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断絶しておしまい、ではなく改善を

先日、星野源主演の「プラージュ」というドラマを見た。
前科者ばかりが住むシェアハウスで起こる様々な人間ドラマを描いたミステリーだ。「前科者」ということで、本人がいかに更生していようとも、周りから冷たい視線を注がれ、酷い対応をされる模様が描かれている。
これを見て、ふと思い出した。

親子断絶問題を知り、色々と調べたりしていく中で一つ引っかかっていることがある。それはよく「DV・虐待があったような場合は会わせないのは当然だ」的な主張だ。

もちろん、DV・虐待で「一時的に」危ないから、と親子が会うことに一定の制限を設けることは必要だと思う。しかしながらだからといって、それを理由に何か月も何年もずっと、親子断絶をしていい、ということではないと思う。断絶を永遠に続けるのではなく、安心して会えるようにすべきである。

このあたりを国がどこまで考えているのか非常に気になる。
実際はそうでないかもしれないが、色々なものに目を通していると、ざっくりとDV・虐待あれば引き離して親子断絶させて、それで終わりでいいんだ、というニュアンスに受け取れなくもない。それでいいじゃん、と思っている人もおそらくいると思う。とりわけ本当に酷いDVにあって相手に恐怖や憎しみを持った人ならそうなるのは当たり前だとは思う。

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しかし親子というのは何があっても生物学的には親子だし、子供からすればやっぱり世界に一人しかいない、母であり父なわけだ。楽しい思い出だってあるであろう。問題があったからといって、子供自身もそれで二度と自分の親に会えなくていい、とはきっと思っていないと思う。(多くの場合は)問題があるなら、親子断絶して「はい、終了」ではなく、改善して親子が一緒に過ごせるようにすべきだ。
親同士間で暴力があっても親子の関係が良好だったらなら、親子は会って普通の親子の時間を過ごすべきだし、よほど心配なら第三者を間に入れる等の工夫もできる。DVも虐待も更生プログラムがあるからそういったものの受講を必須にして、定期的に子供と会いながら改善をしていけばいいと思う。

私はDV更生プログラムを見学したり、いくつか話を聞きに行ったことがある。専門家間でも更生できるか、という意見は割れるようで、「こんなの治らない」と言い切った医師もいた一方で、プログラムを受けてちゃんと更生し、夫婦仲を取り戻している方もいた。個人的には、これだけ色んな人がいるんだから、更生できる人・できない人、どっちもいるのだろうな、と思っている。でも少なくとも、更生のチャンスはあるべきだと思うし、それによってむしろ以前より良好な関係を築ける場合もあるのだから、DV・虐待を理由に親子関係を断絶して、そのままにすることだけはやめるべきだ。

見学したグループワークでどんなDVをしたか、という話をする時間があったのだが、結構ショッキングな話を聞いた。でも、参加者は本当にそれを反省し、どうやったら繰り返さないかということを真摯に学んでいた。中には毎週、九州から横浜にやってきている方もいた。その方は後日、九州で同様の更生プログラムを始めたと記事で見た。

これらの機関で話を聞いた限りでは、来る方は自主的、あるいは配偶者に勧められて来ている方がほとんどで、国として更生プログラムの受講を決めているわけではないようだ。

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DV・虐待は程度の差もあるし、加害者の更生の度合いもまちまちだ。
全部一緒くたに「DV・虐待があったから親子断絶してOKだ」とするのではなく、まずは更生の機会をちゃんと設け、必要なサポートを受けながら、定期的に子供と会い、問題があったとしてもなるべく、親子が普通に過ごせるように行政が主導して進めるべきだ。
場合によっては良好な関係が築けるかもしれない親子を、単純に線引きし断絶して、はい、終了、あとは知りません、ではなく、子供のためにも改善へ向けた動きをすべきである。

反対意見もきっとあるだろうけど、私は親子はできる限り断絶させるべきでないと考えている。やれることをめいいっぱいやったけど、それでもだめだった、というなら仕方ないと思うが、やりもしないで、ただ断絶して終了、というのは結局、問題の解決になっていないし、子供のためにもなっていないと思う。

動き出した国。このあたりにも注目していきたい。

参考
九州から横浜の加害者更生プログラムに通い、同様の団体を立ち上げた方の記事 https://toyokeizai.net/articles/-/377042