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キツネなシッポがパパになる⑤


恥の多い人生を送ってきました…(太宰風)

何を読ませてるの?そんなクレームが聞こえてきます
…スイマセン、日々のストレスを解消するおフザケ程度にご理解ください…


↓いまさらですが、原作の世界観。


「こんな状況で何考えてるのよ、アンタ」
突然ボクの脳内にテレパシーが届いた。あの女子警官だ。
「なんだよこんな時に。今それどころじゃないんだ。放っといてくれ。」
唐突な意識の交錯にボクは驚いた。そうだ、お産が今日だから、仕事帰りに立ち寄るかもって、そう奥さんから聞かされていたんだ。
「何よ、全部先輩に言いつけてやるから!もう知らないからね。」
「待ってくれ、ゴメン、許してくれ。土下座でも何でもするから。ボクはどうすれば良い?」
ボクは必死に謝りながらも、女子警官に救いを求めた。
「もう、バインバインとか言ってる場合じゃないんだから、この巨乳好き!ちゃんと先輩のそばで立ち会いなさいよ!」
「違うんだ、別に巨乳好きじゃない。ただボクは、あのバインバインの圧倒的なパワーにのまれてしまっただけだ…ボクだって奥さんの一大事なんだから、ちゃんと支えていたいよ。」
返答はなかった。テレパシーはそこで途絶えてしまった…また嫌われたのだろうか?ボクは次々と降りかかる問題に何も抗しきれていないようだった。

数分して、分娩室のドアが開いた。さっきの女子警官だ。看護師さん風の衣装に着替えている。何かのコスプレ?この状況で?とも思ったが、彼女はボクには目もくれず、奥さんの手を握って励ますと、後ろに下がって脇の内田さんに何かをささやいた。内田さんは恥ずかしそうに後ろを向いて身なりを整えると、今度は「お産の呼吸、弐の型」とも言うべき穏やかな動きを披露した。

「バインバイン」が、封じられた!女子警官の機転で、ボクは救われたようだ。彼女は恥ずかしそうにボクをにらみつけると、奥さんに向って声をかけ始めた。ボクも気を取り直して、精一杯の応援を続けた。いつまで続くのだろうか?誰にも先が見えないような、本当に長く続いたひとときだった。

木戸さんの動きが慌ただしくなり、奥さんが悲鳴のような声を上げた。そして少しして、赤ちゃんが大きな声で泣きだした。「生まれたんだ!やった、生まれたんだ。」ボクは思わず隣にいた女子警官の両手を握って「ありがとう、ありがとう」と何度も繰り返していた。彼女も目に涙を浮かべて、「良かったね、でもホントもう、何してんのよ。」そう言って喜んでくれた。
しばらく部屋の外で待たされて、部屋に入るとさっきまでの熱気はすっかり冷めていた。奥さんは穏やかな表情に戻っていて、一仕事やり遂げたような満足感が顔に浮かんでいた。枕元には小さな赤ちゃんが静かに寝息を立てていた。

「お疲れ様。おめでとう。頑張ったね。」
ボクの言葉に奥さんは少し微笑むと、小さな声でボクに話しかけた。
「大変だったよ。でも見て、とってもカワイイの。」
見つめる先で、小さな手がゆっくりと動いていた。目は閉じたままで、口元が吸うような仕草をしていた。生まれたばかりの命を前に、ボクは自然と涙を流していた。さっきまでの煩悩まみれの自分はどこかに消えたようだった。「ありがとう、ねえ、ありがとう。」それだけ言うのがやっとだった。抱いてみたら?と言われたが、まだ怖くてやめておいた。

それからボクは隣室で休んでいた義母さんと女子警官、それに内田さんを呼びに行った。そして木戸さんを交えて、皆で奥さんを囲んで命の誕生を喜んだ。義母さんは得意そうに奥さんの髪を撫で、「良くやったねえ、偉いよ。」そう言って奥さんの苦労をいたわった。女子警官は「先輩、お疲れさまでした。」そう言って泣きながら奥さんに抱きついていた。内田さんも「私、感動しました。これからもっと頑張りますね!」そう言ってくれたが、声の大きさに赤ちゃんが驚いたようにびくっとなって、慌てて口を押えていた。木戸さんが彼女をじっと見つめて、そしてそっと微笑んだ。

ボクは奥さんのそばで幸せそうな顔で赤ちゃんを見つめる女子警官に声をかけた。
「ありがとう。でもなんでそんな恰好してるの?」
ボクの言葉に、彼女は恥ずかしそうに答えた。
「私、一応もと助産師なんだ。それにココ、私の実家なの。先輩にお願いしてココで産んでもらうことにしたの。」
え、そうなの。助産師さんと警官…不思議な組み合わせだ。
「お産って、結構プレッシャー強くて。ココロが持たなくなって。それで今は警官なんだ。」
そうなんだ。繊細系の方だったんだ。人は見かけによらないというが、ホントのようだ。
「でもなんでアンタ、私のことオマエとか女子警官って呼ぶの?」
「だって、オマエ名前の読みが奥さんと一緒だから、だからなんか変な感じなんだよね…」
ボクの返事に、彼女は納得したような不思議な笑みを浮かべた。

「分かった。とりあえずさっきのコトは先輩には黙っておいてあげる。」
彼女の突然のテレパシーに、ボクは驚いて彼女を見返した。ボクと同じくらい、彼女も幸せそうに笑っていた。


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