詩『クジラの春』


海にうかんでいる
白くゆれている
地平線の向こう 海の淵
旗振り笑う 君がいる

僕の頬を伝う涙
君からは見えているのかな

飛んでゆけ 寒空を越えて
傷だらけの身体にむち打って
海で咲け 陽の光を受け
春になれ 桜を知らぬまま

多分 気づいている
みんな 知らんぷりしている
争いと誰かの涙で汚れたこの海を
本当の海は青色ではないということを

悪夢にうなされる僕の声
君には聞こえているのかな

飛んでゆけ 鳥を追いこして
見えない羽をはばたかせ
海で咲け 風のリズムに乗って
春になれ 桜を知らぬまま

春になれ 僕らが浮かぶこの海で
春になれ また次の春を待つために

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