レンズ越しのまばゆい世界

右です、左下です、上です、、、

年に一回を目安に程よい距離感で出てくるランドルト環。前年よりも結果が良くなることはないと言える。
電車に乗りながら、車窓から見える看板はほとんど読めていたのに、今ではその場に停止して練習台を受け入れてくれた風景さえもぼやけて見える。

念のためで作った自分用のメガネは使用頻度が増えた。いざ勉強の姿勢に入れば、ルーティーンの一部としてメガネをかけるところから始まる。鏡面を一枚挟んで、色が少しだけ濃くなり、線が太くなる。

スイッチが切り替わるように、時間軸を手に持ち、華やかに振り回す。時計の針が刻む音が広がり、長針は回る回る。

欠けた穴を答えるだけのクイズに視力を一任していることを不安に思いたかった、それで良いのかと疑念を抱きたかった。

あまりの視力の低下がにわかに信じられなかったのだ。前回の診断結果表と見比べて、数字が0に近づいている。

ランドルト環を過信し、結果に動揺している自分がいた。
1/8の確率を運悪く外しただけだ、信じてなるものか。

不安材料をかき消すためには、肩を並べる安心材料が欲しくなった。


レンズの先には、境界線の見えない道路と気球が映っている。


自分を甘やかしてご褒美に使わせていただきます。