あくまで、妄想ですので事実と誤認しないようにお願いいたします。
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※1
吸牛チュゥー ニィゥはダウトに似たゲームで、
サイコロとカップを使って遊びます。
人数は二人以上で、四・五人までが面白いです。
親を決め、各自がサイコロ 五個をカップに入れ振り、
自分のカップの中のみ見ることが出来ます。
親から、数字（出目）が何個あるか宣言し、
次々、宣言していきますが、ここにルールがあり、
前任者より必ず、出目か、数を多く言わないといけません。
二人でやっていて、自分のサイコロの出目が全部　一だと仮にすると
相手が六個二と言えば、相手が全部、二でも六個はないので、
全員のサイコロの出目や数が、宣言以下と思えるので、
「開」と言い、サイコロを確認して、相手の負けになり、
相手が一気飲みをすると言うゲームです。

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