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Myお昼寝スポット

働き始めてから毎朝6時に起きている。
爆音の目覚ましをかけ、眠い目を擦りながら毎日会社に行っている。夜の12時に寝ているから僕の睡眠時間は6時間。丸っきり足りない。

だから、会社のお昼休みはいつも寝ている。僕にはMyお昼寝スポットがあるのだ。

会社には資料を保管している六畳くらいの小さい倉庫がある。僕は勝手にそこを寝床にしている。

ダンボールが山積みでごみごみしているけれど、ちょうど1人分寝れる長椅子が置いてある。僕はそこに寝っ転がってひざ掛けを布団にして毎日寝ている。

このスペースは以前は先輩が使っていた。
お昼になると先輩はいつも倉庫の方に消えていき、チャイムが鳴るまで出て来ない。僕は「何しているのだろう」と疑問に思いある日こっそり覗いてみたら、先輩は長椅子で体を丸くして寝ていたのだ。

先輩は何年もこのスペースで寝ているらしく、
倉庫で寝るのがひとときの休息になっているようであった。

入社してから毎日眠くて机に突っ伏して寝ていた僕にとって、先輩のその姿は何とも羨ましく思えた。

けれど、後輩である僕が先輩を差し置いて倉庫で寝るなんて出来るはずもなく、僕の机に突っ伏す日々は続いた。
(先輩が休みの日はこっそり使わしてもらっていたけど)

しかし、1年後に先輩が異動となり、倉庫を使う人が誰もいなくなった。僕はこのチャンス逃すまいと、先輩が抜けてすぐに倉庫で寝始めた。今はまるで自分の小さい秘密基地のように私物化している。

お昼ご飯を食べ終えた後の30分だけの睡眠だが、机で寝るより断然いい。横になれるだけでも幸せである。一応会社には休憩室もあるにはあるのだが、そこはいつも人気で人が沢山いて寝れない。ここの倉庫は僕独りしかいないから、ぐっすり眠ることが出来る。目覚ましの音量をMAXにしないと起きないレベルでガチ寝している。

30分寝るのと寝ないのでは午後からのパフォーマンスにも影響が変わってくる。心地よく寝た日は、午後からも気持ちを切り替えて働くことが出来る。もうこの生活になれてしまったから、お昼に寝なかった日は仕事中に眠くてしょうがない。首がカックン、カックン倒れ出して顔を洗いにいかないと仕事に集中出来なくなる。
お昼寝をすることは仕事をする上でも大事なのだ。

かといって、ここのお昼寝スポットが天国とは言いにくい。

夏は暑く、冬は寒い砂漠のような環境なのだ。

一応エアコンも付いているが、これが古くて全然役に立たない。夏はエアコンの温度を20度にして丁度いいくらいで、冬は28度まで上げてもまだ寒いくらいである。冬は現場に出るときようの防寒着を着こんで、山で遭難した登山者みたいに震えながら寝ている。

僕はお昼休みに入るとまず倉庫のエアコンをつける。ご飯を食べた後にすぐに寝れるように、人間の寝れる環境に整える必要がある。

また、意外にも人の出入りがあるのも難点である。倉庫の中になぜか冷蔵庫と電子レンジがあって、みんなここを利用している。僕が寝ている時に冷蔵庫からご飯を取り出したり、電子レンジで温めたりする。ご飯は自分の机で食べるから、滞在時間はみな少ないのだけれど、僕は人に寝顔を見られるのが異様に恥ずかしいから出来れば入って来て欲しくはない。(お前の部屋ではない!)

僕は対策を考えた結果、顔にハンカチをかけて寝ることにした。

ほぼ死体である。

でもこれで僕は誰が入って来ても気にせずに眠り続けることが出来るようになった。

もう1年以上僕は倉庫で眠り続けている。「ちくわ部屋」なんて言われたりして、僕があそこで寝ていることが社内で浸透してきている。このお昼寝スポットがないと僕はもう働けないかもしれない。他の営業所に移ったら、ちゃんと寝るスペースがあるか今から心配である。

拝啓先輩、異動した先でちゃんと寝れておりますでしょうか。敬具 ちくわ

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