こどもの発熱:いつ受診すべきか?

こどもに病気で一番多くて保護者がいつも困るもの、といえばやっぱり発熱だと思います。今日はこどもの発熱に関していつ、どのように受診すべきかまとめていきます。

発熱はこわいものなのか?

救急外来で仕事をしていると、よく保護者の方から「40度を超える熱が出ていて、脳に影響がいかないか心配なんです」といわれます。発熱はウィルスや細菌などの病原体に対する身体の正常な反応なので、発熱自体は怖いものではありません。長時間の痙攣や意識の状態の悪化などがなければ発熱のみで脳や神経に異常をきたすこともありません

またこどもの正常体温には個人差があり、その子の平熱がいくつくらいなのかを知っておく必要があります。医学的には38.0度以上の体温が持続することを発熱としますが、その子の平熱と比較してどれくらいの体温かということと発熱以外の症状が何かで対応すべきものか否かを判断します。(熱が出ている=薬が必要ではないのです)

また体温は日内変動があり、起床時に最も低く、夕方ころに最も高くなるといわれています。夕方体温をはかったら37.5度だったから、とすぐに受診する必要はありません。

ただし、生後3か月までの赤ちゃんは38度以上の体温を確認したらすぐに受診してください。お母さん由来の抗体(免疫物質と思ってOK)は生後急激に低下していき、4ヶ月ころからやっと自前の抗体が機能してくるので、3か月までの赤ちゃんの発熱は、夜間や予防接種後であっても、危険な感染症の可能性がないか医師のチェックを受ける必要があります


乳児の発熱の原因


ウィルス感染


こどもの発熱の主な原因はやはり感染症です。特にウィルス感染が多く、保育園や幼稚園、家庭内で容易にうつしあってしまいます。季節ごとにかかりやすいことが知られているウィルスもあります。

新型コロナウィルス感染症の蔓延にともない、ワクチンへの関心が高まっていると思います。ワクチンに関する情報はまた別の記事に載せようと思いますが、予防接種で防御することできると知られている感染症に関しては小児科医としては必ず受けてほしいと思っています。特に先に述べたように生後数か月の赤ちゃんたちはウィルスをはじめとする感染症にとても弱い状態なのです。受けられるワクチンはぜひ受けてほしいと思います。

画像1

ウィルス感染は多くは「風邪」です。発熱は数日~1週間程度続くこともあります。水分や食事がとれていて、自宅でゆっくり休めるようであれば基本的には問題ありません

ただし、水分がとれず、尿の回数が減っているときや、意識の状態がおかしいときぐったりして反応がない、視線が合わない、泣かないなど)、けいれんしたときは受診が必要です。また、鼻水や咳など風邪症状がないのに熱だけ4~5日続く場合も(すでに受診をしていたとしても)受診をおすすめします。(風邪以外の病気の可能性があるからです)

またウィルス感染であっても重篤化することもあります。その場合の診断は様々ですが、対応はやはり一緒で、水分がとれるか、意識の状態はどうかが重要です。

受診のフローチャートを作ってみましたのでぜひ参考にしてください。

発熱時のフローチャート
※すでに受診して処方などうけていたとしても5日以上発熱が続く場合は再度受診を検討してください


細菌感染


免疫力の十分でない乳児はウィルス感染に細菌感染を合併することがあります。「かぜをこじらせて肺炎や中耳炎をおこす」というのがこれに当たります。特に発熱が5日以上続く場合やぐったりした状態が続く場合はこの細菌感染の合併の可能性があり、診察が必要となります。

診察の状況により血液検査や耳鏡検査(鼓膜のチェック)、レントゲン検査を行い、細菌感染の合併の確からしさを確認します。

これとは別に、乳児の発熱の原因となりやすいものに尿路感染症があります。腎臓~膀胱~尿道の間で細菌が感染して炎症を起こしている状態のことです。一般的な尿路感染症は尿検査で診断することができますが、まれにエコー検査やCT検査を行わないと診断が難しい尿路感染症を起こすこともあります。

特に鼻水や咳のなどの風邪症状のない乳児の発熱では尿路感染症のことも多く、風邪かな?と思っても注意深く観察が必要です。風邪症状のない発熱や数日つづく発熱の場合は小児科への受診がよいでしょう。

そのほかの発熱性疾患


小児で有名な発熱する病気に川崎病というものがあります。川崎病とは川崎先生という日本人医師が発見した、こどもに特有の全身の血管に炎症を起こす病気です。かぜなどのウィルス感染をきっかけに発症するのではといわれていますがメカニズムはまだわかっていません。川崎病とは?|川崎病 免疫グロブリン療法を受ける患者さんと保護者の方へ (jbpo.or.jp)

川崎病では発熱以外に目の充血、唇や舌が赤くはれる、首のリンパ節がはれる、体に赤いぶつぶつがでる、手や足が赤くはれてむくむという症状がでることが知られています。症状がすべてそろっていれば川崎病の疑いがかなり強く、入院して点滴治療を行う必要があります
すべて症状がそろっていなくても川崎病の疑いが強い場合はやはり治療のため入院が必要ですが、同時に川崎病以外の病気の可能性がないかをチェックする必要もあります。

川崎病の後遺症として、心臓の血管である冠動脈に動脈瘤をつくってしまう可能性があることが知られています。冠動脈瘤ができてしまうと長期の薬剤内服や場合によっては手術などの治療が必要になってしまうので、冠動脈瘤を作らないよう、なるべく早く診断して治療を開始することが重要です。

先に書いたようにはじめはただの風邪、と診断されることも多いので、
内服も処方されて様子をみているけれど、熱が4~5日続いているし、目や口が赤くなって変なぶつぶつがでてきた…
などと様子が変化してきた場合はかかりつけに相談していただくのがよいでしょう。


まとめ

尿路感染症や川崎病含め、ただの風邪ではない怖い病気も一定数存在しますが、小児の発熱性疾患のほとんどはウィルス性の風邪です。水分摂取と安静を第一に、様子をみてあげてください。水分摂取ができないときや、上で挙げたような異常があるときは、その重症度によって受診を検討してくださいね!



参考文献
小児内科 Vol.46 No.3,2014-3

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?