傍観する台風の目
各々の体温の差を楽しみと許容できないまま、一人を差し置いて会話が熱の風に流されて耳を揺らす
ショッピングモールの団欒の音は、ロックンロールを前にして小波のようにゆっくりと平坦になり、温度を集めて平均点が炙り出される、人狼は近くに潜んでいる
クールを顔に貼り付けて、静かに、目に映る景色を他人事で客観視している
YouTubeにただずっと流れている渋谷スクランブル交差点のライブ映像のような、自分とは遠いもの
怒ることはあるの?興味深そうに訊かれる、研究対象のように見つめないで
怒ることはない、そんな気もなくなって
積み重なってしまいそうな不運のようなものは、その日のうちにプラスもマイナスもゼロにまとまると思っていて、一瞬の出来事を24時間のうちの一コマにまで小さくして、平坦に安心して「本日もお勤めご苦労様でした」と唱えて、そっぽを向いてカレンダーの日をめくって、同じ波を探している
隣町の空に雷が光って見えた
雨が降っていないこの街で自転車を乗り回していた、所詮は他人事の陸続きにあって、傍観して熱源から離れて過ごす
台風が近づいているのか、遠ざかっているのかわからない一面グレーの窓の外を見て、自分を理解させる前に自転車で飛び出した
歩けば30分の上り坂をグンと踏み込んで5分、湿り気と水たまりを避けながら、雨音を聞かずに帰り道にした
濡れず、風に煽られずで得をした
、と思った
下り坂となった道を手前に迎えるように曲がったところで、煉瓦状に交互に並んだタイルの隙間とタイヤが急激に道を揃えた
主導権を奪われ、湿った地面にスッと近づく
スリップし、足から転げ落ちた
咄嗟の出来事だった割には受け身が取れ、軽傷で済んだ
予測不可能なほどなアクシデントだったのに、あっさりと帰り道を辿っていた
妙な説得力が生まれてしまい、プラス先行の日でも当日が終わるまでは素直な感動が到着しない
素直に好転、プラスで賄える日を増やしていければいいのだが、一歩目を止めたくなるブレーキにも磨きがかかってしまった
熱帯低気圧となってモクモクと散っていく天気模様を見届けて、安堵して眠っておくことにする
自分を甘やかしてご褒美に使わせていただきます。